日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/04/04 読売新聞朝刊
揺らぐ学校への信頼/読売新聞社全国世論調査
 
 学校不信の一層の広がりが、読売新聞社の全国世論調査で浮き彫りになった。「ムカつく」「キレる」がはやり言葉になり、校内暴力がナイフによる殺傷事件にまでエスカレートする教育現場に、今、求められているのは何か。文部省が検討を進めている「心の教育」の行方が注目される中、学校と教師をめぐる国民意識を探った。(本文記事1面)
 
〈改善のポイント〉
◆「教師の質」に44%
 今の学校教育に満足しているかどうかでは、「不満だ」74%が「満足している」20%を大きく上回った。学校教育への不満は、いじめや教師の体罰などが社会問題化していた86年調査で73%を記録。それ以降は減少傾向を示していたが、いじめによる自殺が増加していた96年調査で上昇に転じ、今回は多発する凶悪な少年犯罪が学校への不満をさらに増幅した形だ。
 不満に思ったり、改革が必要だと思う具体的な内容では、「いじめ」が45%でトップ。次いで「教師の質」44%、「詰め込み教育」43%、「校内暴力・非行」42%の順で、いずれも、小・中学校に通う子供を持つ人が多いと見られる30、40歳代に目立った。
 特に「いじめ」を挙げた人は、小学生以下の子供を持つ親に多く、未就学児(56%)、小学校高学年(54%)、同低学年(53%)だった。一方、「教師の質」を挙げた人は、中学生、高校生の親に多く、それぞれ54、51%を占めた。
 
〈教育改革〉
◆ボランティアなど「体験機会を」58%
 文部省の中央教育審議会(中教審)が教育改革として掲げている項目の中で、積極的に進めるべきだと思うものを聞いた。その結果、「ボランティアや自然体験など総合的学習時間の設置」が58%にのぼり、このほかは「小学校からの英語教育開始」27%、「公立学校での中高一貫教育の実施」23%などだった。
 「総合的学習時間」は、国際理解や環境、ボランティア、自然体験など、教科の枠を超えたテーマを、体験や討論などを交えながら学ぶ試み。「生きる力」育成重視という方針に沿って検討が進められており、国民の期待は大きいようだ。
 小・中学生の子供を持つ親では、「総合的学習時間」が65%だったのをはじめ、「小学校からの英語教育」34%、「中高一貫教育」32%など各項目とも数値が高く、関心の強さがうかがえる。
 
〈定期テスト〉
◆53%が廃止反対賛成34%止まり
 栃木県鹿沼市の市立中学校が、新年度から定期テストを廃止する方針を打ち出し、論議になっている。これについては、「反対」が53%と過半数を占め、「賛成」34%を上回った。
 同校の新方式は、点数による生徒の序列化をやめて、小テストや生徒の自己評価、教師との面談などで成績を評価しようというもの。「競争主義がなくなってゆとりが生まれる」という賛成意見の一方で、「公平な評価ができるか疑問」「学力が低下して進学に不利」などの批判も少なからずあり、マイナス面を心配する人が多かったようだ。
 特に、中学生の子供を持つ親では「反対」が63%にのぼり、定期テスト廃止への疑問は、当事者層ほど大きいことがうかがえる。「賛成」は若者層に目立ち、最多の20歳代では42%を占めたが、それでも「反対」48%の方が多かった。
 
〈不信感〉
◆体面優先に反発強く
 学校や教師に不信感を持ったことがある人(73%)は、前回調査から増加して7割を超えた。特に、20歳代78%、30歳代81%など若い世代に目立っている。
 また、不信感を持ったことがある人は、高校生の子供がいる人で79%、中学生の子供がいる人でも78%にのぼり、受験を控えた思春期の子供を持つ親に学校不信が強いようだ。
 具体的にどのような点に不信感を持ったか――では、若い世代に多いのが「学校の都合や体面を優先する」(20歳代51%、30歳代53%)、「児童・生徒の人権を軽く見ている」(同各34%)など。
 特に、20歳代では、自分の体験が生々しい記憶として残っているためか、3人に1人(33%)が「特定の児童・生徒をえこひいきする」をあげている。
 中学生の子供を持つ親では、「学校の都合や体面を優先」48%、「児童・生徒の問題を解決できない」45%に次いで、「人柄や性格が教育者として適していない」が43%を占めている。
 
