はじめに
本書は、平成14年度に日本財団の助成を受け実施した海上防災訓練の充実強化事業の報告書である。
海上災害防止センター(以下「センター」という。)は、その設立目的を達成するため、平成14年2月現在、全国の主要港湾に所在する146の業者及び外洋対応としての12の業者を契約防災措置実施者(以下「契防者」という。)として契約を結び、油等の流出事故が発生した際は、センターの指令により直ちに防除活動が実施できるように体制を整備しているが、契防者には、港湾運送、港湾曳船、港湾土木を本業とする業者が多く、防災事業を専業とする業者は極めて少ないのが現状である。
このような状況に対し、平成11年度までセンターとしては契防者等が、防除作業を迅速、的確に実施する能力を保持するために、各現地において実際に即した流出油事故を想定して海上防災訓練を実施し、排出油等の防除に必要な知識及び技術の習得並びにその錬磨向上を図ってきたところである。
しかしながら、このような各地で実施してきた訓練においては参加船艇及び人員の連携に重点が置かれていたことから、高度な技能の修得には時間的、設備的に制約があり、大規模災害現場において指揮ができるエキスパートを育成するには至っていなかった。
特に、平成9年に発生したナホトカ号事故では、冬季の日本海で防除措置の極めて困難な高粘度化した流出油が大量に沿岸に接近・漂着し、さらに被災現場が広域に及んだことから、防除措置現場において高度な技能が求められながら、これらを習得した者の不足により被害の拡大を招き、人材育成の必要性が痛感されたところである。
このようなことからセンターにおいても防除措置体制の主体である契防者において高度な技能を有する人材を育成することが急務となってきたところである。
横須賀のセンター研修所では平成8年度から新設の油防除訓練施設において実際に油を使用し、実経験を取り入れた実践的な油防除訓練を実施しており、この施設を活用し契防者を対象とした高度な防除技術の習得を目的とした訓練を実施することが可能となってきたことから、平成13年度に引き続き平成14年度においても各契防者から選抜された者を横須賀に招聘し、同研修所で集中的に訓練を行うことで人材育成が効率的に実施できることとなり、これにより大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることとした。
また、実際に現地で油防除に従事する多数の者を対象とした地域に即した防除措置の指導は、今後とも欠かせないものであり、センター派遣講師による油防除技術等に関する研修会を開催し、地域における海上防災能力の向上を図ることとした。
1. 事業の目的
大規模な排出油防除措置作業の際に核となるべき高度な技能を有する人材を育成するため、当センター横須賀研修所において排出油防除訓練を行い、大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることを目的とする。また、地域に即した防除措置の指導のため、当センター派遣講師による油防除技術等に関する巡回研修会を開催し、地域における海上防災能力の向上を図ることを目的とする。
2. 事業の実施経過
平成14年 |
4月1日
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NF第2001004741号により助成金交付決定知書受理 |
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4月24日
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海防防第23号により関係契約防災措置実施者に対し排出油防除訓練の参加協力依頼書提出及び、海防防第24号により関係海上保安部署長及び関係契約防災措置実施者に対し巡回研修会実施の協力依頼書提出 |
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6月10日〜14日
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第1回排出油防除訓練 |
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6月10日
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第1回防災連絡会議 |
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6月28日
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名古屋地区巡回研修会 |
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7月4日
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大分地区巡回研修会 |
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9月2日〜6日
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第2回排出油防除訓練 |
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9月2日
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第2回防災連絡会議 |
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11月26日
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沖縄地区巡回研修会 |
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11月29日
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青森地区巡回研修会 |
平成15年 |
1月27日〜31日
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第3回排出油防除訓練 |
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1月27日
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第3回防災連絡会議 |
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2月6日
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山口地区巡回研修会 |
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3月4日
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全ての支払いを完了 |
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同日
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同事業の完了 |
3. 事業の実施内容
(1)排出油防除訓練
大規模な排出油防除措置作業の際に核となるべき高度な技能を有する人材を育成するため、当センター横須賀研修所において排出油防除訓練を行い、大規模災害へ対応できる人的体制の整備を図ることを目的として、契防者から選定した36名に対し次の3回に分け5日間ずつ座学と実習による訓練を実施した。
第1回 |
6月10日〜6月14日
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13名 |
第2回 |
9月2日〜9月6日
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11名
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第3回 |
1月27日〜1月31日
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12名
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訓練内容
