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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/05/04 毎日新聞朝刊
[社説]いま、憲法は 様変わりした改憲論議 護憲派は今こそ声を大に
 
<戦後50年>
 宮沢喜一元首相は「タイトルは自分で付けたんじゃないんだが」と照れながら近著「新・護憲宣言」に話が及ぶと、つい熱がこもるようだ。
 同氏は憲法制定前後から今日にいたるまで、その経緯を直近で眺めてきた数少ない現役政治家。「そのことを今のうちに記しておかないと」と言い、「占領後の日本が新しい日本になったと考えるか早く昔の栄光を取り戻さなければならないと考えるかの争いはかなり深刻だった」「それをあいまいにしたままの保守合同は一種の妥協の産物で、妥協の尾てい骨として残ったのが自民党の『自主憲法』だった」と書き記す。
 寄せては返す波のように繰り返された改憲論議。しかし八九年から九一年にかけて相次いで起きた東西冷戦の終結と湾岸戦争がすっかりその位相を変えてしまった。
 とくに湾岸戦争で日本は総額百三十億ドルも拠出したのに国際的には全く評価されなかった苦い経験は護憲派と改憲派が攻守所を変える契機になった。「血の一滴も流さずにカネを支払うだけで済ませて良いのか」という声は結果的に護憲論=守旧派、改憲論=改革派の色分けを迫るものとなり、ついには積極的な国際貢献には改憲が前提であるかのような議論が大手を振り出した。
 こうした事態にどうしたわけか社会党を中心にした護憲派は口を閉ざし、かつてのニューライトの旗手・宮沢氏に論戦を肩代わりさせているように映るのは異様なことである。
 
◇宮沢氏が論戦の正面に
 実は改憲論議が様変わりする過程で宮沢氏が「尾てい骨」と表現した自民党の自主憲法制定の「党是」は今年三月の党大会で消えた。しかしこれは過去の改憲論議を色濃く反映した「尾てい骨」だったがゆえの措置にすぎないとも言えるのである。 こんな古証文を持ち出せば中曽根康弘元首相は苦笑するのか、それともわが意を得たりだろうか。
 それは中曽根氏が五六年に作詞した「憲法改正の歌」である。五番まであり「この憲法ある限り 無条件降伏続くなり マック(マッカーサー)憲法守れとは マ元帥の下僕なり 祖国の運命拓く者
 興国の意気に挙らばや」がその五番である。
 東京宝塚劇場で発表会まで開いたこの歌は押し付け憲法説を真っ向から掲げ、自衛隊違憲論に対する反論としての改憲論そのものである。
 肩ひじ張った生硬さが身上でもあり、だれが聞いても分かる通り今の改憲論議とは一線を画すものだ。
 ところが護憲派はこんな過去を象徴するような歌を持たないがゆえにむしろ過去の憲法論議の呪縛(じゅばく)から逃れられないというアキレスけんを抱え込んでしまっているようだ。
 昨年六月二十九日、自民、社会、さきがけ三党は村山政権誕生に向けて「政権合意」を交わした。その中に「戦後五十年を契機に過去の戦争を反省し、未来の平和への決意を表明する国会決議の採択などに積極的に取り組む」との一項がある。
 終盤国会の焦点である「戦後五十年決議」のルーツだが、現実の三党間の折衝は決議の名称や言葉遣いのやり取りに堕してしまっている。
 しかし実はこの決議問題こそ現行憲法の評価に直結する問題である。
 それにそもそも日本国内で改憲論議がここまで高まっていることを考慮するなら、アジア外交に責任を持つ政権与党としては近隣諸国の警戒感を解く配慮を決議問題に込めなければならないのではなかろうか。
 
◇新たな再編の対立軸にも
 ことに「護憲の党」としてアジアの人々の心情に一番敏感だった社会党こそ、その先頭に立つべきだ。
 今から十三年前の鈴木内閣時代、憲法改正の是非を聞いた本社の世論調査で「改憲する方がよい」は三二%で、「しない方がよい」の二八%を上回った。それが湾岸戦争などを経験した後の一昨年四月には四四%と二五%と大きく差が開いた。改憲派はさぞ胸のすく思いだったろうがそのわずか二十カ月後の昨年十二月には再び改憲論と護憲論が接近し、「改憲しない方がよい」は二七%と横ばいだが、「改憲した方がよい」は十三年前よりむしろ下がって二八%にとどまってしまったのである。
 両調査の間に自民党政権の崩壊から細川、羽田、村山の三代の政権交代があった。村山政権下で社会党は自衛隊・安保問題の基本路線を転換した。このためもはや自衛隊が違憲か合憲かは争点でなくなったことが大いに影響しているのであろう。と同時に国民はあまりにも性急な改憲論議の盛り上がりにいささかためらっているのではないだろうか。
 それは政党の側が明確な態度を取っていない、つまりは改憲か護憲かという基本問題で与野党双方が大きなねじれを抱えたまま放置しているからでもある。
 憲法論議の「応用問題」でもある五十年決議では、例えば新進党内の旧新生党ですら決議に積極論と消極論が対立している。五十年決議の後には国連常任理事国入り問題が控えており、このねじれは新たな政界再編を促す対立軸にもなり得よう。
 その際、留意してほしいのは、護憲=民主的、改憲=反動的という過去の不毛な憲法論議の再現は論外だし、逆に護憲=守旧、改憲=改革という決めつけも願い下げ、ということだ。憲法を神棚から下ろすこと自体には大賛成だが、肩ひじ張らない議論が必要なのである。


 
 
 
 
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