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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/12/23 毎日新聞朝刊
[ニュースキー2000]教育改革国民会議最終報告 「奉仕」揺れた義務化
 
◇反発強く、表現削除
 分科会報告で「奉仕活動の義務化」を提言して論議を呼んだ首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」(江崎玲於奈座長)は、22日の最終報告で強制をイメージさせる「義務付け」の表現を削除したが、「滅私奉公」を連想させるとして疑問の声が出た「奉仕活動」の言葉は残した。文部省はこれを体験学習などと読み替えて教育現場で実施していく方針だが、介護が重要になる少子高齢化社会を迎え、「奉仕活動の義務化」は問題提起として残りそうだ。【教育改革取材班】
 
●名を捨て実を
 「義務化と書き込んだ方がいい、という委員が多数を占めたが、引っ込めた。社会人に義務を課すことはむずかしい。相当な議論があった」
 牛尾治朗副座長は、最終報告をまとめた後の会見でこう述べ、義務化の言葉を支持した委員が多かったことをうかがわせた。
 7月の分科会報告で「小・中学校で2週間、高校で1カ月、満18歳のすべての国民に1年間の義務化」とされた奉仕活動は、「新たな徴兵制か」との極端な反対意見も含め、教育現場に賛否の声が上がった。
 学校のカリキュラムに載せれば事実上、義務付けることになる。そのため、9月の中間報告で、小・中・高は「全員が行うようにする」と変更、強制のイメージを薄めることに努めた。
 さらに今回、18歳についても、「満18歳後の青年が一定期間、奉仕活動を行うことを検討する」と変え、「義務」の言葉は一掃された。
 決め手は、憲法18条の「何人も…その意に反する苦役に服させられない」の規定だった。内閣法制局から、「憲法違反として野党が反対する」との情報が寄せられた。「義務の言葉にこだわって、肝心の学校教育でも出来なくなったらまずい」(起草委員)との判断に傾いた。
 
●ショック療法
 「奉仕活動の義務化」は曽野綾子委員の発案だった。分科会報告の土台となった「日本人へ」の中で、「そこで初めて青年たちは、自分を知るだろう。……受けるだけではなく、与えることが可能になった大人の自分を発見する」と述べ、他者への献身の意義を説いた。
 全国4カ所で開かれた公聴会では▽なぜ奉仕なのか▽ボランティア活動ではいけないのか▽奉仕(という言葉)は戦前の滅私奉公につながる――などの批判や疑問の意見が多く出された。
 「もっといい言葉はないか」。委員も「奉仕」に代わる言葉を探したが、適切な言葉が見つからない。最終的に「子供は、学校も親も世の中も自分のためにあると思っている。これを転換させる必要がある」(起草委員)と判断し、ショック療法としての効用も狙って「奉仕」の言葉が残された。
 
●換骨奪胎に
 しかし、教育現場では「奉仕」が使われる可能性は薄い。文部省幹部は「奉仕活動と限定する必要はない。すでに教科以外の体験学習に取り組んでいる」と指摘。知識偏重の教育を改めるため、同省はボランティア活動や自然の中に入る体験学習を進めている。2002年度から実施する新学習指導要領でも「自ら学び、自ら考える力を育てる」との「学力観」に基づき、総合的な学習の時間などで体験学習に力を入れることにしている。
 国民会議は「共同生活で奉仕活動を」とも提言しているが、文部省は「学力低下が批判されている時に、2週間や1カ月の共同生活など無理」との立場。「夏休みや週休2日になる土日を使って、細切れに活動せざるを得ない」というのが本音だ。
 
◇「国民の声を無視」−−日教組が批判
 日教組は22日、教育改革国民会議の最終報告に対する見解を発表した。教育基本法の改正について「官邸と政治の主導で、提案は『改正ありき』に転換していった。専門家や国民の声を無視し、委員の意見も必ずしも一致したものではない」と批判。また、大学入学年齢の撤廃などについても「高校教育の空洞化や受験戦争の低年齢化を招く」と指摘している。
 
◇自然に伸びる環境を−−さわやか福祉財団理事長・堀田力さん
 学年の枠を超えて学べるシステムや少人数教育の実施など、子供たちの個性を認める改革案は大いに賛成だ。しかし、教育基本法改正についてのせっかちな議論には、復古的な、国家管理の意図がにおう。
 奉仕活動についても、義務化という表現は取れたが、発想には同じにおいがする。子供が社会的な役割を理解していないという指摘は正しいが、それを教えるためには、現在の知識中心の教育が子供たちの個性を認めていないということを正すべきだ。
 他人の役に立つことの意義を理解するための前提は、自分が認められているということだ。自分を大切に思えなくて、他人を大事にすることなどできるはずがない。それを強制で奉仕させても、苦役と受け止めて嫌悪感を持つだけだ。人の役に立つ喜びを教えるには、子供たちに活動内容を選ばせ、可能な限り自主的に体験させることが大切だ。
 教育基本法は憲法よりもすばらしいと思う。個人の尊厳をはじめ、人間教育の基本がすべて書いてある。どこを変えるべきなのか分からない。まだ、理念が達成されないことが問題だ。
 日本らしさがないというが、どの分野の基本法にもそんなものはない。文化や伝統を書いていないというが「個性豊かな文化」と書いてある。これまでの日本の伝統は、政治的社会的には、封建体制で非民主的なものだ。それをなぜ盛り込むのか。
 子供への管理強化でなく、大人が率先してボランティアをやれば、子供は自然についてくる。大人が気をつけて、子供が自然に伸びる環境をつくることが大切だ。


 
 
 
 
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