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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1997/02/26 読売新聞朝刊
[論考97]“世界最古の憲法”抱え 政治部長・三山秀昭
 
 世界に「国」はいくつあるのだろう。国連加盟国は今年元日時点で百八十五。他にスイス、バチカン、トンガ、キリバス、ナウル、ツバルの非(未)加盟国があるので、地球上には今、百九十一の国が存在するといえる。
 これらのうち、成文憲法がない国は、イギリス、ニュージーランド、イスラエル、サウジアラビア、リビア、オマーン、バチカン、ブータン、サンマリノの九か国。残り百八十二か国について、駒沢大の西修教授(比較憲法)は、現行憲法の制定年を調べた。
 最も古いのは、一七八七年のアメリカ合衆国憲法。ノルウェー、ベルギー、ルクセンブルク、スイスと続く。日本国憲法(一九四七年五月三日施行)は、十五番目に古いことがわかった。
 
◆不便なアンティーク
 西教授は各国の憲法が、いつ、どう改正されたか、も調べた。すると、日本より先に制定した十四か国は、いずれも改正などの手を加えている。西教授は「一言一句改正されていない日本国憲法は、世界最古の憲法だ」という。
 アンティーク家具のように「古いから、よい」ものもあろう。ただ、アンティークは飾りにはなっても、日常生活では使いづらい。
 内外の情勢変化で“使いづらく”なったのか、アメリカは憲法を十八回、ノルウェーは実に百三十九回、スイスは百十九回も改正している。日本同様、敗戦国のドイツは四十三回、イタリアも六回改正している。時代に応じて、憲法を機敏に改正するのは世界の常識なのである。「護憲」と唱え、憲法を「不磨の大典」視することの方が、世界の非常識なのだ。
 「日本国憲法は世界で唯一の平和憲法で、改正は不要」と護憲論者は言う。しかし、平和主義を憲法でうたっている国は八十か国以上にのぼる。日本国憲法の第九条は一九二八年の不戦条約に源を発し、世界の多くの国はこれを批准している。日本と同じ規定を持つ国もイタリア、ハンガリー、エクアドルがあり、スペイン、フィリピン憲法にも同趣旨の規定がある。「世界で唯一」は、世界の憲法を冒涜(ぼうとく)する“独りよがり”だ。
 近年に制定、改正された憲法の多くは環境保護、情報公開、プライバシー保護などの規定を盛り込んでいる。時代の要請なのだ。もちろん、日本国憲法にそんな規定はない。古いものは、その限りでは機能しても、新しいものに対応することまではできない。
 憲法第八九条は、「公の支配に属しない教育」への公金支出を禁じている。しかし、一九七〇年以降、「公の支配に属さない」私立大学の経常費への国庫補助が続いている。アンティーク憲法では時代の要求に対応できず、強引に解釈改憲せざるをえない好例だ。
 従来、改憲論者には、「保守・反動」のレッテルが張られた。かつての改憲論が、天皇の元首化や自主防衛を求めた名残だろう。
 しかし、時代は着実に変わっている。日本の国力増大とともに、国際社会の日本への要求も高まっている。「庇護(ひご)を受ける日本」から「国際責務を果たす日本」が求められている。
 湾岸戦争で、日本は百三十億ドルもの資金協力を行った。赤ん坊まで含め、国民一人当たり一万円という世界最高の負担をした。
 しかし、湾岸戦争終了後、クウェートがアメリカの有力紙に載せた感謝広告には、協力国として三十か国の国名を列記しながら、「JAPAN」はなかった。「カネしか出さない日本」は感謝の対象にはならないらしい。
 
◆論議の場もない国会
 「湾岸」を境に、憲法に関する日本国民の世論も変わった。読売新聞の世論調査によると、一九九一年調査までは、「改正しない方がよい」が「改正する方がよい」を常に上回り、時に五〇%も超していた。しかし、湾岸戦争の反省から九二年にPKO協力法が成立、自衛隊をカンボジアに派遣しても、一部勢力が盛んに強調した「危険な道に通じる」ことなど、何も起きなかった。このため、九三年調査からは「改正した方がよい」が「しない方がよい」を逆転、昨年調査では約一〇ポイント引き離している。国民は改憲をタブー視しなくなっている。
 ところが、自民党の今年の運動方針原案では、「時代の変遷に即して憲法の改正につき検討を進める」だったが、一月の党大会で決定された運動方針は「憲法のあり方について国民とともに論議を進めていく」と、トーンダウン。「連立与党の社民、さきがけに配慮した」(党執行部)という。
 湾岸戦争後、自民党の三塚博政調会長(現蔵相)は、代表質問で国会に憲法問題協議会を設置するよう求めた。しかし、その後、ナシのつぶてだ。かつては内閣に憲法調査会が設置されていた。現在は内閣にも、国会にも憲法を正規に論議する調査会もない。
 五月三日で、憲法施行五十年。なのに、政治が目先の問題にのみ目を奪われ、ミニサイズ化している。国民の方が時代の感性に敏感になっているのに、政治の方が、憶病になっていないか……。


 
 
 
 
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