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4.2 特設技術委員会
Specialist Committee on Speed and Powering Trials
小柴幸雄、増子 章(IHI)
 23期の本SC(Specialist Committee)のTaskは、(1)22期SCのRecommendationsに基づいて、Guide for Speed/Powering Trials ITTC Procedureを改訂する、(2)改訂したProcedureはITTC Quality ManualのFormatで、AppendixとしてReportに含める。(3)ISO TC8/SC9/WG2 Committee Draft 15016のRecommendationsを考慮する、の3項目であった。
 Procedureの見直しに関しては、(1)Preparation、(2)Ship Inspection、(3)Hull and Propulsor Survey、(4)Instrumentation Installation and Calibration、(5)Conditions、(6)Conductの6つのRecommended proceduresに分けてまとめられた。
 また、速力試験の重要な計測項目である馬力計及びDGPSから得られる速力に関してのUncertainty Analysisの報告があり、次に速力試験結果の修正に関して、既存の6つの手法について比較検討した結果が報告された。この中では最近ISO基準として成立したISO TC8/SC9 Methodが最も包括的でわかりやすいとの結論であったが、試運転時のSea Stateについてはより直接的な計測が必要であると結論した。
 今回作成されたRecommended proceduresは、24期Powering Performance Prediction Committeeにおいて見直しが行われ、修正法についてもProcedureへ含めることとなった。
 
Specialist Committee on Procedures for Resistance, Propulsion and Propeller Open Water Tests
岡本幸彦(NKK)
 本委員会に与えられたTaskは、通常船舶および高速船(単胴、多胴の滑走、半滑走艇等)の水槽試験法に関して第22回ITTC Quality Manualに記述されたProcedure(Validationと不確かさ解析を含む)を見直し、アップロードすることであり、見直しは下記の項目について行われた。括弧内は第22回ITTC Quality Manualの文書番号を示す。
(a)Ship Models
 (ITTC Procedure 4.9-02-01-01 Revision 00)
(b)Resistance Tests
 (ITTC Procedure 4.9-03-02-01 Revision 00)
(c)Propulsion Tests
 (ITTC Procedure 4.9-03-03-01.1 Revision 00)
(d)Open Water Tests
 (ITTC Procedure 4.9-03-03-02.1 Revision 00)
(e)Resistance Tests for HSMVs
 (ITTC Procedure 4.9-03-03-05.1 Revision 00)
 ChairmanのMr. William G. Day Jr.(Naval Surface Warfare Center, USA)がProcedureを含む委員会活動の全般について報告し、また不確かさ解析についてはMr. Lars T. Gustafsson(SSPA)が活動報告を行った。
 水槽試験法の一般事項については、Proceduresのレイアウトを全実験の種類について統一したこと、また、模型寸法、模型の速度、計測走行間隔、待ち時間、計測システム、計測機器の精度、解析に使用する摩擦抵抗曲線などの各項目について、ITTC Recommended Procedures(第22回ITTCのQuality Manualに相当)に記載したことなどが報告された。また、各実験については下記の項目がProcedureに明確に定義されたことが報告された。
(a)Model Manufacture
 (Ship Models : 7.5-01-01-01 Rev01)
 Station間隔、喫水線の定義、製作許容誤差、乱流促進、BallastingとTrimming
(b)Resistance Test
 (Resistance Tests : 7.5-02-02-01 Rev01)
 模型船長さ、実験条件、計測機器設置、形状影響係数、Blockage修正
(c)Propulsion Test
 (Propulsion Tests : 7.5-02-03-02.1 Rev01)
 曳航力(SFC)、推力、荷重方法、推力トルク計測
(d)Propeller Open Water Test
 (Open Water Tests : 7.5-02-03-02.1 Rev01)
 通常プロペラとダクトプロペラ試験法
(e)Resistance Test for HSMVs
 (Resistance Test for HSMVs : 7.5-02-02-02 Rev01)
 実験法、実船への外挿法、形状影響係数と模型船実船の相関など
 なお、本Procedureを纏めるにあたっては、原稿案段階でその内容について各国の主要水槽にヒアリングを行い、極力それらの意見を採り入れるよう配慮した。
 続いて、Mr. Lars T. Gustafssonが不確かさ解析について報告を行った。
 最初に不確かさ解析の一般的な事項の説明があり、続いて同一の模型船および模型プロペラを用いて実施した。Resistance Tests、Propulsion Tests、Propeller Open Water Testsについて、各実験におけるBias Limit、Precision LimitおよびTotal Uncertaintyの算定手法詳細と実際の水槽試験データを用いた実例を示した。これらはITTC Recommended Proceduresの下記部分に記載されている。
(a)Uncertainty Analysis, Example for Resistance Test
 7.5-02-02-02 Rev01
(b)Uncertainty Analysis, Example for Propulsion Test
 7.5-02-03-01.2 Rev00
(c)Uncertainty Analysis, Example for Open Water Test
 7.5-02-03-02.2 Rev01
 最後にProcedureを纏めるに当たり協力を得た各機関に対して謝辞が述べられた。
 本委員会には、2件のWritten Discussionが寄せられた。一件は表面粗度と粗度修正に関するもので他の一件は自航試験の推力減少率の解析法に関するものであった。また不確かさ解析例については、スプレッドシートを掲載するようにとの提案があり了解された。本委員会活動はこの報告を以て終了した。
 また今回Proceedingsと別冊で配布されたITTC Recommended Proceduresについては編集上のミスタイプがかなり見られたので本委員会からQuality System GroupのProf. Strasserに修正を申し入れた。
 
