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1993/06/17 読売新聞朝刊
自民憲法調査会の中間報告の要旨
 
 自民党憲法調査会が十六日まとめた中間報告(要旨)は次の通り。
 本報告の骨子は、今こそ、憲法論議を喚起し、国民的論議に高めることが政治に強く求められるところである、との意見に集約された。
 憲法の見直しを行う上で、国民各界各層の参加を求めることが必須(ひっす)条件であり、そのためには、内閣に調査委員会等を設置するか、あるいは、国民の代表の場である国会に憲法調査会を設置しなければならないものと考える。なお、当然のことながら、わが党憲法調査会では、点検すべき事項について、さらに深く論議を行い、内閣あるいは国会の議論に資するようにしていく必要がある。
 【国民的な憲法論議は必要】▽憲法制定後、約半世紀を経過し、現状と憲法との間にギャップが生じている▽冷戦の終結によって、国際情勢は激変し、国連における日本の国際的役割の増大▽国民の間でも、憲法問題に関する意識が高まっている▽憲法論議は今や政治の緊急課題で政治家が率先して行うべきだ▽国民の間に現憲法が定着している点を評価すべきだ▽自主憲法制定が党是であり、改憲論議をおこすべきだ▽占領下という異常事態下で制定された現憲法だから▽解釈改憲は、さらに拡大の危険性があり、すでに限界にきている▽憲法論議は改憲を前提とすべきでない。改憲論議は時期尚早▽改憲というよりも、新しい憲法制定という気持ちで取り組むべきだ。
【国民的な憲法論議のためには、以下の場で議論を深める】
 (1)国会に調査委員会等を設置
 (2)内閣に憲法調査会を設置
 (3)党憲法調査会
 (4)各政党レベル
 (5)民間憲法臨調を設置
 
【点検すべき事項】
1、憲法との関連事項
 (1)憲法の制定過程
 (2)歴史の再点検=憲法論議と並行して、太平洋戦争の歴史的総括を行うべきだ▽戦後体制の見直しを行うべきだ▽歴史に学ぶべきである
 (3)将来の国家像について=国際社会における日本の国家像▽二十一世紀の理想とすべき国家目標、座標軸
 (4)国際法(条約)と憲法の優位性について=国連憲章と憲法の関係
 
2、憲法について
 (1)憲法全体
 〈1〉緊急を要する問題と、ゆっくり時間をかける問題を区分すべきだ
 〈2〉憲法の翻訳調の文章を日本語として平易な現代用語とすべきだ=解釈上、疑義の生じない表現とする
 〈3〉全体の問題について点検すべきだ
 〈4〉国民主権主義、人権尊重主義、平和主義の基本原理は堅持すべきだ
 (2)個別問題
 
 特に多くの委員から指摘のあったもの
 〈1〉前文=憲法の理念など
 〈2〉第九条問題=自衛隊の明確化、集団的自衛権、集団安全保障など
 〈3〉国際貢献=国連との関係、わが国の国際的役割
 〈4〉国民の権利・義務=公共の福祉と財産権、私権の制限(土地の所有権)など
 〈5〉地球環境、環境保全、環境権
 〈6〉二院制
 〈7〉公の財産の支出と利用の制限=私学助成など
 〈8〉地方自治、地方分権=道州制、連邦制など
 
 その他の意見としては、
 〈1〉天皇(元首とする)〈2〉国歌、国旗〈3〉非核三原則、核廃絶、軍縮など〈4〉国家緊急非常事態への対応〈5〉プライバシーの保護〈6〉情報公開〈7〉家族制度(土地の相続等)〈8〉靖国神社問題〈9〉社会奉仕、ボランティア〈10〉国会と議院内閣制〈11〉政党〈12〉政治改革〈13〉公務員制度〈14〉首相公選制〈15〉国民投票制度の新設〈16〉憲法改正の手続きの簡素化――など。


 
 
 
 
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