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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/07/09 読売新聞朝刊
読売憲法問題調査会第10回会合 「集団自衛」理解へ努力を
 
 八日行われた読売新聞社憲法問題調査会の第十回会合での自由討議の主なやりとりは次の通り。
 
 北岡 伸一氏、三浦 朱門氏、斎藤 鎮男氏、諸井 虔氏、西 修氏、宮田 義二氏、西広 整輝氏、佐藤 欣子氏、猪木 正道氏
 
◆世界平和へ積極貢献/北岡氏
 北岡伸一氏(立教大教授):国連事務総長が、国連の平和維持機能の拡大強化を訴える報告書を最近出しましたが、ミュンヘン・サミットの政治宣言の中にこれを評価することが盛り込まれました。世界において、国連の平和維持機能を高めていかなくてはならないというのは、普遍的な要請です。憲法の中には平和主義と非軍事主義がありますが、非軍事主義をあまり厳格に貫くと、むしろ平和主義の障害になります。より大事なのは、日本が世界の平和維持強化に積極的に協力していく、大きな役割を果たすということです。
 三浦朱門氏(作家):西先生の憲法九条の解釈をうかがいたいのですが。
 西修氏(駒沢大教授):九条一項で放棄している国際紛争を解決するための手段としての戦争、武力の行使は、あくまで侵略を目的とする戦争であって、他国から侵略された際に自国を守る、やむを得ざる行為としての自衛戦争は禁じられてはいません。同二項の「前項の目的」というのは、侵略戦争しないということですから、逆に言えば、自衛のためであれば戦力の保持を禁じられていないということです。
 北岡氏:学説だけでなく、裁判所の判断も紹介していただきたい。
 西氏:長沼事件(ナイキ訴訟)の一審札幌地裁判決(昭和四十八年九月)と砂川事件の一審東京地裁判決(同三十四年三月)は、自衛隊ないし日米安保条約は違憲との判断を示しています。このほかは、こうした高度に政治的な問題は最終的には国民が判断すべきだという統治行為論を採っています。
 宮田義二氏(松下政経塾長):現在の国連の機能や機構について、どうあるべきかを考えてみるのもいいのではないでしょうか。
 
◆国連強化で統治力を/斎藤氏
 斎藤鎮男氏(元国連大使):この問題を考えるにあたっては三つの要素があります。第一は国連自体の性格。第二は将来の国連との関係。第三は日本と国連との関係です。第一に関する限りは、国連は主権国家の合議体であって、主権国家がイエスと言わない限り、勝手な行動ができません。ガバナビリティー(統治能力)がないんです。だから、国連に重点を置いていくのなら、第二の要素の国連強化という行動が必要です。国家だけの国際機関ではなくて、個人の意見がもっと入った、そういうことを中心とした国連の改造が前提にならないといけません。第三は、日本は自分の運命を国連に託すのならば、もっと国連の中で自己の発言力を認めてもらわないといけません。常任理事国入りは、ただ日本の希望というだけではなくて、今の国連改造の大前提となっています。(常任理事国の)五大国を中心とした合議体ではなく、国際関係の現状に見合った安保理事国の構成にするよう考え直さないといけません。
 猪木正道氏(平和・安全保障研究所会長):宮沢首相は、「(日本を)国連の常任理事国にしてくれ」と言うが、それを新聞で見るたびに恥ずかしくなる。PKF(平和維持隊)参加を凍結しなきゃならない状態で、どうしてそんなことが言えるのか。その辺の所が、国民の間に十分、理解されていません。
 (カンボジア四派の中で)最も強力でしつこいポル・ポト派が依然として武装解除を拒否している中で、カンボジアのPKO活動が果たして可能なんだろうか、私はますます疑問を深めています。
 西広整輝氏(防衛庁顧問):カンボジアのPKO活動は、国連がはしゃぎすぎじゃないかと思います。外交折衝で条件が整い、できる範囲のものをそのつど出していくという堅実さがない。ポル・ポト派も一筋縄ではいかない。泥沼になりそうな所に出かけていくのは、あえて“火中の栗(くり)”を拾うことになりますが・・・。
 私は九条一項の意味を多くの人がまだ理解していないんじゃないかという気持ちを強く持っています。最近、自民党と民社党が国連平和維持活動(PKO)協力法に関するパンフレットを出しました。自民党のをみると、「PKO法は憲法九条に違反するのではないか」との質問に対し、「当事国の同意の中で行き、問題が起きれば帰ってくるのだから、九条には違反しない」などとしています。要するに、九条一項で言っている「武力行使」が戦闘そのもの、武器使用そのものを禁止しているという前提に立った答えになっているんです。民社党の方は、「憲法前文で積極的に国際平和に貢献すべきと言っている」などと指摘して九条の問題は逃げてしまっています。私はやはり、九条の一項、二項に分けてきちっと説明しなくてはいけないんじゃないかと思います。政府は、自衛権について、個人が生命や生存権を勝手に放棄できないのと同じように、国家もこれを放棄できないんだということで説明してきたわけです。そして、この点については、どうも国民の間にそう異論がなくなってきているんじゃないかと思います。
 そういう意味で、過去数十年間に、自衛隊に対する(国民の)是認も七〇%近くに上がってきているわけです。それに対し、社会党などは危機感を持っておりまして、今回、たまたまPKOが出てきたため、これを一項に結びつけて、「憲法で禁止している行動をとる。武力行使である」という言い方をする。ここの所をやはり、憲法で禁止しているのは、あくまで(一九二八年のパリ)不戦条約にあるような「侵略戦争」の手段としての武力行使であって、平和を創設するとか、自らの侵略と直接利害関係のないものを一項は禁止しているわけではないんだ、ということを知らせることが必要ではないかと私は思っております。
 斎藤氏:カンボジアにおけるPKOは、ある意味では、PKOというものの限界スレスレのところにきています。(停戦監視だけでなく)選挙、行政までやるように、PKOの名前の下で活動内容がどんどんふくれ上がっています。
 三浦氏:私はPKOというのは新しいもので、憲法九条とは関係ないと思います。憲法前文にある国際貢献のための人材や資金を提供するものだから、PKOの問題を九条にからめるのはおかしいんじゃないかと思っています。
 
