日本財団 図書館


III−3 実用散布高度性能試験の実施
 航空機からの実用的な散布高度(散布高さ)である5〜9mに散布管を設置しての性能試験を以下のとおり実施した。
 
1. 試験日
 平成15年2月25、27日
 
2. 試験場所
 山口県豊浦郡菊川町大字楢崎644−1
 株式会社 カネヤス内施設
 
3. 航空機用農薬散布装置を自己攪拌型油分散剤散布装置として使用する際の性能試験
 本試験は、下表の航空機用農薬散布装置(図−III.3.1、写真−III.3.1)を使用した。
 
航空機用農薬散布装置
散布装置名称 Simplex Model 4900
散布管(片舷)の長さ
外形
3190mm
φ44(内径φ37mm)
ノズル取付け可能数(片舷) 20
ノズル取付け穴ピッチ 155mm
ノズル スプレーイングシステムズジャパン製
・ボディー:Quick Teejet
・チップ :フラットスプレー(扇型)(TP6520−SS)
ノズル数 2
ノズル取付け位置 (3)・(20)
タンク容量 500L
ポンプ電源 28V−100A
 
(1)散布試験(水)(写真−III.3.2参照
〔1〕散布管にフラットスプレーノズル2個を(3)及び(20)の位置に取付ける。
〔2〕散布管を測定点より高さ3、5、7、9mの位置に水平に固定する。
〔3〕ポンプを駆動し、水を吐出させる。
〔4〕散布管根元側に取付けた圧力計で吐出圧を0.1、0.2、0.28MPaに設定し、全散布幅(片舷)を測定する。
〔5〕全散布幅(片舷)の結果を基に、両舷での全散布幅を推測する。
〔6〕各吐出圧における吐出量を測定する。
〔7〕ノズル噴射によって得られる粒径の測定を行う。
(2)散布試験(S−7)
〔1〕散布管にフラットスプレーノズル1ヶを(11)の位置に取付ける。
〔2〕散布管を測定点より高さ5、9mの位置に水平に固定する。
〔3〕ポンプを駆動し、S−7を吐出させる。
〔4〕散布管根元側に取付けた圧力計で吐出圧を0.1、0.2、0.28MPaに設定し、散布幅を測定する。
〔5〕(4)の結果を基にノズルを(3)・(20)の位置に取付けた場合の全散布幅(片舷及び両舷)を推測する。
〔6〕各吐出圧における吐出量を測定する。(散布高さ9mのみ)
(3)S−7効果確認試験
 透明水槽水面上にA重油を浮かべ、散布管を高さ9mの位置に設置後、S−7を散布してその効果を確認する。
 
4. 試験結果
(1)散布試験(水)の試験結果を表−III.3.1及び図−III.3.2〜4示す。
実施日:平成15年2月25日 気温:12.5℃、水温:9℃
 
表−III.3.1 散布試験結果(水、ノズル2ヶ)
散布高さ
(m)
タンク高さ
(m)
吐出圧:根元
(MPa)
吐出量(L/min) 全散布幅
片舷
(mm)
全散布幅
両舷
(mm)
〔3〕 〔20〕 平均
3 3.8 0.1 3.93 3.90 3.92 4870 8955
0.2 5.79 5.79 5.79 5170 9255
0.28 6.84 6.87 6.86 5315 9400
5 5.4 0.1 3.93 3.90 3.92 5345 9430
0.2 5.73 5.76 5.75 5790 9875
0.28 6.78 6.96 6.87 5850 9935
7 5.4 0.1 3.90 3.96 3.93 5770 9855
0.2 5.79 5.76 5.78 5980 10065
0.28 6.84 6.90 6.87 6175 10260
9 5.4 0.1 4.02 4.02 4.02 5640 9725
0.2 5.91 5.82 5.87 5890 9975
0.28 6.90 6.93 6.92 6105 10190
 
(2)散布試験(S−7)の試験結果を表−III.3.2及び図−III.3.5〜7に示す。
実施日:平成15年2月27日 気温:11℃、水温:9℃、液温:9℃
※散布高さ3mのデータは、平成14年11月14日(気温:14.5℃、水温:11.5℃、
液温:12℃)実施の試験結果を示す。
 
表−III.3.2 散布試験結果(S−7、ノズル1ヶ)
散布高さ
(m)
タンク高さ
(m)
吐出圧:根元
(MPa)
吐出量
(L/min)
散布幅
(mm)
全散布幅
片舷
(mm)
全散布幅
両舷
(mm)
3   3   0.1 3.96 1250 3885 7970
0.2 6.00 1885 4520 8605
0.28 6.90 2030 4665 8750
5   5.4   0.1 - 2470 5105 9190
0.2 - 3050 5685 9770
0.28 - 3310 5945 10030
9   5.4   0.1 4.38 3040 5675 9760
0.2 6.51 3455 6090 10175
0.28 7.32 3550 6185 10270
 
5. まとめ
(1)散布試験(水)
〔1〕散布幅測定結果は、散布高さ7m・9mではほぼ同値であった。また、目視でもノズルから噴射された水滴が、高さ5m付近から勢いを失い、自然落下(垂直方向)の軌道へと変化している様子を確認した。この結果より、散布幅は無風状態においては、散布高さ7m以上になっても変化しないと推測される。
〔2〕粒径の測定は、実寸法を測定するものではなく、異なる吐出圧や散布高さで噴射され落下してくる粒子を地上のアクリル板で受け、目視によりそれらの粒子を比較した。粒子は、高所・高圧になるほど小さくなる傾向があったが、その大きさは小雨以上のものであった。(写真−III.3.3〜5
 
(2)散布試験(S−7)
〔1〕散布幅測定は、散布高さ5m・9mを実施した。その値は、水の試験結果と近似している。また、水の軌道は、散布高さ3mから徐々に弧を描き始めているのに対し、S−7は散布高さ5mまで直線を描いていた。
〔2〕吐出量は水及び前回試験結果よりも若干多くなっていた。
〔3〕ノズル取付け位置(3)−(20)でS−7を散布した場合、隣接ノズルとの重なり合いが不均一となることから、ノズル位置を(1)−(17)とすると最適なノズル取付け位置となると推定される。(図−III.3.7、III.3.8 参照
 
(3)S−7効果確認試験
 水槽中のA重油(2リットル)に対し、散布管を高さ9mの位置に設置後、S−7を散布し、その効果を確認した。(写真−III.3.6〜8)高所から落下したS−7の粒子は水面上のA重油に対し、効果的に作用していた。
 
図−III.3.1 航空機用農薬散布装置(Simplex Model 4900)
(拡大画面:28KB)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION