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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/12/25 産経新聞東京朝刊
【一筆多論】憲法改正手続きの改正を 論説副委員長・花岡信昭
 
 憲法論議が高まっているが、改正に向けて大きく近づいたという確信はなかなか生まれてこない。改正には大変やっかいな手続きが必要だからだ。そこで、憲法九六条の「改正手続き」の改正を、まず突破口としたらどうかという意見が出始めている。
 通常の立法手続きで改正できる憲法を「軟性憲法」、特別に厳格な手続きが必要なものを「硬性憲法」という。日本国憲法は“不磨の大典”といわれてきたように、世界でも“硬性度”の高い憲法とされている。
 改正には、発議、承認、公布の三つの手続きが必要だ。各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数を得れば承認され、天皇がただちに公布する−というものである。
 憲法の条文ではそうなっているのだが、それぞれの意味合いがどういう趣旨なのかは、国会法などにもまったく規定はない。そのため、いくつもの疑問が浮かび上がっていた。
 (1)改正案を審議する本会議の定足数は、一般的な定足数(三分の一=憲法五六条)か、議決と同様に三分の二が必要か
 (2)発議権は議員にはあっても内閣にはないのか
 (3)総議員とは、法定数か、欠員を除いた在職議員数か
 (4)国民投票の過半数とは有権者、投票総数、有効投票数のいずれの過半数か
 (5)何条にもわたる改正の場合、国民投票の賛否は一括して求めるのか、条文ごとに行うのか(ある部分には反対だがほかは賛成というケースもあり得る)
 (6)ただちに公布とはどういうことか。一般の法律は奏上の日から三十日以内に公布する(国会法六六条)となっているが、これとの関係は。投票の効力を争う訴訟が起きたりしたら判決確定まで待つのか
 ざっとあげただけでも、不明な点はこんなにある。専門の学者の間で学説が分かれているものも多い。
 とにかく、国民投票で承認を得ることになっているのに、その投票をどう行うかを規定した法律もないのだ。自由党はこの点をついて、国民投票法の制定を求めている。
 世界で最も古い憲法は一七八七年制定のアメリカ合衆国憲法で、これまでに二十七カ条の追補を行っている。ドイツ四十七回、フランス十一回、スイス百三十二回など、どの国でも当然のように憲法を改正してきた。日本国憲法は世界で古い方から十五番目だが、まったく手がつけられていないという点で稀有の存在である。
 佐々木毅東大教授は衆院憲法調査会で、「改正の現実可能性がまったくないという前提のもとでの憲法論議のマイナス効果」を指摘している。憲法は変えられるのだということになれば、政治的なリスクや覚悟を求められるが、そうでないと緊張感を欠き“政治全体のよどみ”を招いてしまう−として、改正発議の条件緩和の検討を提起したのである。
 各国の改正手続きをみると、国民投票の必要がない米国やドイツなどは議会の三分の二の賛成を規定しているが、国民投票との組み合わせ型であるフランスやスイスは通常の議決によると定めている。
 日本の場合、政治状況もあって「三分の二の壁」が重い制約要因となってきた。これを「過半数」に変えれば、「憲法は変えられないものだ」という半ば常識化してしまった感覚から脱皮できる。
 そのためには、「当面、憲法改正の必要性は認めないものの、改正手続きを柔軟化させるのは結構」という立場まで含めて三分の二が確保できるかどうかが焦点となる。
 考えてみると、三分の二条項はきわめて非民主的ともいえる。国会議員は衆院四百八十、参院二百四十二(定数削減後)の計七百二十二人だ。理論的には、このうち参院の三分の一、八十一人が反対すれば、残りの六百四十一人が賛成しても憲法は改正できないということになる。
 社民党の土井たか子党首が来年の参院選の目標として「護憲勢力で三分の一確保」を打ち出したのも、そういう点を意識したものであろう。各種世論調査では国民の多数が憲法改正を容認しているのだが、わずか八十人ほどの“守旧派”によって国民の総意が阻止されるということになれば、これは由々しき事態といわなくてはなるまい。


 
 
 
 
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