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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/12/22 読売新聞朝刊
教育この一年・・・ 三度目の外圧に押されて 閉鎖・画一から国際化、情報化へ
 
 明治以来、わが国の教育は外圧によって大きく変わってきたが、残念ながら今度もまた外圧で変わろうとしている――この一年を振り返ると、こんな感想をもつ。
 明治維新の「第一の教育改革」期には黒船に象徴される欧米列強の外圧に直面したし、戦後の「第二の教育改革」期には占領軍の外圧があった。さいわい国民の努力によって、それは近代化、民主化への道につながったが、必ずしも自発的に変わったわけではない。その証拠にさほど外圧のなかった昭和四十六年の「第三の教育改革」(中央教育審議会答申)は、所期の成果を上げられなかったし、昨年、臨時教育審議会が第一次答申で改めて「第三の教育改革」を打ち出した時も同じ憂き目を見るおそれがあった。
 ところが、幸か不幸か今年になってまた外圧が一段と強まった。いま押し寄せている外圧は農畜産物、サービス業の自由化など日本の市場開放を求める大合唱だ。自由貿易の恩恵をフルに活用して経済大国となった日本が、自らの市場を十分開放しないのはフェアでないというアメリカをはじめとする諸外国の要求は危機的段階に達し、その影響が教育分野にまで及んでいる。臨教審が四月の第二次答申で「国際化への対応」を明確にしたのも、市場開放を視野に入れた措置だろう。
 答申は「日本は、今日の国際社会の中で孤立しては生きられないという『新しい国際化』の時代に入っている。国際社会の中に生きるとは、結局、人と人との交流、心の触れ合いを深めることであると考えると、日本における教育を広く開放していくことが重要である」と認め、当面の対策として(1)留学生受け入れ体制の整備(2)外国語、特に英語教育の見直し(3)外国人に対する日本語教育の充実(4)高等教育の再検討などをあげている。
 国際交流の広がりを見越して、四月入学を九月入学に切り替える問題についても論じられている。日本の国際化は「第一の教育改革」当時からの課題だが、こうなると、従来の閉鎖的学校、画一的教育を改めないわけにはいかない。
 二次答申の重要な柱の一つである「情報化への対応」も市場開放とかかわりが深い。日本の市場開放は社会の情報化の進展を意味するからだ。コンピューター、高度情報通信システムの浸透など社会の情報化への対応策として答申は、「読み・書き・情報活用能力を基礎・基本として重視し、学校をはじめ様々な教育機関において、学習者の発達段階に合わせ、情報活用能力の育成に本格的に取り組んでいくことが重要である」と述べ、とるべき政策として(1)教育用ソフトウエアの開発(2)大学の教員養成課程における情報教育の整備(3)現職教員に対する情報教育の研修拡充(4)学術情報システムの整備などを提言している。
 これを受ける形で文部省は、八月に大蔵省に提出した来年度予算概算要求の中に、(1)国費留学生の増、新留学生会館の建設等留学生十万人受け入れ計画の推進(2)日本語教員検定試験の実施、教材開発等日本語教育の充実(3)コンピューターの学校教育用ソフトウエアの開発費などを含め、機構面でも留学生交流推進室の新設、教育設備専門官の配置などを求めている。教育設備専門官は情報化社会における教育設備の整備を図るためだという。
 さる一日発表の第四次全国総合開発計画の中間報告でも、国土開発の方向を「世界の中の日本」と位置づけ、一層の国際化・情報化を志向している。しかし現実に目を移すと、一部のモデル校を別にすれば、大方の学校現場は相変わらず閉鎖的、画一的、硬直的、非国際的であり、わが国の教育の根深い病弊を引きずっている。「国際化への対応」は叫ばれても、一般には留学生の受け入れどころか、海外経験を積み、将来の日本にとって貴重な財産のはずの帰国子女がいじめの対象にされているし、国際化に欠かせない英語教育にしても入試に災いされ、聞くことも、話すこともできない指導がまかり通っている。
 「情報化への対応」にしても、そうだ。これからはコンピューターをベースにした社会になることは確かなのに、例えば、情報化に必要なパソコンの学校への設置率は小学校二・一%、中学校一三・八%(昨年十月、日本教育工学振興会調べ)という低さ。八〇・六%の高校はともかく、小・中学校の場合、先進諸国に比べるとひどく立ち遅れている。コンピューターのハード面では世界の最先端を行くというのに、どうしたことか。
 教育界は大きな節目を迎えたにもかかわらず、全国的にみると、新しい国際化時代や情報化社会への対応は極めて鈍い。ビジョンと現実とのこの極端な落差をどうするか。国任せ、行政任せでは落差はなかなか縮まらない。これから日本の進むべき方向が「世界の中の日本」であるとするなら、第一、第二の教育改革期に先輩たちが外圧を逆手にとったように、今度もまた国民一人一人が時代の変化を読みとり、変化に伴う障害を克服しながら外圧を福に転じる努力をすることだろう。
(斎藤 康広編集委員)

 
 
 
 
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