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私はこう考える【憲法改正について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/07/28 毎日新聞朝刊
[観望風雲]自衛隊合憲と保守の翼=中村哲三=<編集委員>
 
 ジャーナリズムは、ドラマの筋を追うことには熱心だが、目前で起こっていることの本質を、きちんと評価するのが苦手だ――。
 よく指摘されることだが、村山富市首相の自衛隊や日米安保に関する国会答弁を聞きながら、この言葉が頭をよぎった。
 昨年の総選挙で自民党が過半数を割り込んだとき、多くの評論は、三十八年に及んだ自民党単独政権の終わりをもって「五五年体制」の終わりと位置づけた。もちろん「五五年体制」の、もう一方の主役だった社会党が議席を半減させたことを指摘する人も多かった。
 私もそのことには触れた。だが、どのような連立政権ができるかに興味が集中し、細川護煕内閣ができると、今度はうまく政権運営ができるかに関心が流れていってしまった。
 一年たって、社会党が議席を大きく後退させ、共産党を合わせた「革新」の議席が二割を割ったことを過小評価していたのかもしれないと思う。自民党は確かに過半数を割った。だが、選挙直前に自民党を離れた新生党、さきがけを加えると、二百九十一議席で、元に比べ二十三議席増やしている。
 両党が自民党を離党したのは、自民党が求心力を低下させた結果であり、「自民」が広い意味での「保守」のアイデンティティーにならなくなった点は軽視してはならない。むしろ、そこに時代の変化を見るべきだ。だが、古い保革二分類で考えれば、両党とも「保守」に属すことは間違いない。
 これに日本新党、理念・政策面で保守と本質的な違いがなくなった公明、民社党を加えた「非革新」が八割を占めた。
 この一年、共産党を除くすべての党が与党と同時に野党も経験した。共産党の言葉を借りれば「総与党化」が進んだということだろう。この間、社会党はいつも政権のキャスチングボートを握ってきた。それでいながら三代の連立政権は村山政権も含め「革新」連立政権でなかったことは考えておく必要がある。
 寺島実郎・米国三井物産ワシントン事務所長は『新経済主義宣言』(『中央公論』2月号)で、この過程を「保守の分裂太り」と呼び、「保守が鶴翼(かくよく)を広げる形で、革新を包み込むプロセスの最終局面が展開されている」と分析した。寺島氏は同じ論文で、保守も革新も心理的抵抗なく相乗りする「即時的同一化」は、一九七〇年代から醸成されてきたとみる。
 社会党は七〇年代から、「政権を担うには自衛隊も安保も現実に存在するというところから出発しなければならない」という議論が強まり、その度に党の綱領的文書を改定してきた。今度の村山首相の答弁も、こうした議論の帰結とみることができる。
 だが「保守の分裂太り」という大状況と、保守の「革新を包み込むプロセス」としても説明がつくことを忘れてはならないだろう。
 社会党は文字通り「らしさ」を打ち捨てた。さきがけのようにリベラルを理念とする「保守」が台頭するなかで、社会党はこれから何によって党の求心力を保って行こうとするのだろうか。
 特に気になるのは改憲論議への対応だ。
 社会党が自衛隊や日米安保を合憲と認め、自衛隊・安保合憲論が、国会勢力でも世論でも九割を超えたから憲法論争はなくなるという見方がある。確かに合憲・違憲論争は下火になるだろう。だが、国の基本組織である自衛隊を憲法上何の規定もない状態にしておいていいのか、という議論はますます勢いを増すだろう。
 少なくとも、小沢一郎・新生党代表幹事が憲法改正に替わる構想として打ち出している「平和安全保障基本法」を拒否する理由はなくなった。
 「日本が個別的自衛権を持ち、そのための最小限度の軍事力として自衛隊を持つこと、また、国連の一員として平和維持活動には積極的に協力し、そのために国連待機軍を持つことを明記する。さらに軍縮、核兵器の廃絶といった目標や軍事に対する政治の優位といった原則も盛り込んだらいい」
 これは『日本改造計画』の中の小沢私案だ。村山首相の答弁を聞く限り、国連待機軍以外拒否する理由は見当たらない。
 社会党が自ら変わったように見えて、革新を包み込む保守の大きな「翼」を感じざるを得ない。


 
 
 
 
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