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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/01/29 毎日新聞朝刊
[新教育の森]日教組の教研集会から――切実な報告、次々と
 
 日教組の第49次教育研究全国集会が22日から25日まで、金沢市を主会場に開催された。子供たちの変化や新しい制度改革に戸惑い、試行錯誤する教師たち。今の教育現場を映すリポートを拾った。【教育取材班】
 
◆学校の自由選択制
 基本的に文部省との協調路線をとる日教組が現在、同省の方針と対立するものに「学校の選択自由制導入」がある。
 開会のあいさつで川上祐司委員長は「自分たちの学校をつくるという機会を奪い、特定の学校を排除するといった隠れたメカニズムが働く」と選択自由制に明確に反対の意思を示した。
 この問題は「学習と評価・選抜制度と進路保障」の分科会で、全国に先駆けて導入した東京都からの参加者が問題提起した。
 学校の自由選択制は東京都品川区で今年4月から小学校を対象に始まり、追随する自治体も出始めている。リポートでは、選択の自由制は、義務教育の公共制を破壊する▽小中学校の統廃合を促進する▽小中学校の序列化、階層化をもたらす――などと指摘。「選択の自由といえば耳に心地よいが、重大な問題をはらんでいる」と訴えた。
 会場からは「教育改革という言葉が盛んに言われているが、言葉に踊らされてはいけない。我々の感覚を大切にしていこう」という声があった。
 
◆教師の精神疾患 6割が「辞めたい」−−佐賀県教組の聞き取り調査
 「学級崩壊」などのストレスで、精神疾患から休職に追い込まれる教師は増加の一途をたどっている。ある女性教諭(44)が多忙な教員生活でうつ状態に陥り、一昨年10月から3カ月の病気休暇後、職場復帰した体験を報告した。
 中学3年の担任をしていた女性教諭は、ストレスで6月ごろから生理が止まり、ホルモンバランスは80歳代と診断を受けた。
 薬でごまかしながら教員生活を続けたものの、9月には生活指導などに加え、体育祭の準備が重なり、うつ状態に陥った。
 「やらなければいけない」という気持ちばかり先走り、同じ時間でも1割か2割程度しか仕事がこなせなくなった。
 それでも生徒との信頼関係、保護者の批判などを考えると、長期の病休には抵抗があった。しかし、どうしても仕事への前向きな気持ちがわかず、夫や親身に話を聞いてくれる職場仲間の助言もあり、3カ月の病休に踏み切った。
 職場復帰した今、女性教諭は「職場仲間の理解があったのが助かった。うつ状態の時は思い切って休むこと。そして病休者の代替制度や悩みを話せる職場作りが大切だ」と訴えている。
 1998年度に精神性疾患が原因で休職した公立学校の教員は1707人で、過去最多を記録した。
 佐賀県教組は教師の意識調査を発表した。今年度、20〜50歳代の組合員187人に聞き取りをしたところ、「いつも辞めたいと思う」と答えたのは13人。「よく辞めたいと思う」が26人、「時々辞めたいと思う」の71人を加えれば、全体の6割が程度の差はあるものの「辞めたい」と考えている結果となった。
 
◆臨界事故
 「事故が起きても、周辺の多くの小中学校、幼稚園には自治体から連絡がなかった」
 環境問題を扱う分科会では、茨城県教組が茨城県東海村で起きた臨界事故に関する調査結果を発表した。それによれば、東海村の小中学校に村教委から事故の情報が入ったのは、発生2時間後の午後0時半ごろ。隣の那珂町は同1時ごろだったが、他の周辺市町村では約8割の学校に連絡がなかったという。また、事故の連絡はあっても避難に関する具体的な指示がないため、通常通り屋外で授業を続けるケースもあった。
 アンケート調査では「事故当日、何の情報もないまま、子供はグラウンドで放課後の練習をし、夕立ちにも遭っている」「学校は世間の情報から隔離されている」など行政に対する不信の声が寄せられている。
 同教組は「行政もそうだが、当初から教員の中でも事件の重大性への認識が低かったことは大きな反省点だ」と強調した。
 
