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1987/04/02 毎日新聞朝刊
臨教審第三次答申を提出、教科書の新しい検定制度創設を提唱
 
 臨時教育審議会(岡本道雄会長)は一日、具体的提言としては事実上最後のものとなる第三次答申を中曽根首相に提出、その内容を公表した。昨年四月の第二次答申(基本答申)とともに臨教審が目指した教育改革の基本的指針となる。このうち教科書制度改革では密室的で細かすぎるといわれる教科書検定制度について、現行の三段階審査を一本化するなど簡素化し、「新しい検定制度」を創設するよう提唱している。
 (2面に続き物「変わる教科書検定」、12、13面に答申内容要旨)
 答申のうち「初等中等教育の改革」では、一月公表の「審議経過の概要(その四)」で結論が出ていなかった「教科書制度改革」について、検定作業をできるだけ簡素化するため、現在、原稿本、内閲本、見本本の三段階にわたって行われている審査を一回限りとし、検定基準についても細かな編集技術や体裁ではなく、内容の正確性や水準、中立性などの総合的基準により重点を置くよう求めた。さらに総合的な見地からの合否判定を行うための制度見直しを提言。
 合否判定、修正指示についての文相の裁量権は従来通り認めており、現行制度の大枠は維持されるが、教科書の著作・編集責任を民間の教科書会社に負わせ、検定の機能は教科書としての適格性の判定に重点を置く、としている。改革に伴い民間の教科書編集能力を向上させるため、官民協力などのやり方で研究センターを整備し、「教科書作成の手引」を作ることや検定審査過程、合否理由の公開、採択周期(現行三年)の長期化なども提案。また、義務教育用教科書の無償給与制度は「当面、継続する」とした。
 「教育費・教育財政の在り方」では資金の重点的、効率的配分、民間活力の導入による教育活性化を求める一方、資源小国のわが国が目ざすべき方向として「教育・研究、文化・スポーツの分野の振興と国際的貢献」を挙げ、国民経済の資源配分の重点を教育に向けるよう訴えた。
 このほか、さまざまな意味で「開かれた学校」を目ざす改革提案として(1)高度情報化し、地域任民も利用できるインテリジェント・スクール構想(2)一般児童・生徒とともに外国人子女や帰国子女を受け入れる新国際学校(3)都市と農村の交流のための自然学校の推進−−などを提言。「九月入学」導入の是非は最終答申に結論を持ち越した。
 
[答申の骨子]
 生涯学習体系への移行 公的職業資格の受験等に必要な要件から原則として学歴を除く。生涯学習に取り組む市町村のモデル地域を指定。教育施設ノインテリジェント化推進。
 初中教育 審査の簡略化を中心とした「新しい検定制度」を創設。高校入試の多様化、個性化を図る。自然学校の推進。通学区域の弾力的運用。
 高等教育 公財政支出を(1)基礎研究(2)国際化対応(3)大学院の充実に重点化。教員への任期制導入。
 スポーツ教育 スポーツ六年制中等学校を一定の地域プロックごとに設置。官民一体となった「スポーツ振興推進懇談会」の設置。
 国際化・情報化 新国際学校の設置。情報モラルの確立。
 教育財政 今後のわが国の諸投資の重点を教育、文化に置く。政府は教育改革の円滑な実現に最善の努力をすべきだ。


 
 
 
 
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