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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/07/26 毎日新聞朝刊
[社説]文部省・日教組 教育の分権・参加を探れ
 
 文部省と日教組の「歴史的和解」が実現する運びになった。日教組は九月の大会で、これまで否定してきた学習指導要領や初任者研修を認める運動方針を提案する。一方、文部省も近く、中央教育審議会の専門委員に日教組の幹部を起用する。双方の措置により四十年以上も続いてきた敵対・対立関係が協調に転じることになる。
 「勤評」「学テ」などをめぐる昭和三十年代の文部省と日教組の対立抗争は、政治の焦点とさえなった。その歴史的意義まで否定するわけではないが、東西冷戦構造も五五年体制も崩壊した現在、過去の遺物となった観があるのは否めない事実である。硬直したイデオロギー的対立を捨て、時代に見合った協調関係を築くという双方の英断をまずは歓迎したい。
 しかし、過去の遺物といえば、「中央」が地方に号令を発するという組織のあり方も、すでに否定されかかっている。時代が要請しているのは分権・自治・参加などである。
 文部省も日教組もともに「中央」から号令をかける全国組織である。時代によって否定されそうになっている二つの組織が、協調して「延命」を図っているのではないかという疑念を抱かざるを得ない。
 日本の教育はあまりに中央集権的、画一的である。明治期に教育勅語イデオロギーと西欧科学(洋才)の体系を教え込む教育システムを作った。さらに戦後、軍国主義の基盤となった「日本の封建制」を否定するため、米国流の「民主主義」を教え込む教育が行われた。
 地域的なもの、土着的なものは、こうして二回にわたって否定されたのである。文部省だけが悪かったのではない。日教組もまた「東京発・民主主義」を振り回し、地域の親たちの声を「草の根保守主義」と否定し続けてきた歴史を持つ。
 いまでも都道府県、市町村教委は、首長の意思も、議会の意思も無視した管理的教育行政を実施している。「教育の中立性」が口実なのだが、文部省の指示にだけは忠実に従うのである。ましてや親の意思、子どもの自主性といったものが学校教育に反映されることはない。
 こうした「過剰管理」が、いまの学校を死んだ存在にしてしまった。教師にも子どもにも生命の躍動感などなく、いじめ、体罰など陰湿なものだけが横行し、多くの子どもが不登校に陥っている。
 文部省、日教組とも歴史的和解によって、こういう学校の現状をどう打破するかの道を探りたいという姿勢を打ち出している。しかし、中央からの指令、指示でいじめなどがなくなるのなら、どの問題もすでに完全に解決ずみのはずだ。
 問題は学校現場の自主性なのである。父母と教師が(ときには生徒も加わって)どういう教育を目指すか真剣に話し合う。そして苦しみながら協力して、一つひとつの問題を解決していく――。こういう活動が一般化しなければ、いじめなどの深刻な問題はなくならない。
 不毛なイデオロギー的対立をやめるということは、意義が大きいといっても消極的な行動にすぎない。
 今後積極的に取り組むべきは、分権・自治・参加を基本とした教育のありようを探ることだ。その結果、仮にドイツのように中央政府に文部省がないシステムになっても何の不思議もないだろう。


 
 
 
 
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