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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/03/26 読売新聞朝刊
[明日への条件―日本総点検]第2部憲法再考(6)縛られた首相(連載)
 
◆対応遅らす「全会一致」
 ゴミ減量の対策一つでも役所の対立が絡む。昨年春、缶や瓶などの容器・包装廃棄物の再生利用を企業に義務づける「包装容器リサイクル法案」作りでは、厚生、通産両省の担当課長が農水省に乗り込み、担当課長に抗議する騒ぎがあった。
 「農水省にはゴミ減量化に絡む権限はないはずだ」
 「農水省が今ごろ独自の案を作るのは、法案提出を引き延ばすためとしか思えないじゃないですか」
 厚生、通産両省の原案では、「容器の中身のメーカーと販売事業者」に再生利用を義務づけていた。中身の食品・飲料業界は農水省の所管。反発した農水省が、通産省所管の「素材・容器メーカー」にもコストを負担させる法案大綱を独自にまとめたからだ。
 調整機能を果たせない首相官邸に、担当者は「機能不全だ」といら立ち、その後、官邸に調整が持ち込まれたものの、法案の国会提出までの一か月間、行きつ戻りつの迷走が続いた。
 憲法六六条には、「内閣は国会に対し連帯して責任を負う」とある。このため、閣議も、またこれに先立つ事務次官会議も、一省庁でも反対すれば政府の方針は決まらない「全会一致主義」になっている。政策決定が官僚主導に陥る一因はここにある。
 一九七三年の石油危機。折からのインフレ、物価高騰に拍車をかけ、トイレットペーパー買いだめ騒動が広がった。高度成長路線をひた走ってきた日本にとって予想もしない国家的危機だった。
 高まる「物価無策」の批判に、田中首相(当時)は生活必需物資の便乗値上げ、暴利取り締まりのための緊急立法を指示した。
 しかし、不当に利益をあげた業者に対する制裁をめぐって、「年末にかけて国税庁は多忙を極め、とても人手はさけない」(大蔵省)、「課徴金を課すには、膨大な作業がいる」(通産省)など、関係省庁の押し付け合いで、法案の国会提出まで三週間も費やし、この間も物価は暴騰を続けた。
 現行内閣制度は、首相が閣僚を指揮監督するには閣議決定を必要とするなど、首相の権限を制約している。これは戦前、軍人が首相となって独走した苦い教訓からだ。
 片岡寛光・早大教授(行政学)は、「戦後間もない時期の吉田首相には、カリスマ的リーダーシップと占領軍の支援という後ろ盾があり、首相の権限行使に関する法律上の制約は問題にならなかった」という。
 その後も国際的には東西冷戦構造、国内では高度経済成長が続く間は、歴代首相が大きな政治的決断を迫られる局面は少なかった。政治の側もそれを当たり前と思い込み、危機管理への取り組みを放置してきた。
 しかし、冷戦終結後の国際情勢の流動化、高度成長終えん後の経済の混迷の今、それでは済まない。その不安が一気に噴き出したのが阪神大震災だった。
 佐々淳行・初代内閣安全保障室長は「内閣法で首相の権限を限定しているため、大韓航空機撃墜事件などの緊急事態の際、政府は超法規的に対応してきた。これでは法治国家と言えない」と指摘する。
 細川元首相は八か月余の在任中、首相官邸執務室の机の引き出しに一枚のメモをしのばせていた。それには「総理を長とする臨時行政改革本部を設け一年間で次の改革案を立案決定」とし、「総理の権限強化」以下、六項目が並んでいた。
 「危機管理は国家存立にかかわる問題。首相のリーダーシップが最も厳しく問われる」と考えたからだ。が、その細川氏自身が皮肉にも、大蔵省主導の国民福祉税構想に振り回された。
 「緊急の場合、首相が閣議を開かなくても閣僚を指揮監督できるよう内閣法を改正できないのか」
 昨年六月、連立与党行政改革プロジェクトチームがただしたのに対し、内閣法制局の見解は、「憲法の趣旨に照らして問題がある」だった。憲法制定当時とすっかり状況が変わった今、内閣法制局の見解を問いただしているだけでは政治の役割は果たせない。(政治部 吉田和真)
 
〈首相の権限〉
 内閣法六条 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督する。
 読売憲法改正試案七四条 内閣総理大臣は、内閣を代表し、国務大臣を統率する。
 同八一条 内閣総理大臣は行政各部を統括する。


 
 
 
 
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