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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/10/16 読売新聞朝刊
[社説]憲法公布50年 分権論議の枠を広げよう
 
◆変化した「道州制」論の背景
 「無税国家構想」といわれる日本改造論がある。「経営の神様」といわれた故松下幸之助氏が一九七九年十一月の読売国際経済懇話会などで展開した構想だ。
 簡単にいえば、国の財政改革によって予算に余剰を生み出して積み立て、やがてはその金利だけで国家運営をしよう、というものである。
 夢物語みたいだが、この構想はまだ生きている。松下構想を継承し、具体化への手順作りを続けている学者グループが今年六月、「日本再編計画――無税国家への道」と題する提言を発表した。
 多様な分野にわたる膨大な作業の集積だが、この中では、現在の都道府県・市町村という地方自治の仕組みを、十二州・二百五十七府に再編するとされている。
 この場合の「州」は、今回の総選挙で初めて実施される小選挙区比例代表並立制の「比例ブロック」を基本的な区分単位としている。「府」は、市町村の広域合併による“統合自治体”の呼称である。
 都道府県を再編統合して「州」にするという考え方自体は、とりたてて新しいものではない。古くは一九五七年の第四次地方制度調査会の答申が、全国の地方行政単位を、いわゆる「道州制」にするよう提言している。
 とはいえ、当時の「道州制」提言は、広域的な地域開発による経済成長を主要課題としたもので、「分権」的発想からはほど遠かった。道州(答申の名称は「地方」)の長も首相の任命とされていた。
 これに対し、「州府制」提言のキーワードは、「地域主権」である。「州」は、税の種類や税率も自主的に決定するとされている。同じ都道府県再編でも、再編の視座は全く異なる。この四十年の間に、日本の当面している課題が、内外とも、すっかり変わってしまったからだ。
 いま、地方分権論議が、新たなうねりを迎えている。いろいろな理由があるにしても、根本は、冷戦構造崩壊後の世界の大きな変動の中で、日本が政治・経済・社会の全体にわたって転換を迫られている、というところにある。
 今回の総選挙で、各政党がこぞって、行政改革と地方分権を公約に掲げているのも、こうした時代状況を踏まえてのものだろう。地方分権・地方制度改革は、その行革の重要なポイントの一つだ。
 地方分権推進委員会が三月に出した中間報告によると、新たな分権型行政システムの構築は「明治維新、戦後改革に次ぐ『第三の改革』というべきものの一環」ということになる。
 だが、政党の公約も地方分権推進委の議論も、もっぱら中央官庁の権限を現行の都道府県に移譲するという程度のものに限られている。わずかに新進党が、現在三千二百余の市町村を三百ほどに再編統合するという構想を出しているだけである。
 第三次行革審が九三年秋に、改めて「現行の都道府県制に代わるべき新しい広域的自治体制度(いわゆる道州制)の意義等について国として幅広い観点から具体的な検討を行う必要がある」との答申を出している。が、政府、政党レベルでは、そうした議論は皆無に近い。
 時代状況に対応するためのシステム転換を図るためには、現行制度を超えた大きな枠組みの議論、さらには憲法次元にまでさかのぼって基本から見直す議論が必要なのではないか。
 「十二州」提言にしても、「地域主権」を掲げるなら、当然、「主権」という言葉の使い方を含め、現行憲法との整合性が議論されなくてはならないはずだ。だが、この提言には、憲法とのかかわりを検討した形跡はない。
 
◆「分権」も行きつく先は憲法
 地方分権を根本から考えるには憲法改正を含めて議論すべきだという意見は、以前からあった。岡山県の長野士郎知事や、大分県の平松守彦知事、島根県の恒松制治元知事らが問題提起したことがある。
 「日本連邦基本構想」なども、そうした流れに沿ったものだろう。学界、経済界、労働界や市民運動の有志らによる「行革国民会議」が三年ほど前から提唱している構想だが、「地方主権」の推進は、結局は憲法改正に行きつかざるを得ない、との認識をはっきりと示している。
 わかりやすい例としては、福岡県宗像市で、産業廃棄物処理業者の焼却場建設を市条例によって断念させようとしたところ、「条例は憲法違反」として訴訟になっているケースが挙げられている。憲法九四条で条例の制定は「法律の範囲内で」と規定されていることとの関係が争われているわけである。
 読売新聞が九四年十一月に発表した憲法改正試案では、現行九四条のこの部分を「法律の趣旨に反しない範囲内で」とした。これにより、地方自治体にある程度の幅のある先駆的な政策立案権を保障したいとの趣旨だった。
 ただし、日本連邦構想では、条例制定権の拡大を「本来は憲法に明記すべきこと」としながらも、当面は、「地方主権基本法」の制定による解釈運用を目指す、とされている。
 「地方主権」という用語の適否、あるいは連邦制の是非は別として、手順としては理解できる。なによりも、憲法改正論議をタブー視しない姿勢を評価したい。
 憲法公布以来五十年。内外の大きな変動に対応して、変革しなければならない課題は多い。その大部分は、憲法の見直しを伴わなくては根本的解決は難しい課題だ。地方自治の再構築もその一つである。
 いま、憲法を論議することは、そのまま、二十一世紀を展望したよりよい地方・地域づくりにもつながるはずである。


 
 
 
 
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