基本的に午前中「座学」、午後に座学で学んだ事柄を実際に体験するための「実習」として、以下の事項等を研修・訓練した。
・排出油事故対応措置の検討・評価
適切な対応を行うために必要な、事故の影響の初期判断及び潜在的判断に必要な知識を学び、最終日には総仕上げとしてロールプレー(机上演習)を実施した。
・排出油防除資機材の使用方法及び使用限界
油の種類、気象、海象等の状況に応じた適切な選択ができるよう排出油防除資機材の種類と特徴、その使用限界について学び、各種資機材の使用、操作訓練を行うとともに、理解を深めるために訓練用プールでのオイルフェンスの限界実験、油回収装置による実油の回収訓練を実施した。
・洋上浮流油及び沿岸漂着油への対応措置
海上浮流油の状況に応じた防除手法及び海岸線の種類及び汚染状況に応じた海岸漂着油の清掃方法を学び、排出油防除資機材を使用した洋上訓練及び実油を使った海岸清掃実習を実施した。
(2)防災連絡会議
大規模流出事故が実際に発生した場合を想定して、排出油防除訓練参加契防者、センター本部を含む役職員が、体制確立手順、指揮命令系統の確認、原因者への費用請求及び作業実施者への支払手続き等に関し協議した。
実施日時・場所・参加人員
第1回 |
6月10日
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18:00〜20:00 |
さいか屋(横須賀市) |
30名
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第2回 |
9月2日
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18:00〜20:00 |
さいか屋(横須賀市) |
30名
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第3回 |
1月27日
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18:00〜20:00 |
さいか屋(横須賀市) |
30名
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(3)巡回研修会
これまで油濁事故処理件数の少ない地区及び当センター職員が訪問指導する機会の少なかった名古屋、大分、沖縄、青森、山口の5地区において、計526名に対し油防除技術等に関する研修を実施した。
地域の海上防災能力の向上を図るため、実施地区を管轄する海上保安部署の協力を得て、港湾事業者等が会員となっている排出油防除協議会の定例総会等に併せ開催することにより、少しでも多くの関係者に参加してもらえるよう考慮した。
また、次の4項目を研修の内容とし油流出事故対応として油の性状からオイルフェンスの適切な展張方法等現場において作業を行う者が必要となる知識の普及に努めると共に、開催地の港の特色を盛り込んだ海上防災意識の向上に努めた。
・大規模油流出事故における油防除作業の事故事例とその教訓
・オイルフェンス、油回収機材、油処理剤、油吸着材等の防除資機材基礎知識及び使用方法
・最近の防除資材
・流出事故における求償制度等
(1)名古屋地区巡回研修会
a. 日時・場所
6月28日(金) 1000〜1200
名古屋港文化センター会議室(名古屋市)
b. 内容
研修 |
題材「流出油事故への対応」により、海上災害防止センター及び油流出事故例紹介をはじめ、オイルフェンス、油回収機材、油処理剤、油吸着材等の防除資機材の基礎知識及び求償制度の講習
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海上災害防止センター
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防災部業務課課長代理
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萩原
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〃
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総務部総務課長
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木本
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c. 参加人員
126名
(2)大分地区巡回研修会
a. 日時・場所
7月4日(木) 1400〜1600
大分クレインホテル会議室(大分市)
b. 内容
研修 |
題材「油濁事故対応について」により海上災害防止センター及び油流出事故例紹介をはじめ、オイルフェンス、油回収機材、油処理剤、油吸着材等の防除資機材の使用方法の講習、及び油処理剤の有効な使用方法の実演 |
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海上災害防止センター |
防災部業務課課長代理 |
吉満 |
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〃
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防災部業務課係長 |
宮脇 |
c. 参加人員
45名
(3) 沖縄地区巡回研修会
a. 日時・場所
11月26日(火) 1400〜1600
沖縄県漁業協同組合連合会大ホール(那覇市)
b. 内容
研修
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題材「流出油事故への対応」により、海上災害防止センター及び最近における油流出事故例紹介をはじめ、オイルフェンス、油回収機材、油処理剤、油吸着材等の防除資機材の基礎知識及び求償制度の講習 |
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海上災害防止センター |
防災部業務課係長 |
宮脇 |
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〃
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鹿児島支所長 |
東郷 |
c. 参加人員
150名
(4)青森地区巡回研修会
a. 日時・場所
11月29日(金) 1400〜1600
ラ・プラス青い森会議場(青森市)
b. 内容
研修
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題材「油濁事故対応について」により海上災害防止センター及び最近における油流出事故例紹介をはじめ、オイルフェンス、油回収機材、油処理剤、油吸着材等の防除資機材の使用方法の講習、及び油処理剤の有効な使用方法の実演、函館支所の業務 |
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海上災害防止センター |
防災部業務課課長代理 |
吉満 |
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〃
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函館支所長 |
地本 |
c. 参加人員
90名
(5)山口地区海上防災巡回研修会
a. 日時・場所
平成15年2月6日(木) 1400〜1600
小野田市きらら交流館会議場
b. 内容
研修
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題材「流出油事故への対応」により、海上災害防止センター及び最近における油流出事故例紹介をはじめ、有害液体物質の防除を含めたオイルフェンス、油回収機材、油処理剤、油吸着材等の防除資機材の基礎知識及び求償制度の講習 |
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海上災害防止センター |
防災部業務課課長代理 |
萩原 |
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〃
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総務部総務課係長 |
奥山 |
c. 参加人員
115名
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