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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/02/23 産経新聞朝刊
【憲法ディベート】
西修氏(駒沢大教授)
 
 宮沢首相、後藤田法相らの憲法改正に対する慎重発言は、九条や天皇に重きを置く従来の復古調的改憲論を念頭に置いているようであり、最近の見直し論議の根底にあるものを見ていないように思える。
 例えば日本新党は、政策大綱で憲法の平和主義原則を尊重しながら改憲に真正面に取り組むことをうたい、平成維新の会は「生活者主権」「道州制」を掲げて自前の憲法改正論を展開している。労組からは山岸連合会長が憲法論議を主張し始めた。このように新しい政治勢力から見直し論が打ち出されたことに、大きな特色がある。社会党も護憲一点張りから「創憲論」を言わざるをえなくなった。
 その背景として社会主義勢力の後退による「冷戦の終えん」、それに伴いイデオロギーの呪縛(じゅばく)から解放されたこと、湾岸戦争後に生じた国際協力の必要性の増大と憲法との乖離(かいり)、戦後生まれ世代の柔軟な憲法観などを挙げることができよう。
 見直しの対象とされるべきは安全保障の問題だけではない。政治改革の根幹にかかわる政党と政治資金との関係、国会の二院制のあり方、国民主権を徹底した国民投票制の導入、環境保護条項の新設など、多面的な見直しが必要である。
 私は「昭和憲法」はその役割を終え、第二段階に入りつつあると考えている。「明治憲法」と比較すれば、はるかに民主的で平和的であり、施行されてからすでに四十六年を経て、これらの原理は定着したといってよいだろう。国民の高い教育程度からして、元に戻ることはまず考えられない。
 今なすべきは民主主義、平和主義の中身の再点検である。権利意識は定着したが、他方でミーイズムやゴネ得がはびこっている。ボランティア精神も希薄である。こんな意識が国家全体にまん延し、自分の国さえ良ければよいという自国中心主義に陥っている。資源もなく国際社会の中で生きねばならないわが国がそれにふさわしい憲法体制であるか点検すべきだ。
 憲法を考える場合、政治家や有識者に任せるだけではなく、それぞれの立場でごく身近なことから発言してよいのではなかろうか。「お年寄りを大切にという一カ条を入れよう」という声もよいではないか。いろんな人が意見を出す。内閣や国会がそれらを収れんし国民に提示していく。「平成憲法」は、そんな形で作っていくといいだろう。(談)
 
◇西 修(にし おさむ)
1940年生まれ。
早稲田大学大学院修了。政治学博士。
現在、駒沢大学教授・法学研究所長。


 
 
 
 
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