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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/12/28 産経新聞東京朝刊
憲法改正案の全文
 
【基本的な考え方】
 (1)現行日本国憲法は、国民主権、平和主義、基本的人権といった国家・社会運営の枠組みを定めることによって、戦後日本の発展に大きな役割を果たした。
 (2)しかし、現行憲法は占領下という主権が制限された状況でGHQにより与えられたという性格は否めず、文章も日本語として十分こなれていない。
 (3)現在は大きな転換期である。明治維新以来百数十年の「欧米先進国へのキャッチアップ」又は「近代化」という国家目標は達成され、少子・高齢・人口減少社会の到来、グローバリゼーションの深化、規格大量生産型社会から多様な価値の共生する社会への転換といった社会変化が生じている中で、新しい国家像、国民目標が求められている。国民的議論の下で、現行憲法の優れた部分は残しながら、新しい憲法を作るべきである。
 (4)おおむね三−五年以内に改正を実現することを目途として、衆参の憲法調査会において議論を深め、各党合意案を作るべきである。全面改正が望ましいが、大方の合意が得られるものから段階的に改正することはやむをえない。
 (5)各党が「基本方針」をもっていることが衆参の調査会での合意形成を円滑にするので、自民党としては、党憲法調査会でわが党の「基本方針」又は「試案」を早急にまとめ、合意形成にイニシアチブをとるべきである。
 
【前文】
 (1)憲法前文は、わが国の国家像、国民共有の目標と理想を提示する憲法の核心的な部分である。ところが現行の前文は、GHQの「変えさせない」という強い意志があったために、制定当時、国会および内閣法制局の審査は行われず、稚拙な翻訳調の文章のままであり、全面改正するべきである。
 (2)中学生が理解できる程度の平明、簡潔、格調の高い文章とするべきである。現行の国民主権、平和・国際協調主義、基本的人権は堅持し、とくにこれからのわが国の国家像として「国際社会への積極的かつ主導的な貢献」を打ち出す。
 (3)民族の長い歴史と伝統を受け継ぎ、美しい国土と文化的遺産を守ること、多様な価値を許容しつつ節度と調和を重んじる共生社会を目指すことを明記する。
 
【天皇制】
 (1)現行の象徴天皇制を維持する。
 (2)天皇は対外的にわが国を代表する「元首」であることを明記するべきである。現在でも実態としては「元首」であり、外国からも「元首」として扱われているが、「元首は内閣総理大臣」と解釈する学説もあり、解釈上の混乱を払しょくする必要がある。
 
【安全保障】
 (1)平和主義(侵略戦争の禁止)は堅持しつつ、自衛のため必要な軍隊の保持を明記する。わが国の安全その他国益を維持するため必要と認めるときは、集団的自衛権、および国連などが行う集団安全保障のため軍隊の派遣(武力行使)を可能とする。憲法に詳細な規定をおくことは困難であるため、別に安全保障基本法を制定し、武力行使の要件、範囲などを定めることとする。
 (2)国際協調に関する条項を設け、地域紛争、発展途上国支援、地球環境、自然災害など国際社会の平和と繁栄に積極的に貢献するとともに、国際的機構が行う平和活動に積極的に参画する。
 (3)緊急事態に関する条項を設け、侵略、大規模災害などの緊急事態の際の権利制限などを可能にする。
 
【国民の権利義務】
 (1)公共の福祉の概念を明確にし、権利の乱用を禁止するとともに、すべての国民は社会公共の安寧と秩序を維持するために義務と責任を有することを明記する。
 (2)人格権、プライバシー権、知る権利(行政情報開示請求権)を明記する。
 (3)環境権については、権利の内容が明らかでなく、明文化した場合混乱を生ずるおそれがあり、外国憲法にも立法例が少ない。したがって、現行二十五条二項(国の社会的使命)に、国の環境保全義務を定めることとする。
 
【国会】
 (1)衆議院が政治闘争の場であるのに対し、参議院は、政争から一定の距離をおく国政全般(行政、司法、衆議院)に対する監視機関とし、チェックアンドバランスの機能を果たす。このため例えば、
 ・人事案件の承認(特定の重要な公務員の任命は国会の承認を要するものとする)
 ・最高裁判所裁判官の罷免(最高裁判所裁判官の国民審査は廃止し、国会が審査するものとする)
 ・決算の承認
 などについて参議院の議決を優越させる。
 (2)「一案」法律案の議決について衆議院の優越を認める。
 「二案」現行どおりとする。
 
【内閣】
 (1)議院内閣制を維持する。現行の議院内閣制は首相の選任に国民の意志が直接反映されないため、国民の政治不信を招くという欠陥がある。首相公選制を導入することによって、国民は自分が決めた首相という意識になるため、政治に対する責任意識が高まること、公選首相は、政治的リーダーシップを発揮しやすくなること、などのメリットがある。他方、首相公選によって、人気はあるが適性に欠ける首相が選ばれ、外交や安全保障の面で判断を誤り、国家運営を危険におとしめるおそれがあること、公選首相が議会で多数派でない場合があり、この場合著しく政治の安定が害されること(イスラエルの例)などの欠点がある。この欠点をなくすため、アメリカ型の完全な大統領制をとるとすると、元首となり象徴天皇制と抵触するおそれがある。したがって議院内閣制は維持し、現行制度の下で政治的リーダーシップを高める工夫をこらすべきである。
 (2)内閣副総理大臣の制度を設ける。
 
【司法】
 (1)最高裁判所裁判官国民審査は廃止し、国会が委員会を設けて審査し、三分の二以上の議決で罷免できるものとする。
 (2)「一案」憲法裁判所を設置する。憲法裁判所は、具体的訴訟事件の有無にかかわりなく、申し立てに基づき、法令などが憲法に適合するかどうか審査する裁判所である。現行の最高裁判所は、具体的事件がある場合のみ憲法判断できるが、多くの場合、憲法判断を避けてきたため、内閣の一機関である法制局が重要な憲法解釈をしてきたとの批判があり、憲法判断に真正面から取り組む機関をつくるべきである。
 「二案」最高裁判所より上位の憲法裁判所は司法を混乱させるので、現行の最高裁判所に具体的事件の有無にかかわらず憲法判断ができる憲法裁判所としての機能を兼ねさせる。その場合、高等裁判所相当の憲法裁判所を設け、憲法判断を二審制とすることも考えられる。
 
【地方自治】
 「一案」連邦制を導入する。憲法改正を要するのは、主権を持った国(州)の合成体である連邦制である。真の意味の地方分権を実現するためには連邦制が必要。
 「二案」連邦制には反対。わが国には、連邦制を導入するだけの歴史的背景、社会的実体がない。まず、市町村合併などを進めることが先である。都道府県が合併した形のいわゆる道州制は、現行憲法の枠内で可能であり、連邦制に至る前段階として促進することも考えられる。
 
【その他】
 (1)現行憲法の改正手続きは厳格すぎるので、緩和する。
 (2)私学助成を合憲とする。


 
 
 
 
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