◆PKOは憲法も容認/諸井氏
 諸井虔氏(秩父セメント会長):自衛隊やPKO活動は、九条が禁止している対象ではないということで、そろそろ結論づけていいのではないでしょうか。
 猪木氏:憲法改正に関して言えば、憲法改正論の意味が変わってきたと思います。鳩山(一郎)さんとか岸(信介)さんとかが(憲法改正を)言っていた時代とは違うんですね。しかし、(誤解を防ぎ解釈をはっきりさせる意味で)将来的に憲法改正をしなければいかんという展望だけは、持たなきゃいかんと思います。
 諸井氏:前回、宮田さんが提案された(安保・防衛に関する)基本法はいい考えだと思いますが、実際に法律作成段階に入ると、PKO(協力法)の時のように(野党との修正協議などの結果)何もできない基本法を作ってしまう可能性がありますね。
 三浦氏:アメリカの憲法のように、アメンドメント(修正条項)の形で、必要に応じて多くの国民が納得できる解釈をつけ加えていけば、何も憲法改正といわなくていいんじゃないでしょうか。
 西氏:アメリカのアメンドメントも憲法改正条項にのっとってやっている。アメリカのようにやろうとしても、憲法九六条の(改正)手続きは踏まなければなりません。もう一つは、我々の(九条)解釈だと、禁じられているのは侵略戦争なんだ、逆に言えば侵略戦争以外なら何でも出来るのかということに対し、「法的歯止め論」を整理する必要がありますね。憲法の条文そのものに歯止めがあるというのが私の考え方です。九条を見ますと「日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を希求し」とある。これが十分歯止めになると思います。
 北岡氏:私は最小限の軍事力は無論合憲と思っています。ただ、個別的自衛権は解釈の仕方で大きく伸びうるものです。ですから、歯止めという時、軍事力に関与するに際して日本が他の国々より、もう少しだけ非軍事的な姿勢をとることを明らかにすることは、悪いことでなく、かつ可能ではないか、と思っています。
 宮田氏:日米安保条約は国連との関係で、どう位置づけるといいんでしょうか。
 斎藤氏:今までの政府の考え方は、国連の補完的なものと考えているようにみえますが、国連は安全保障の点からいうと、現実的な効果はないんです。
 宮田氏:日米安保条約に基づく何らかの行動という問題が起こったら、どうでしょう。
 斎藤氏:安保条約があれば国連は安保条約を優先させるわけです。要するに国連は、地域と各主権国家独自の努力の二つを優先させ、それでも解決しないものを取り上げるわけです。
 西氏:最高裁は、日米安保条約は、統治行為であるという意見で、そこで絡むのは集団的自衛権の問題です。私は集団的自衛権は今の憲法で禁じられていないと思います
 北岡氏:仮に個別的自衛権のみがあって集団的自衛権がないとすると、各国はすべて自分の力で自分を守ることになります。これは現代の科学技術の水準を無視した危険な議論です。日本のようなぜい弱な国を一国で守ろうとしたら、恐るべきハイテクの軍事大国になってしまう。ですから、集団的自衛権を認めないというのは、世界平和にとって、きわめて有害な議論だと思います。
 
