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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/09/29 読売新聞朝刊
[社説]憲法公布50年 国際平和への責任を果たせ
 
 国連平和維持活動(PKO)協力法が国会で成立したのは九二年六月。野党・社会党は牛歩戦術まで行って抵抗した。一部マスコミも、「戦争への道を許さない」式の報道・論調で反対の世論をあおった。
 昨年十月に総理府が実施した「外交に関する世論調査」は、日本のPKO参加についての考え方を聞いた。「これまで程度の参加を続けるべき」とした回答者が四六・四%で最も多い。「これまで以上に積極的に参加すべき」が二三・五%。合わせて六九・九%の回答者が、現状ないしそれ以上のPKO協力に支持を表明した。
 「参加すべきだが、できるだけ少なく」が一八・三%、「参加すべきでない」とする反対者は五・七%にとどまった。
 国連の代表的な平和活動であるPKOに日本が自衛隊派遣を含めて協力していくことに、今では多くの国民が支持を与えている。
 カンボジア、モザンビーク、ザイールに派遣された自衛隊の現地での活動ぶりを見て、PKO参加の意義についての国民理解が進んだ結果とも言える。
 平和増進のための国際的共同作業に参画する。こうした努力は、世界のシステムから大きな恩恵を受ける日本が自覚し、遂行すべき当然の責務にほかならない。
 世論の推移は、国際貢献に積極的でありたいとする好ましい国民意思が形成されつつあることを示すものだ。
 自衛隊のPKO参加に当たって問題となったのは、憲法九条とのからみである。九条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定している。
 しかしPKOへの要員提供は原理的に、一国の利益を直接追求するものでない。
 国連は、国際の平和と安全の確保の任において最も正統的な権威を持つ世界システムである。PKOは、地域紛争の解決や鎮静化に最大限の努力を求められた国連が編み出した平和増進の手法である。
 中核は、紛争地の停戦監視や兵力引き離しなどのために各国が提供する軍事要員である。彼らは護身の武器は携行するが、国連の権威が最大の武器であって、「戦わぬ軍隊」を本分とする。
 PKO参加は、国際平和への協力および国際協調の実践という面からも、九条が禁じる行為のむしろ対極にある。しかし、国内には固陋(ころう)な考えが残っており、円滑なPKO参加の支障となっている。
 PKO協力法は、派遣自衛隊員の武器使用について「正当防衛の範囲で個々の判断にゆだねる」と決めている。国会審議で、指揮官命令による組織としての武器使用は九条が禁じる「武力行使」になる、との疑念が出されたためだ。
 PKOに派遣された隊員から「自衛隊は組織として訓練を受けている。この規定は実態を無視したもので、隊員の心理的負担が大きい」との切実な訴えが出ている。国連サイドや他国のPKO要員が見ても、理解しがたい規定だろう。
 日本は、いわゆる平和維持隊(PKF)本体業務を凍結している。武装解除や兵力引き離しの仕事が、九条の禁じる「武力行使」の可能性をもたらしかねないとの議論が出され、それを政治が見識を持って乗り越えられないでいるためだ。
 PKO協力法が成立した後、日本の政治は次の段階へ前進する努力を事実上放棄した。目まぐるしく入れ代わった歴代政権はPKO協力では立場に差がある連立体制にひびを入れないため、PKF本体業務の解除問題に触れるのを避けてきた。
 二年前、有識者を集めた首相の私的諮問機関「防衛問題懇談会」が、新時代の安全保障努力についての提言を行った。
 提言は、日本が国際平和のための国連の機能強化に積極的に寄与することが大事であり、自衛隊が国際安全保障を目的として国連の枠組みのもとで行われる多角的協力に参加することは「平和のための国際公共財の提供」と書いた。
 PKO参加を「国際公共財の提供」とする考えは新しいものではない。国際社会では、はるか以前からの常識であり、この常識に照らすと、PKO参加が対外侵略の道に通じるとするいわゆる「アリの一穴」論は奇異な議論だった。
 
◆「能動的平和主義」の確立を
 提言は、PKF本体業務の早期凍結解除を促し、武器使用に関しては「国連で一般に認められている共通の理解について日本も検討すべき」とした。
 日本が、国際常識に沿ったPKO参加をめざすのなら、当然の指摘である。
 そもそもPKOは、五十年前の憲法制定時には存在していなかった国連平和活動の形である。九条解釈をめぐる紛糾で、日本の全面的なPKO協力が難しいのなら、疑義が生じないような条項を憲法に盛り込むのも一つの考え方となろう。
 読売憲法改正試案が現憲法にない国際協力の章を設けたのは、そうした試みだ。
 試案一三条の「日本国は、確立された国際的機構の活動に、積極的に協力する。必要な場合には、公務員を派遣し、平和の維持及び促進並びに人道的支援の活動に、自衛のための組織の一部を提供することができる」が、その内容である。
 憲法公布から半世紀の間に、日本は世界二位の経済大国へと成長した。国際平和の一方的受益者から脱して、自らも能動的に貢献していくべき立場になった。
 国際平和に具体的に貢献する姿勢を、憲法の枠組みを含めて国家理念として内外に明らかにする作業が必要である。
 この分野における議論は、ここ数年ほとんど深まっていない。その政治の怠慢を是正する意味でも、今回の総選挙では主要な論点にならなければならない。


 
 
 
 
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