〈塾通い〉
◆容認派約7割に
 学習塾に通う小・中学生が増えており、都市部の中学3年生では7割にのぼっていると言われる。これについては、「賛成」は7%だったものの、「やむを得ない」が61%と多数を占め、「反対」は27%。
 「賛成」「やむを得ない」と答えた人にその理由を聞いたところ、「中学受験や高校受験のために必要」52%、「学校の授業だけでは不安」41%などが多く、中学生の親ではそれぞれ63%、49%だった。
 公立中学校が荒れ始めた80年代以降、中高一貫教育の私立校を目指す中学受験が増えている一方、公立中学校でも高校受験や内申書アップのために、学校だけでは不安だという意識が広がっていることなどが、塾通い容認の背景にあると見られる。
 こうした見方は若い世代ほど強く、20歳代では「賛成」が10%、「やむを得ない」が65%と、容認派が最多だった。
 また、小学校高学年、中学生の子を持つ人では、容認派がいずれも8割を超えており、受験を控えた子供を持つ親にとって、塾通いは当たり前のことになっているようだ。
 
◆学校だけで解決不可能/佐藤学(さとう・まなぶ) 東大教授(教育学)
 学校や教師への不満・不信がいずれも7割に達しているのは、極めて深刻な事態だ。ただ、教師を責めて改善を求めるだけでは、何も解決しない。問題はどこにあるのかを、冷静に考えるべきだ。心の「荒れ」など、子供たちの急速な変化に、学校のシステムが追い付かず、対応できなくなっているのが現状だ。
 また、今の中学校が教育の場として機能していない原因の一つに、内申書の存在がある。教師一人が二百人もの生徒を客観的に公平に評価するのは不可能で、教師にも生徒にもストレスになっており、早急に廃止した方がよい。
 最近の少年犯罪の凶悪化を反映してか、学校教育に不満なものとして、「道徳教育」「情操教育」をあげる人が目立った。だが、こうした教育は本来、地域や家庭で行うべきもので、すべてを学校に押し付けては、教師も生徒も追い詰められるだけだと思う。
 一方で、塾通いを容認する意見が多数を占め、「学校で人格教育、塾で学力養成」という考え方がうかがえるが、これは、歓迎できることではない。そもそも小・中学校は、基本的な教養と、社会生活上のルールを身につける場だ。テストも、授業の理解度をチェックするために必要なのであって、生徒を序列化することが目的ではないはずだ。
 内申書や塾の問題は、高校入試に集約される。進学率97%の現状で、入試を行う必要があるのか。少子化で生徒数が減少するのを機に、公立高校の入試を見直し、高校のランクづけをやめる道を模索してはどうだろうか。
 ことは学校だけで解決できるものではない。行政も、教師も、親も、地域も、それぞれの立場で何ができるかを考えて欲しい。
 
《質問と回答》 (数字は%)
 
◆あなたは、今の学校教育に、満足していますか、それとも、不満ですか。
・満足している 3.6 ・どちらかといえば不満だ 45.1
・どちらかといえば満足している 16.5 ・不満だ 28.8
・答えない 6.1  
 
◆あなたが、今の学校教育に対して、不満に思うこと、あるいは、改革が必要だと思うことは何ですか。次の中から、あれば、いくつでもあげて下さい。
・教師の質 44.2 ・偏差値教育 36.9 ・教育費  12.6 
・道徳教育 37.5 ・校内暴力・非行 42.3 ・その他 1
・情操教育 21.7 ・いじめ 44.7 ・とくにない 5
・学力の低下 4.9 ・高校入試 13.4 ・答えない 1.7
・詰め込み教育 42.5 ・大学入試 10.7  
 
