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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/07/23 産経新聞東京朝刊
【正論】国民投票が可能にするもの
松本健一(麗澤大学教授)
 
◆根底的な議論なかった国会
 二年まえ、国旗・国歌法が制定されたあと、わたしは本欄に「国民投票制の活用を」を書いた。(九九年十一月二十二日号)
 わたしがそう考えた理由は、日の丸・君が代の法制化をめぐっては政党間の取り引きのみが先行し、ナショナル・アイデンティティの再構築に関する根底的な議論がほとんど行われなかったからである。国会はいわば「国民に尻をむける」かたちで、仲間うちだけでこの問題を処理したのだった。
 そこでわたしは−もしこのとき国民投票が実施されていたなら、この問題について国民一人ひとりが決断を問われ、その結果、国旗・国歌についての認識をふかめ、国民的責任を自覚する機会になったろうに、まことに残念なことをした。と書いたのだった。
 改めていうまでもなく、現行憲法では、その改正にあたって国民投票が行われる(第九十六条)、と定められている。憲法のなかに「国民投票」という言葉がでてくるのは、この一度だけである。その国民投票について定めた法律もない。
 
◆人気投票に陥る危険はない
 そこでわたしは次のように考えたのだった。−わがくにの憲法がいやしくも国民主権をうたっているなら、ナショナル・アイデンティティの再構築に関わるような重大決定に関しては、国民投票制を確立し、その活用をめざすべきなのではないか、と。
 そのような重大決定とは、たとえばどのような問題を意味しているのか。わたしは昨年十二月七日の憲法調査会において、憲法改正や君が代や首相公選などにふれながら、参考人として次のように陳述した。
 「ナショナル・アイデンティティの根幹にかかわる問題は国民に直接問うて、そして国民がたとえ五一%で君が代を認めたのでも、当面これでやっていこうというふうに考える。憲法でさえも五十数年ぐらいしか命脈がないというふうに考えれば・・・また時代が新しくなってくれば国民投票、国民の信を問う、そういうシステムが必要になってくるだろう。・・・国民投票が行われなければ、首相公選は結果としては行われませんから、首相公選ということも考えにいれていくべきだろう、と」
 要するにわたしは、憲法改正ばかりでなく、一昨年の国旗・国歌法や、現在国会ですすめられたり凍結されたりしている首都機能移転の撤回なども、国民投票にかけたほうがいい、と考えているのである。国民投票は人気投票に陥りやすいと考えるひともいるが、そうではない。それは、政府が国民を信頼して、その決断を迫り、政治責任を自覚させる方法なのである。
 
◆国民投票法というアイデア
 しかし、国民投票という言葉が憲法のなかにあるとはいっても、これは過去五十数年、一度も日本国民の権利として行使されたことはないし、第一、その国民投票はどのように行われるかについて国会で議論がかわされたこともないのである。
 そんなことを考えていたら、さいきん新聞に次のような記事がのっているのが目にとまった。
 −中曽根康弘・元首相が七月四日に行った講演で、憲法改正にふれながら次のようにのべた。「参院選が終わったら(衆参両院の)憲法調査会で国民投票法を議題にのせ、要綱をつくる。今秋以降に論議して案をつくりたい。それは憲法改正にとって大きな力になる」、と。
 つまり、憲法改正のためにはどうしても国民投票の具体的な方法の制定が必要になる。それゆえ国民投票法をつくっておきたい、というのである。
 なるほど、政治家の思考のチャンネルはそのように回転するのだな、と改めて感じさせられた。中曽根氏の考える国民投票法が憲法改正にのみ焦点をあわせたものなのか、それともかねてからの持論である首相公選まで視野にいれたものなのか、その講演要旨だけでは判然としない。
 しかし、国民投票法が制定されれば、それは当然、首相公選にも適用され(う)るだろう。そうして国民は、ナショナル・アイデンティティの根幹にかかわる問題については、最後の最後のところで、じぶんたちの意思が問われるものだ、と政治に信をおぼえるようになるだろう。
 わたしはさきの憲法調査会で、次のように述べていた。
 「・・・国民一人ひとりの考え方を問う国民投票制というものを導入していく。そういう(国家デザインや民族の進みかたなど)大事な問題に関しては国民一人ひとりが問われるんだ・・・」と。
 
◇松本 健一(まつもと けんいち)
1946年生まれ。
東京大学経済学部卒業。
京都精華大学教授を経て、現在、麗沢大学教授。


 
 
 
 
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