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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/02/05 産経新聞朝刊
【教科書が教えない歴史】(219)日本国憲法(3)
 
 みなさんは、明治憲法の改正を最初に言い出したのが連合国軍のマッカーサー最高司令官だったということを知っていましたか。しかも、マッカーサーは、二人の人物にほぼ同時に憲法改正の指示を出したのです。一人は近衛文麿(このえふみまろ)=写真=で、もう一人は幣原(しではら)喜重郎です。
 まず、一九四五年(昭和二十年)十月四日、戦前の首相で当時東久迩宮(ひがしくにのみや)内閣の副総理的な地位にあった近衛がマッカーサーと会見したときのことです。マッカーサーは話の途中でこう言います。「憲法改正はどうしても必要である。あなたは封建的勢力の出身だが、世界の事情に通じておられるし、まだお若い。指導の陣頭に立つべきだ。もしあなたが憲法改正に関する提案を世の中に公表するなら、議会もついてくると思う」
 この言葉から、近衛は当然、自分に憲法改正の仕事が任されたと理解しました。翌日東久迩宮内閣は総辞職しますが、近衛は京都帝大時代の恩師である佐々木惣一(そういち)博士を迎えて、熱心に憲法改正作業を始めました。
 ついで、十月十一日の夕方、新しく首相になった幣原があいさつのためマッカーサーを訪問したときのことです。マッカーサーは幣原の前で用意した声明書を読み上げました。そこには次のことが書かれていました。「日本の伝統的社会秩序は是正されるべきである。これには当然、憲法の自由主義化も含む」。
 もともと幣原の考えは、明治憲法は弾力性のある憲法だから、日本を民主主義化するための改正は必要ないというものでした。だが、近衛の憲法改正作業がスタートした以上、政府としてもこれを無視できないということから、国務大臣松本烝治を主任とする「憲法問題調査委員会」を設置して、近衛の作業とは別に審議を始めました。
 ところが、ここで近衛に悲劇が起こります。近衛は総司令部とよく連絡をとって、アメリカ政府の考え方を取り入れながら改正作業を進め、その素案は「議会の権限を強くして天皇の権能を制限すること」を骨子としていました。
 しかし、マッカーサーの態度が急変します。十一月一日、総司令部は声明を出して「近衛は憲法改正作業とは何の関係もない」と述べたのです。この声明には明らかなウソがありました。なぜなら、総司令部の政治顧問のアチソンやエマソンが近衛に対して憲法改正に関するアメリカ側の方針を細かく指示していたからです。
 この声明の本当の理由は、近衛が大東亜戦争(太平洋戦争)の責任者の一人として、戦争犯罪人の指名を受けて逮捕されることが決定的になっていたことにありました。事実、十二月六日、近衛に逮捕命令が出されましたが、近衛は十六日の早朝、青酸カリを飲んで自殺しました。このため、近衛・佐々木の憲法改正作業は実際の意味をもつことなく終わったのです。
 政府の調査委員会は、天皇の制度の基本原則は変更しないこと、政治の民主化を進めることなどの方針(松本四原則)に基づいて審議を重ね、翌二十一年一月末に草案を完成させました。
 また、この時期には多くの政党や団体が結成され、それぞれ憲法改正草案を発表しました。これらの草案には戦争放棄や戦力不保持を定めたものはまったく見られず、その多くは天皇の制度の下で議院内閣制を採用し、両院制をとりながら衆議院の優越をみとめるという穏健なものばかりでした。


 
 
 
 
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