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 このほか、志布志湾コープ・ベンチャー号重油流出事故での実験で使用し、C重油を吸着した油吸着材を以上と同様に分解処理実験を行った。3ヶ月経過時の状況を写真−VII.2.10に示す。これまでの実験同様、C重油の痕跡は目視や触感、臭気感知では認められないレベルであった。また、分解したサンプルを用いて植物の生育(芝、二十日大根)を試みたところ、阻害は認められず、通常の堆肥同様に生育した(写真−VII.2.11)。
 
写真−VII.2.10
志布志湾事故で回収した油を吸着させたサンプル
(3ヶ月経過時、手前:マット型、奥:万国旗型)
 
写真−VII.2.11
事故で回収した油・油吸着材の分解で生成した堆肥で生育した芝
 
5 まとめ
 本調査研究により得られた知見は以下のとおりである。
・C重油を吸着させた杉樹皮製油吸着材は、堆肥原料に埋設させ1〜数ヶ月経過すると残留油分が知覚できない程度となる。
・中型好気発酵処理装置による堆肥原料・C重油の分解実験では、2〜数週間経過時における残留油分測定値は開始時の数分の1程度である。
 また、現在まで、C重油を吸着させた杉樹皮製油吸着材の分解によって生成した堆肥を用いた場合に二十日大根および柴では生育阻害が認められておらず、堆肥化について実用化の可能性を検証する必要がある。残留油分の毒性の有無など安全性については今後、慎重な検証が求められる。
 一方、小型好気発酵処理装置による堆肥原料・C重油の分解実験で見られたように、この微生物分解処理技術は、期待する結果が安定して得られる段階に至っていない。今後、専門家による検討を交えつつさらなる研究・実験が必要であると思われる。
 いくつか課題があげられるものの、実現すると生分解性の油吸着材の特徴を活かした環境負荷低減技術となるため、今後も本技術の早期の実用化を目指したい。







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