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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/05/10 産経新聞朝刊
【主張】憲法改正は国会の責務 政治家は「隗より始めよ」
 
 大震災、急速な円高、異常な事件と不可解な宗教集団の存在、それらの事態に右往左往を繰り返す政府。日本という国が液状化していく様を見るような昨今である。病根は深く、確実にこの国をむしばんでいる。
 先の統一地方選挙の結果にも液状化の症状をみてとることができる。それどころか極めて危険な兆候だといわざるをえない。低投票率に加え、無党派層とよばれる人たちが急増し、民主主義は危殆にひんしている。選挙は民主主義の根幹をなすものである。無党派層の拡大はとりもなおさず政党政治がその力量と存在理由を失っていることの証明にほかならない。
 
1侃々諤々の論議を期待
 液状化の代表例として国会を挙げたい。「言論の府」といわれる国会にはいま、「言論」が決定的に欠けている。テレビ中継を見れば一目瞭然だが、委員会質疑でも質問者と答弁側にまるで建設的な意見交流がみられない。壁にボールをぶつけて遊んでいるようなものである。これではとうてい、国民の関心が政治に向くはずがない。政治家同士の侃々諤々(かんかんがくがく)の論議を国民は求めているのではないか。
 いうまでもなく国会は国権の最高機関であり国の唯一の立法機関だが、その国会は衆議院と参議院で構成される。産経新聞が行った憲法問題に関する世論調査ではこの二院制に鋭い疑問が投げかけられた。
 「衆議院と参議院の二院制は見直すべきで、これを明記すべきである」との質問に「そう思う」が四六・三%と、「そうは思わない」の三七・九%を上回った。
 この回答に参議院が本来、求められている「良識の府」としての役割を果たしておらず、衆議院のカーボンコピーと化していることへの国民のいらだちと失望が読みとれのである。
 参議院が独自の役割を果たそうというのであれば、その役割を果たすにふさわしい選挙制度を導入しなければならない。現状のままでは参議院も衆議院と相似形にならざるをえない。参議院が「良識の府」としての新しい道を見つけられないとすれば、参議院の廃止問題は政治改革の極めて大きなテーマの一つになるだろう。
 わたしたちは憲法改正が必要であることを今回、世論調査の結果を踏まえながら多方面から主張してきた。しかし翻って考えると、最近でこそ読売新聞にみられる如く、憲法改正を論じることは特別のことでなくなってきたが、かつては口にすることさえタブーだった時期がある。護憲を唱えることが正義であるかのような風潮があり、一世を風びした。誠に不幸な事態だったといわざるをえない。
 憲法はもとより“不磨の大典”ではない。現行憲法でも改正条項(九六条)を置いているのである。神ならぬ人はなにごとであれ完璧なものなどつくれはしない。憲法だとて例外でなく、いずれ時代とのズレが生じることを予定して改正条項を設けたのである。護憲を金科玉条とすることのこっけいさが九六条からも逆に読みとれるのである。
 国の基本的な枠組みを決定している憲法を常に怠りなく見直す。実はそのことこそが国権の最高機関である国会の最大の仕事なのではないか。それでこそ政治は活性化する。
 しかし残念ながら国会は不真面目だったというほかない。現行憲法が改正を予定していながら、改正に際してどのような方法で国民投票を行うのかさえ真剣に議論した形跡はみられない。党利党略に走り、自主憲法制定を党是としてきた自民党も最近は連立政権の維持を優先して後退姿勢である。
 戦後五十年、日本はとまれ現行憲法を拠り所にして歩んできた。評価すべき面もある。しかし破綻し、立ち行かなくなっている面があることもまた疑いえないのである。それはこれまで五回にわたって論じてきた通りである。
 
1子々孫々が誇れる国に
 わたしたちが憲法改正を提唱してやまないのは、自国の歴史や伝統を否定してかかるいわゆる戦後民主主義者はともかく、子々孫々国民が冷笑ではなく誇りをもって語れる国にならなければならないと考えるからだ。そうでなければ国際社会から信頼も期待も尊敬も受けられるはずはない。
 端的にいって、現行憲法はわたしたちが自らつくりあげたものではない。与えられたものである。問題の核心はここにある。核心にまでさかのぼり、なによりも政治が真摯(しんし)で自由な憲法論議を戦わすべきだと考える。そのことが政治の液状化、空洞化に歯止めをかけ、日本の未来を拓く礎になることを信じて疑わない。


 
 
 
 
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