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2003/08/25 読売新聞朝刊
[社説]教員採用増 世代交代を人事に生かす好機だ
 
 地方自治体による教員採用試験がたけなわだ。
 少子化による児童、生徒減少の影響を受け、教職志望者にとっては、厳しい状況が長年続いてきた。それが今、大都市などで「広き門」に転じつつある。
 第二次ベビーブーム世代が学齢期を迎えるのに備え、一九七〇年代に大量採用された教員が、退職の時期を迎えつつある。文部科学省が掲げる少人数教育実現のためにも、教員が必要となった。
 そうした要因が重なり合って、教員採用者数は二〇〇〇年度を底に、全国的に増えつつある。とくに今年は、採用枠の拡大傾向が顕著だ。
 教員の年齢構成は、採用手控えが続いた結果、二、三十代の教員が少ない、いびつなものになっている。小中学校教員の平均年齢は四十歳を超えている。こうした傾向は子供との触れ合いにマイナスとなっている、と指摘されてきた。
 採用者増の機をとらえ、各自治体は、長期的な教員採用のビジョンを確立しなければならない。
 大学新卒者だけで定員を埋めると、同一世代の教員がひしめく弊害を繰り返すことになる。採用枠の拡大で、試験の競争率があまりに低くなると、採用者の質の低下も懸念される。
 このため、大阪府教委は今年、現職教員の採用枠を設け、他の自治体の中堅教員を受け入れる方針を打ち出した。東京都も今年初めて、東京以外での新卒者対象の募集説明会を実施した。
 だが、他の自治体から採る教員や新卒者だけで対応するには、限界がある。
 中堅教師の補充には、他の職業についている教職志望者や民間からの採用も必要となる。そうした道を開くための試験や採用後の研修のあり方を、早急に検討しなければならない。
 新卒採用者の質の維持、向上を図る手立ても考えるべきだ。東京都は大学四年生を対象に、教育実習を重視する「教員養成塾」を大学と連携して開設する。こうした試みがもっと広がってよい。
 硬直した人事構成は、採用数で、正規の教員より常勤講師などの「臨時教員」の方が多いという状況も生んできた。身分が不安定で十分な研修も受けられない臨時教員に過大な役割を期待するのは、正常な姿とは言えない。臨時教員採用制度の見直しも緊急の課題である。
 各年代の教員が均等に配置されることは、学校運営にとって欠かせない条件である。教員の質の向上にもつながる。
 ようやく巡ってきた好機である。これまでのマイナスをプラスに転じる方策に各自治体は知恵を絞らねばならない。

 
 
 
 
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