◆いじめ、不登校−−熱心な指導は逆効果に
 特別分科会「いじめ・不登校」では、3日間、不登校児と学校とのかかわりが論じられた。苦しんでいる不登校児に先生が「熱心に」働きかけることでかえって子供が苦しんでいる現実から、「教師は不登校児に学校に来なくていいと言えるか」「不登校児とどこまで本音で対話できるか」が議論された。
 教師側にとっては「学校に来なくていい」というのは自己否定で、多くの教師に「それでも行ってほしい…」と戸惑いがみられた。新潟県の男性教諭も「議論の最初はつらかった」と話したが、「学校は不登校でも何でも、問題を抱え込んで、解決しようとばかり考えている。解決できないことはできないというべきで、自分もそうしようと思う」と話した。
 また、生徒と本音で話し合い、なぜ学校に行けないか「対話」する重要性も語られたが、不登校児を支援する大学院生からは「先生は通知表で評価する人。対話といっても、左手で拳銃(けんじゅう)を持って右手で握手するようなもので、対話には限界がある。通知表をなくしたり、学校に来なくてもいいような制度を作ることこそ必要」と、「対話」への疑問も示された。
 共同研究者として議論に参加したカウンセラーの内田良子さんは、教育委員会が不登校児を問題視して「削減」を目標に掲げ、教師が家庭訪問し子供を殴って連れて行くような事件が頻発していることを指摘した。「『教え子を再び戦場に送るな』とスローガンを掲げているが、不登校児の多くが、学校を競争させられる『戦場のようだ』と言っている。学校に行かない権利・アイデンティティーをどう保障するかを考えてほしい」と訴えた。
 内田さんは「大人だって会社に有給休暇がある。子供にも休暇を認め、50日間学校を休んでも問題視しないようにすれば、不登校の問題は随分解決されるのではないか」と話していた。
 
◆総合的な学習の時間−−意欲的な取り組みも
 今回の教研集会で、大きな関心を集めたのが「総合的な学習の時間」への対応だ。関連リポートは100本を超え、「学校5日制・教育課程」の分科会だけでなく、社会科教育、理科教育、環境・公害と食教育など多くの分科会で取り上げられた。
 「生きる力」の育成を目的とし、新学習指導要領の目玉でもある「総合的な学習の時間」について、現場では、期待と不安が交錯している。教科教育の空洞化につながるのではないかとの危ぐや、学力格差が拡大するとの警戒、さらに教師の多忙化は確実で狙い通りの成果を上げるのは無理なのではないか、という疑問も根強い。
 しかし、今回は、教育内容も方法も「現場の創意工夫にゆだねられている」ことを前向きにとらえ、積極的にこの時間を生かしていこうとの視点からのリポートが多かった。
 小学校では、実践の成果をテープや写真、それに作品そのものを持ち込んで披露する楽しい総合学習もあれば、地域の課題に根差したオーソドックスな総合学習、メディア・リテラシーという新しい課題に取り組んだ総合学習と、多彩だった。
 受験圧力もあり取り組みが遅れている中学・高校でも、この時間の持つ可能性を感じさせるリポートがあった。修学旅行などの行事を膨らませた試み、夜間中学との交流を核にした実践、学校外の人たちの蓄積を取り入れた学習などは注目に値する。
 ただ、高校では、受験産業が「受験用小論文対策の時間」とするよう提案したり、英数国の受験対策に特化させる研究を持ちかけられた例も報告された。現場の裁量に任されているということは、教師自身の基本姿勢が問われることになる。討議では、「いつまでも受け身ではいけない」「求められているのは教師の主体性であり、教師自身の授業観、学習観の転換だ」などの声が聞かれた。確かに総合学習では、教師の役割、責任は大きくなる。教科書の中身を繰り返すだけの授業では持たない。教師の力量が問われている。


 
 
 
 
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