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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/02/13 産経新聞朝刊
【教育再興】緊急報告 荒れる教室(20)体罰をめぐって 教師守る姿勢必要
 
 栃木県の黒磯北中で女性教師が教え子に刺殺された事件から二日後の一月三十日。“事件”は福沢諭吉の出身地として知られる大分県中津市の中学校で起きた。
 三年生のクラスで二時間目の数学の時間に、プリントを使って授業していたところ、男子生徒が自分のプリントをほかの生徒に見せるなどしてふざけた。
 男性教師(三〇)は注意しようとして胸ぐらをつかみ、こぶしでその生徒のほおを押さえた。
 生徒は「先生、そんなことをしてると刺されるよ」と言った。
 すると、グループ学習形式で向かい側にいた生徒が自分のかばんの中からスッとカッターナイフを出し、机の上に置いた。
 教師はそのナイフを取り上げ、「ひげをそってやろうか」と、ふざけていた生徒のうなじに刃を当てた。生徒は「やめて」と言ったが、教師は続けてうなじの毛を少しそった。
 事態はその日のうちに校長の耳に入った。校長は全面謝罪を行うことを決め、間髪を入れずに父母を集め、謝罪と今後の体罰の絶対禁止を表明した。
 以後、教師は自宅で謹慎している。
 
 「どんな事情があろうと、生徒に刃を向けるのは許されない」。校長が父母を前に青くなって平身低頭したのも無理はない。「ナイフでひげをそる」という行為も陰湿な印象を与えた。
 ところが、この先生に思わぬところから“援軍”が現れた。鈴木一郎・中津市長である。
 「『先生、そんなことをしてると刺されるよ』という言葉は、卑劣な脅迫以外の何ものでもない」と鈴木市長は言う。「栃木の黒磯北中の事件の二日後ですよ。生徒はあの事件が教師にどんなプレッシャーを与えているか、敏感に感じ取った上で、その恐怖を利用したんですよ。そのときに、おとなしく引き下がっていてどうするか」
 鈴木市長の「同情論」の背景には、数年前、校内暴力で荒れていた中学校の現場を教師たちが汗を流して立て直したのだ−という認識がある。
 「ひげをそるという行為は確かに異常な雰囲気がある。しかし、教育とは丁々発止のやり取り。現場の判断を、結果だけでだめだ−と決め付けるわけにはいかない」
 教師は「ひげをそった」後、生徒に対し、「ほら、大丈夫だっただろ」と声を掛けている。行き過ぎだったとしても、ナイフを出された瞬間の緊張をとっさに和らげようとした機転だったとも受け取れる。その後も授業は続き、教師は平静に教室を後にしている。
 鈴木市長にとって、謝罪一方の学校・市教委側は歯がゆく映る。「教師を守るという姿勢が弱い。教育官僚として、トラブルの解決という観点からは満点の対応だが、教師集団の結束という点では、後々どうかな・・・」
 
 刑事ドラマで、主人公が悪役にピストルを突き付けられたような絶体絶命の場面。そんな極限状態が現実に起きるかもしれないという恐怖を一連のナイフ事件は教師たちに植えつけた。
 「ナイフを目の当たりにしたとき、栃木で刺殺された女性教諭の態度は立派だったと思う。たじろがず、毅然(きぜん)としていた。しかし、『それをまねよ』とは言えない」
 そう話すのは「ひげそり事件」の起きた中学校の校長。教育の場に、突然ナイフという有形の暴力が持ち込まれた衝撃に対して、校長も悩んでいる。
 「教師が毅然たる態度を維持するための方策の一つは家庭との連携だと思う。これからは家庭訪問や父母会などをより頻繁に実施していきたい」という校長。しかし、事件後の父母会では、「体罰などもってのほか」という多数派に交じって、「怖い先生も必要」という意見が一部の父母から出された。「正反対の親とどうやって連携していくのか」。その問いに、校長の答えはなかった。
 
 「緊急報告」シリーズは終わります。沢辺隆雄▽大塚昌吾▽三枝玄太郎▽田坂誠▽酒井充▽松尾理也が主として担当しました。
 
 ■体罰
 文部省のまとめによると、平成8年度中に教え子らに体罰を行った−などとして処分された全国の公立の小中高校の教員の人数は過去最悪を記録した7年度をさらに163人上回る599人に達した。このうち、直接体罰を行ったのは393人で、前年度比95人(31.9%)増。処分の内容は停職8人、減給34人、戒告68人となっている。


 
 
 
 
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