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ホームヘルプサービスを利用してみたいのですが・・・
〔回答者〕
中島 進
(大阪市こころの健康センター)
 
 私には四五歳になる精神障害の兄がいます。兄は数年前退院し、比較的安定した状態で、何とか一人暮らしができているのですが、部屋の掃除や洗濯は苦手で、ゴミの出し方など、ときには近所に迷惑をかけているようです。車で三〇分ほどのところに住んでいる私が、たまに掃除に出向くのですが、私も子供をかかえ、なかなか時間がとれません。
 平成一四年度からホームヘルプサービスがスタートと聞いており、ぜひ利用したいと思っているのですが、具体的にはどこにどんなふうに申し込んだらいいのでしょうか。
 また、利用するには精神障害者ということで診断書が必要なのでしょうか。そういった具体的なことをぜひ教えてください。
 
 小さい子供さんを抱えながら、離れて住んでいる病気の弟さんの面倒をみるということは、たいへんなことだとお察しします。平成一四年度から実施される精神障害者ホームヘルプサービス(正式名称は「精神障害者居宅生活支援事業」)を利用できればと考えておられるのですね。これから新たに育っていく制度でもあるので、地域によっては実施体制がすぐには整わないところもあるかと思いますが、窓口にかけあうなどして、ぜひ利用してみてください。
 ご質問については、一部今月号の特集記事とダブるところもありますが、大切なポイントですので、次のように項目にしたがい、Q&A形式で回答とさせていただきます。
 
Q サービスの利用申し込みはどこですればいいのですか
A ホームヘルプサービスの「利用申し込み」と「利用の相談」は、市町村(役場)が窓口になります。
 具体的に(役場の)どの部署が窓口になるかは、市町村によって異なります。
 
Q 申し込みができるのは利用者本人だけですか。
A 申し込みができるのは「利用者等」となっていて、具体的には−原則として−精神障害者本人、または、本人が属する世帯の生計中心者です。
 
Q ひとり暮らしでなければサービスは受けられないのですか
A そういうわけではありません。どんな人がサービスを受けられるかということですね。いろいろな場合が考えられますが、主な例を挙げると次のようになります。
・一人で生活している方
・今は家族と生活しているが、将来一人で生活しようとされている方
・身のまわりのことは自分でやっていきたいが、そのための支援が必要と思っている方
・家族が高齢や病気のため、自分の生活に支障をきたしている方などつまり、サービスを受けられる方の範囲(状況)については柔軟に考慮されます。
 
Q 利用の申し込み、つまりサービスを受けるためには、何か条件がありますか(何が必要なのですか)。
A とても大切なポイントですね。精神障害者といってもいろいろな方がおられ、病気のために通院し、治療を受けているというだけでは、サービスを受けることはできません。
 条件としては(ア)精神障害者保健福祉手帳を持っている方、または、(イ)精神障害による障害年金を受けている方(年金証書)、となりますので、(ア)か(イ)のいずれかを窓口で提示することが必要です。
 なお、手帳を持っていない方がサービスを受けたいと思う場合、手帳の申請とホームヘルプサービスの利用申し込みを同時に行ってもかまいません。
 
Q サービスの利用申し込みに診断書は必要ですか
A 利用する方には、やはりとても気になるところですね。「利用申し込み」の際には主治医の診断書や意見書は必要ではありません。しかし、申し込みをした方がすべてサービスを受けられるというわけではなく、申し込みがあると、サービス提供の必要性について検討がなされ、要否が決定されるのですが、この要否の決定に際して、「主治医がいるかいないか」の確認や、「本人の同意を得た上で主治医の意見」を聴くことがあります。
 その趣旨は言うまでもなく、利用者が安定した状態できちんとサービスが受けられるようということに他なりません。
 
Q サービスを受ける必要があるということで決定がなされた場合、具体的にはどんなサービスが受けられるのですか。
A かなりきめこまかなサービスとなっています。項目を挙げると次のようになります。
・調理、買い物、洗濯、清掃、衣類、日用品の整理整頓、ゴミ出しなど、日常的な家事援助。さらに
・身体の清潔を保つため、身だしなみについてのアドバイスや見守り援助
・通院や役所、保健センター(保健所)、郵便局等への外出同行などです。
 同行サービスについては、内容や利用者本人の状況等により、ホームヘルパーと相談しながら、一緒に行ったり、手伝ってもらったり、ホームヘルパーだけが行ったりします。
・その他、精神障害者の方は日常生活の相談相手や話し相手を得られることで不安が解消し、安心感が得られることがありますが、日常生活の相談・助言もホームヘルプサービスのひとつです。
 
