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1993/01/15 毎日新聞朝刊
憲法改正論議・主な発言や提言
 
 ◇渡辺美智雄副総理・外相 自衛隊法の任務規程に国際貢献を明記すべきだ。憲法がどうしてもじゃまなら直したらいい。(1月2日の講演)
 ◇三塚博自民党政調会長 前文と全条文を検討するため与野党の協議機関を作る。PKO参加を第9条との関連で議論の余地をなくす。国民投票制度も設ける。(12月25日、記者団に表明など)
 ◇梶山静六自民党幹事長 50年に1回程度は見直さなければならない。私権も公共的な部門では制限されないと経済も維持できない。国連憲章と憲法のかかわり合いを中長期的に研究していかなければならない。(1月6日の講演)
 ◇中曽根康弘元首相 政界再編が言われているが、憲法と国連憲章の調整を基軸に置くべきだ。首相公選には憲法改正が必要だが、堂々とやったらいい。内閣、あるいは国会が臨時憲法問題調査会を作って議論する。(1月10日のフジテレビ)
 ◇羽田孜羽田派(小沢グループ)代表 憲法をタブー視してはいけない。第9条だけでなく、私学振興とか私権制限とか幅広く議論していかなければならない。(1月12日記者会見)
 ◇山花貞夫社会党次期委員長 創憲とは、憲法と民主主義、平和主義、人権擁護の基本理念に立って、市民の手でより豊かにしていくという考え方。非武装、中立、憲法9条は、断固かかげることを大前提としながらも、現実的対応として、タブーを持たないで考える。(1月6日付本紙インタビュー)
 ◇山岸章連合会長 国際平和主義、主権在民、基本的人権の保障とかを生かしつつ、今の憲法でいいのかということは、将来において議論する。不明確な点は安全保障、政治腐敗防止、環境、国民投票制実施などの各基本法でカバーする。自衛権は存在するという(認識の)上に立って自衛隊は容認する。(1月9日のNHK録画撮り)
 ◇市川雄一公明党書記長 主権在民、基本的人権の保障、恒久平和主義の3原則は堅持しつつ、時代状況にフィットしていない部分は検討に値する。その場合、9条はタブー視しない。(1月14日の記者会見)
 ◇大内啓伍民社党委員長 国際貢献を考えると、常に自衛隊をどうするかということで憲法の問題が起こってくる。混乱の原因に憲法があるとすれば、だれが読んでもこういう意味だということをはっきりさせることが政治の責任になってきた。(12月28日のNHK録画撮り)
 ◇民社党と語る会(関嘉彦会長) 国連軍、朝鮮戦争型の国連軍、湾岸戦争型の多国籍軍は憲法上許される。解釈上異論が出る余地のないように憲法9条を慎重な論議のうえ、大改正すべきだ。その場合、9条1項は残す。(12月17日の提言)
 ◇日本新党(細川護煕代表) 憲法改正が必要だと考えられる条項には、国連平和維持活動への積極的参加の明文化、立法府の主体性確立と内閣のリーダーシップ強化を目指した立法府と行政府との関係の明確化、国民投票拡大などが含まれる。(12月16日発表の政策大綱)
 ◇平成維新の会(大前研一代表) 自衛隊を軍隊と定義したうえで、シビリアン・コントロールの仕掛けを厳密に明文化する。(11月25日の記者会見資料)
 
◇改憲が「改革の旗」
 小林良彰・慶応大法学部教授(政治学)の話 憲法論議の背景は、PKOで憲法と自衛隊海外派遣のかかわりが問われた昨年の参院選挙で、自民党が負けなかったことだ。改憲の悪いイメージが変わり、各党は憲法論議がタブーではないことに気がついた。
 政治改革の大合唱の中で、みんな他党、他派閥とどう区別化するかを考える。小選挙区制はだれでも言うし、さらにそれが成立しないことはみんな気がついている。小選挙区制は手段であって目的ではなく、それに代わる改革の旗として憲法が出てきた。ただ、憲法改正ができる政治状況だとはだれも思わず、目立てばいいという空気もある。注目点は中曽根康弘元首相の首相公選論だ。同氏は既存勢力のボスだ。小沢一郎、羽田孜両氏らの新興勢力に対して、守旧派と言われたくない。時流に遅れまいという意識が強い。
 社会党の創憲論は内容が不明。しかし、ニューウエーブの会などの新しい動きや右派をにらんだもので、新しい波に乗り遅れてはいけないと、山花貞夫次期委員長が党内の全方位外交を意識したものだ。(談)


 
 
 
 
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