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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/12/19 毎日新聞朝刊
[社説]息苦しい教育の改革へ一石
 
 第十四期中央教育審議会が十八日、公表した学校制度に関する小委員会の中間報告は、これまでにない新しい視点から教育改革に切り込んでいて、刺激に満ちた内容になっている。
 まず報告書は「教育改革は固定した未来像や産業国家としての計画や目標を先に掲げ、それに合わせて現在の教育を意図的に変えようという性格のものではない」と述べ、明治以来の国家目標に合わせた教育政策からの転換を図っていることが注目される。
 その上で「現在の教育の持つ歪(ゆがみ)を正し、子どもの心の抑圧を軽減して、人間性の回復を図る」ことを今回の審議の目標に掲げている。
 子どもの心を抑圧し、息苦しくしているのは「あのうっとうしい学校間の格差や序列」であり、それが引き起こしている偏差値偏重の受験競争である、と指摘、これを改めるために受験学力だけでなく、子どもの能力を多元的に評価すべきことを求めている。
 また、画一的・一斉授業方式の効率的な形式的平等主義を改め、手間ひまはかかるが、子どもの個性に応じた教育を保障する実質的平等をめざすべきだとし、「平等」と「効率」に新しい概念を提示している。
 そのためにはいまの学校教育、とりわけ諮問のテーマになっている高校教育をどうするか、中教審は主に制度面の改革案を示している。
 それは、偏差値だけに頼らず子どもの希望を生かした進路指導であり、子どもの興味・関心や社会の変化に対応した新しいタイプの高校の創設や職業学科の再編であり、選択科目を多く用意したカリキュラムである。
 これらは目新しいことではなく、すでに一部実施されていることである。ただ「子どもの個性」を生かし「学校間格差をなくす」という中教審の観点に立って考えると、これだけでは十分と言えないのではないか。
 中学校の教員や親たちが言うように、ほとんどの子どもは普通科高校に行きたがっている。まして十五歳の段階で自分の個性や将来の職業について自覚している子どもはごく少ない。
 この現実をどうするかが問題だろう。産業社会に生きる親や子どもに「個性的な生き方」へ意識改革を求めるのは難しいことである。
 だから普通科高校を増やし、希望者を地域の高校へ全員入学させ、生徒の興味・関心に応じた選択授業を行うことが考えられてよい。
 多様な学力・能力を持った生徒が共に学ぶ。そのことが高校の格差・序列を解消し、子どもの「心的抑圧」を解放することになるのではないか。
 報告書も述べている。「どの学校にも多種多様な能力や才能を持つ人間ができるだけ広く散在することが、人格交流の豊かさと相互の刺激による高め合いをもたらす」と。
 中教審は、高校に偏差値輪切りで不本意入学した生徒に、学校・学科を変われる自由、中退者に復学を認める制度、そのために一定数の編入学定員を用意することなどを提案している。このことは、学ぶ側に立った考えとして評価したい。ぜひ実現してほしい。
 一方、中教審は二つの大胆な改革案を示している。
 一つは、一高校から一大学へ入学する数を制限するという案である。これは東大、京大など超トップ校に入る学生の出身高校が、ごく限られた有名進学校に偏っていることがもたらす弊害を改めるのがねらいという。であるなら、むしろ受験学力優先の入試を改めることの方が先決ではないか。
 もう一つは、数学の異才な高校生を十八歳を待たずに大学に入学させる、あるいは数学、物理に優れた中学生・高校生に大学レベルの教育を受けさせるという案である。
 特異な才能を伸ばすことに異論はない。しかし、その方法は学校教育の枠組みの外でも可能ではないか、との意見もある。
 中教審はこの中間報告書を市販し、国民の意見を求めることにしている。国民合意の教育改革へ活発な議論がわき上がることを私たちも期待したい。


 
 
 
 
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