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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/10/28 毎日新聞朝刊
[新教育の森]「学校は変わったか」読者の声 「平成の改革」・・・現場に戸惑いと批判
 
 すべての土曜日が休みになり、学習内容も大幅に減った小、中学校の現状を紹介した企画「学校は変わったか」(7日から7回掲載)には、現場の教員を中心に多くの投書をいただいた。学校の体制が整わないまま始まった「平成の教育改革」に対する戸惑い、批判が目立った。一部を紹介する。【教育取材班】
 
◆習熟度別授業
◇じっくり学べ、意欲高まる/分からぬつらさに配慮を
◇女性の小学校教諭(35)
 学力の低い子供は、6年生でも前の学年の学習内容が理解されておらず、「分かる」ところまで持っていくには、何年もさかのぼらなければなりません。習熟度別学習を組み入れても、なかなかそこまではできません。学力が目覚ましく向上したと数値で示すのは難しいと思います。
 しかし、子供たちの意欲は目に見えて高まりました。どの子も先生に見てもらいたいものです。習熟度別では少人数でじっくり学習できるため、子供たちに目配りでき、声もかけられます。習熟度別学習には「理解」以外の効果があることを知ってほしいと思います。
 
◇東京都大田区、養護学校高等部教諭
 横浜市の中学校でせっかく始めた習熟度別学習を打ち切ったという記事を読みました。保護者からの不満が理由ということですが、当の子供たちの思いはどうだったのかと考えました。
 養護学校高等部に来る子供たちに接していると、どんなに切ない思いで小中学校時代、分からない授業に耐えてきたのだろうと、胸が痛みます。もともと子供たちは勉強を分かりたいのです。
 それを「せめて義務教育だけは同じ授業を」というのは、親御さんの見えではないでしょうか。
 
◇英語は総合学習で十分−−横浜市港南区、主婦、荒谷和美さん(41)
 2人の子供が通う公立小学校では「国際理解」の授業で英語を教えています。ガーナやフィリピン、台湾など各地から来る先生と触れ合うことによって、海外の国や地域を知りたいという子供たちの気持ちが強くなったように思います。
 先生の母語が英語でなかったり、単年度で交代したりで、2人とも英語がよく分かるようになったとは言えませんが、話し手が話す内容をしっかり持っていない限り、高度な英語を学んでも無駄な気がします。
 小学校では、英語を外国人を理解する道具と位置づけ、今後もあえて正式な教科とせず、総合学習の時間を充てるだけで十分だと思います。
 
◇詰め込み勉強も必要−−東京都中野区、女性(78)
 フランスの小学校では、美しい韻を踏んだ詩の暗記が宿題として課されていると聞く。言語の習得には、幼いころからの繰り返しの訓練が大切なことを理解しているのだと思う。算数や国語、理科などの勉強で、ある程度の詰め込みは必要ではないか。
 繰り返しの訓練は、幼児が言語を習得していく過程と同じで、子供たちの創造性や独創性を育てるのを妨げるとは思えない。
 
◇学校は塾に比べ反復練習が不足−−高知県中村市、公務員、小松憲司さん(43)
 小学校4年と2年の2人の娘は、3歳から知能開発塾に通っています。国立大の付属小に2人が入学して気づいたのは、塾と小学校で教える算数の難易度の差です。塾では九九や初歩的な加減算を反復訓練によって習得するため、小学校入学の時点で2、3年生程度の計算能力が身に着いています。ところが、小学校では反復学習がほとんどなく、九九などにも数時間しかさいていません。
 経済的な理由で塾へ通えない子供は、公立小学校の授業だけで、九九や基本的な計算能力を身に着けることは大変だと聞きます。経済力の差が子供の学力の差に表れるようで恐ろしい気がします。文部科学省の「ゆとり教育」によって学校外の教育費がかさみ、家計を圧迫することに不満を感じています。
 
◇「良い授業」のため教師増を−−仙台市宮城野区、女性小学校教諭(52)
 仙台市の小学校では、担任が全教科を1人で担当しているが、既存の教科だけでもまじめに取り組もうとしたら時間が足りない。総合学習は周到な準備をすれば5〜6時間もかかる。現状では教師に1時間たりとも空き時間がなく、考える時間を取りにくい。
 そこで、多くの学校や教師は、国語や算数などの授業に地道に取り組むよりも、「目新しさ」や「特色」に走り、周囲をあっと言わせるような総合学習の授業を作ることに意識を奪われている。
 余裕のある時間を過ごせて初めて良い授業ができる。今やるべきことは、教師を増員して負担を減らし、考える時間を持てるようにすることだ。
 
◇公平性に問題ある絶対評価より、相対評価が適当−−奈良県橿原市、元中学校長、北村斗美夫さん(74)
 絶対評価では、学ぶべき内容を教師がしっかり把握していなければならないし、客観性や公平性をどこまで保証できるのかという問題点もある。
 高校入試で絶対評価の調査書(内申書)の導入を見送った府県の対応は当を得ていると思う。
 相対評価でも、努力した者とそうでない者の差は、歴然と表れるはずだ。
 内申書の問題を含め、評価が甘くなる恐れのある絶対評価はいただけない。
 
◆総合学習を巡る問題点
◇予算不足/文科省は自信持て/現状では無理
◇和歌山市、高校教諭、園部俊治さん(52)
 総合学習を行うには、現在の公立学校の予算・事務制度が障害になります。たとえば、公民館が独自に講師を探し、話をしてもらったら謝礼を出せます。ところが、公立学校では、同じような予算執行制度がないか、あってもなかなか自由に使えません。結局、講師にボランティアで来ていただくか、保護者から集めている学年費などを使うしかありません。
 行政側には教師に対する根強い不信感があり、備品や消耗品、光熱費など以外に学校の裁量で使えるお金はありません。学校に年間20万円くらいを与えて、講師を自由に呼べるようにすれば、かなりやりやすくなると思います。ボランティアに頼らなければ、総合学習をできないのはおかしいのではないでしょうか。
 
◇群馬県高崎市、女性中学校教諭(43)
 国語の授業で平和について学習しても、戦争中の生活の様子を調べたり、お年寄りの話を聞いたりということは、なかなかできません。総合学習の時間なら、こうした体験ができるのです。
 しかし、現場には「総合学習も5年もすればなくなるよ」という声があります。学力低下を懸念する声に反応して、学力調査を実施したり、朝読書や補習を勧める文部科学省のあわてぶりを見ると、「やはり総合学習はなくなるのか」と思ってしまいます。
 文科省には自信を持って「今までと違う学力がつくのだ」と言ってもらいたいと思います。そうでなければ、教師はただ振り回されて疲れ切ってしまうばかりです。
 
◇高知市、主婦、川口長子さん(54)
 日本人2人が今年のノーベル物理学賞と化学賞を受賞することが決まりました。いずれも長い年月の探究のたまものであって、基礎学力が大切なことは言うまでもありません。しかし、理数系の学力低下が指摘されている今の小中高校生の現状を見ると、科学技術立国は難しいという気がします。
 学校の本来の役割は、計算や漢字といった基礎と努力の大切さを身に着けさせることだと思います。自ら考え、問題を解決する力を育てるという総合学習のようなことは、以前は家庭や地域で、やっていたことです。授業時間の少なくなった学校が、そんなことに取り組むのは無理があります。


 
 
 
 
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