Q サービス内容はどのようにして決められ、開始されるのですか。
A まず、「どんなサービスを受けたいのか」、「その方の状態や生活環境」などをお聴きしたうえで、市町村が「ヘルパーの派遣回数・時間数」「サービスの内容」を決定します。
 それが決定されると、受けることができるサービス内容や有効期限が記載された「精神障害者居宅介護等利用者証(縦128ミリメートル、横90ミリメートル)」という証明書のようなものが交付されます。これを持っている方がサービスを受けることができます。
 サービスは「精神障害者居宅介護等利用者証」の交付を受けた利用者とホームヘルパーを派遣する事業者との間の契約をもとに開始されます。どこにホームヘルパーの派遣事業所があるかがわからないときや、契約の手続きがわからないときは、市町村の利用申し込みをした窓口で相談してください。
 
Q サービスを受ける場合費用はどのくらいかかるのですか。
A 費用は世帯単位で決まることになります。利用される方が属する世帯の前年度所得税額により一時間あたり、〇円から九五〇円(六段階)の利用者負担があります。
 なお、非課税世帯や生活保護の被保護世帯の場合は費用負担がありません。
 
Q 利用の申し込みや利用相談の窓口は市町村ということですが、いきなり役所に行くのは少々気が重いのですけれど、市町村以外でホームヘルプの相談にのってくれるようなところはないでしょうか。
A どこにでもというわけにはいきませんが、市町村によっては、「精神障害者地域生活支援センター」が相談や助言をしてくれます。
 
Q 精神障害者や家族にとって、どんなヘルパーさんが来てくださるのかと、気になるのですが・・・
A ヘルパーの方々は「心身共に健康で一定の講習を修了し、精神障害者福祉に理解と熱意をもち、かつ、介護・家事・相談助言を適切に実施する能力を持った人」というのが要件となっています。さらに採用の時点とその後、定期的に研修を受ける必要があり、こういったことから、守秘義務を含め信頼できるプロの方々だといえます。
 
地域での暮らしに支えを
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利用者の声
 次に紹介するのは現在ホームヘルパーを利用している6人の方の声です。週に1回利用する人が4人、2回利用する人が2人で、利用期間は半年〜3年、インタビューに協力してくださるにあたり全員が「お世話になっているヘルパーさんへの不満なんかしゃべったら来てもらえなくなっちゃう」「ぜいたく言ったらいけないかな」と何度も前置きをしていました。すべて匿名で答えてくださった内容は次の通りです。
 
ヘルパーを利用してよかったと思うこと
●このヘルパー信用できるかな、ってずっと様子をみていた。ちゃんとした言葉で話しかけてくれるので「大丈夫」と思った。(40代男性)
●文句も言わず私のような者のために掃除と洗濯をやってくれて助かっています。(50代男性)
●家族だと甘えも出て、つい口論になるけど、ヘルパーさんはプロとしてきっちり仕事をしてくれるので気持ちが疲れず、楽です。(40代女性)
●保健所から訪問にくると「もっとしっかり片付けなよ」「吸い殻の管理はしっかりしないとアパートにいられないよ」とかガミガミ説教されていやな気分になる。ヘルパーさんは「どこに片付けますか?」って聞いてくれるので暗い気持ちにはならないですむ。質問が多くなると疲れてうっとうしく感じることもある。(50代男性)
●明るい人なので、こちらまで元気になる。気持ちが落ち込んでいるときは、少し(声の)ボリュームを下げてほしいけど、ヘルパーさんもしゃべりたいみたいだから(笑)、なるべく耳に入れないよう我慢しでいる。(40代男性)
●妹がときどき来てくれますが、ヘルパーさんと妹とに頼むことを分けています。それがうれしいです。(50代男性)
●私も普通のおつき合いが普通にできるような自信みたいなものを感じられた。(30代女性)
 
図1 ヘルパー派遣でよかったこと(ヘルパー評価)
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図2 ヘルパー派遣でよかったこと(利用者調査)
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三田優子「ホームヘルプサービスを利用した人たちの声」
季刊地域精神保健福祉情報誌レビュー34号 27ページ、
精神障害者社会復帰促進センター/全家連、2001







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