◆日米安保の役割拡大/西広氏
 西広氏:集団的自衛権はあるという意見には賛成ですが、米国が求めていないのに、日米安保条約を双務的なものに変えるように言い出すのが適切かな、という気がします。それ以上に、重要な点は、在日駐留米軍の役割がアジア地域で縮小するのに反比例して、安保条約の持つ重要性、機能が広がっていくのではないかということです。従来、(安保条約の範囲が)極東地域とその周辺だったものが、東南アジア、南西アジア、インド洋まで広がると、違った意味の問題が起きます。それ(こうした地域での米軍の活動)をも支援することになる可能性が高いと思います。
 諸井氏:本当に日本に何かあって、米国が兵隊を出そうとしても、おそらく米国世論は反対するでしょう。やはり米国の重大事の時は、日本も助けに行くという「双務性」がないと、米国世論が納得しないのではありませんか。
 佐藤欣子氏(弁護士):日本に自衛権があることは、国家として否定できません。個別的、及び集団的自衛権がなければ、どこの国も自国を守れないのが現実です。確かに米国がいつまで安保条約の片務性を許容するかどうかは問題ですが、日米間の問題として扱うよりも、太平洋地域の安全と平和をどう守るかという大きな構想を練り上げ、それに従って安保条約を変えていくということになると思います。
 西氏:国連憲章では、個別的自衛権と集団的自衛権を並べ、国家に固有の権利だと書かれています。固有の権利というのは「自然権」ですね。ところが政府は、集団的自衛権はあるとしながら、解釈上、憲法に違反するので行使できないと言っていますが、これは矛盾しています。
 集団的自衛権は国家固有の権利として存在し、行使もできるとの憲法上の解釈を示し、そのうえで、日米関係や国内世論など政策上の問題から行使できないのだと言うなら、十分理解できるのですが・・・。憲法解釈上、集団的自衛権は行使できないとするのは疑問です。
 猪木氏:集団的自衛権はあるし、行使できるという憲法解釈を統一的に打ち出していいのではないかと思います。
 西広氏:現実論としても、自衛隊程度のものが米国(の軍事行動)に役立つとは思わないし、そうはならないでしょう。それよりは、広範囲に拡大する在日駐留米軍の活動を、日本が支援するという形で安保条約を考えたほうが現実的です。
 斎藤氏:同盟上の義務に基づいて海外派兵するのは、憲法で禁じられていますか。たとえば、米国を同盟国とみて、日米安保条約に基づき、日本は米国を助けに行けますか。
 西氏:かまわないと思います。それがまさに集団的自衛権です。
 北岡氏:在日駐留米軍がアジア・太平洋地域の広い範囲で大きな役割を果たすため、日本は積極的に協力すべきです。そのことで、憲法解釈上の集団的自衛権の問題と抵触するところが出てきた場合、日米安保条約のアジア・太平洋における平和維持機能を強化する方向で考えるべきだと思います。
 
[憲法第九条]
 〈1〉日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 〈2〉前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
 先月二十五日付朝刊七面の拳法問題調査会の記事中、北岡委員の発言が「憲法学者の中には、日本と直接利害のない地域でのPKO活動なのに、日本が侵略に行くにではないか、と誤解している人もいるようです」とあるのは、「憲法九条一項の国際紛争とは、日本の利害に関する紛争のことであって、カンボジアやユーゴのような紛争のことではない、それは憲法学者も分かっている」という趣旨でした。


 
 
 
 
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