◆あなたは、ご自分やお子さんの経験、あるいは、新聞やテレビで見聞きしたことから、学校や教師に不信感を持ったことがありますか、ありませんか。
・ある 72.6
・ない 24.7
・答えない 2.7
▼【前問で「ある」と答えた人だけに】
あなたは、学校や教師のどのようなところに不信感を持ちましたか。次の中から、あれば、いくつでもあげて下さい。
・授業や進路指導に熱心でない 14.9
・授業での教え方が下手 16.1
・相談事を親身になって聞かない 38.9
・児童・生徒の人権を軽く見ている 26.9
・児童・生徒に迎合する 9.7
・特定の児童・生徒をえこひいきする 23.5
・児童・生徒の問題をきちんと解決できない 42.7
・人柄や性格が教育者として適していない 36.5
・児童・生徒のことよりも学校の都合や体面を優先する 46.1
・問題が起きたときに事実を保護者や生徒に言わない 31.4
・内申書を書く立場を利用して保護者や生徒の意見を封じ込める 13.1
・その他 1.4
・答えない 1.2
 
◆最近、学習塾に通う小・中学生が増えています。あなたは、小・中学生が学習塾に通うことに、賛成ですか、やむを得ないと思いますか、それとも、反対ですか。
・賛成 7.4 ・やむを得ない 61.1
・反対 26.8 ・答えない 4.7
 
▼【前問で「賛成」「やむを得ない」と答えた人だけに】
あなたがそう思う理由を、次の中から、あれば、いくつでもあげて下さい。
・学校の授業だけでは不安だから 41.4
・中学受験や高校受験のために必要だから 51.9
・早いうちから競争社会に慣れた方がよいから 6.3
・将来エリートになるために必要だから 2.4
・親が家庭で勉強を見られないから 33.0
・塾が子供たちの交流の場になっているから 18.3
・周囲の子供が通っているから 22.7
・その他 3.1
・答えない 1.1
 
◆文部省の教育改革には、次のような項目があります。この中で、あなたが、とくに積極的に進めるべきだと思うものがあれば、いくつでもあげて下さい。
・学校の週休2日制の完全実施 19.1
・授業時間の短縮や削減 10.5
・ボランティアや自然体験など総合的学習時間の設置 57.9
・小学校からの英語教育開始 27.1
・公立学校での中高一貫教育の実施 22.7
・高校受験での生徒や保護者による自己申告書の活用 9.3
・17歳での大学への飛び入学 10.5
・大学の秋季入学の実施 6.5
・その他 0.7
・とくにない、答えない 16.0
 
◆栃木県内の、ある公立中学校では、来年度から、中間テストや期末テストを廃止して、生徒自身による自己評価や教師の面接などで成績表を作ることになりました。これについては、「定期テストが原因で、競争主義が生まれたり、自主性を失うことになっていたので、良い」という意見や、「学力が低下して高校進学が不利になったり、成績を公平に評価できない」という意見があります。あなたは、この方法に、賛成ですか、反対ですか。
・賛成 11.7 ・どちらかといえば反対 30.3
・どちらかといえば賛成 21.9 ・反対 22.7
・答えない 13.4  
 
《調査方法》
・調査日=3月21、22日
・対象者=全国の有権者3000人(250地点、層化二段無作為抽出法)
・実施方法=個別訪問面接聴取法
・有効回収数=1912人(回収率63.7%)
・回答者内訳=男45%、女55%▽20歳代15%、30歳代15%、40歳代21%、50歳代20%、60歳代18%、70歳以上11%▽大都市(東京区部と政令市)19%、中都市(人口10万人以上の市)38%、小都市(人口10万人未満の市)19%、町村24%

 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。

「読売新聞社の著作物について」








サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
11位
(28,647成果物中)

成果物アクセス数
493,444

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年3月25日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【憲法改正について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から