Specialist Committee on Validation of Waterjet Test Procedures
佐藤隆一(防衛庁技研)
 本委員会の報告は、9月10日午前9時から行われた。メンバーはTerwisga(オランダ、チェアマン)、Zangeneh(英国、セクレタリ)、Hoyt(米国)、Choi(韓国)、Oloffson(スェーデン)、Ranocchia(イタリア)及びSadovnikov(ロシア)である。本委員会は2000年1月のニューオーリンズ、同年10月ローマ、2001年7月ロンドン及び2002年1月ワーゲニンゲンの計4回のミーティングを開いている。
 タスク確認の後、報告書の内容が紹介された。報告書の第2章は過去3年間に公表された関連する文献のレビューで、取水口の設計と解析、ポンプの設計と解析、ウォータージェットと船体との干渉、設計点からずれた状態での見当、空気吸い込みが発生した場合の考察に区分して紹介されている。第3章の市場概況では、高速フェリーの市場は低迷しており、作業員の解雇や修理部門への配転を行った造船所もあるが、ここ数ヶ月は引き合い件数も増えてきており明るい見通しとなってると分析されている。第4章は本委員会で議論されたウォータージェットの馬力推定に関する問題として、推力と裸殻抵抗との関係、流量計測、取り込まれた運動量とエネルギー束の決定法について紹介されている。第5章は標準化に関する問題を、第6章ではGulf Coast projectのうちのウォータージェットに関連する問題が紹介されている。結論及び次期委員会への勧告は第7章にまとめられている。
 本委員会の主な結論は下記のとおり。
1 ウォータージェットの各種の流量計測法を検討した。
2 取水口上流の3次元境界層内速度分布内で、吸い込まれる領域の境界面が不明確であるため、吸い込まれた運動量及びエネルギー束の決定が難しい。
3 ノズル径と噴出流量の計測値から、平均運動量とエネルギー速度を算出する方法には未だ不確定性が残っている。
4 自航試験を推力一致と流量一致のいずれで行うかについては今後解決すべき問題である。
 なお、本委員会の活動及び成果は、http://www.ittc-wjc.insean.it/に公開されている。
 本委員会報告に対する主な質疑応答は次のとおり。CFDによる裸殻表面上の圧力分布の計算結果とRANSコードによるウォータージェットの計算結果との一致精度に関する質問に対し、トランサムで空気吸い込みが発生すると一致が悪くなるとの回答があった。また、釜山大のProf. Chunからウォータージェット推進の軍用キャタピラ式水陸両用車が紹介された。ランプ部の圧力分布のCFD計算と風洞試験結果との誤差は約5%とのことであった。
 
Specialist Committee on Cavitation Induced Pressures
佐々木紀幸(住重)
 本会議は開催2日目の9月10日(火)午後に実施された。ChairmanのFriesch(HSVA)が代表して報告し、下記のメンバー全員が会に参加した。
Prof. Poul Andersen
Technical University of Denmark
Prof. Gran Bark
SSPA Maritime Consulting AB and Chalmers University of Technology, Sweden
Dr. Bong Jun Chang
Hyundai Heavy Industries, Korea
Dr. Fabio Di Felice
Italian Ship Model Basin, INSEAN, Italy
Mr. Jrgen Friesch
Hamburg Ship Model Basin, HSVA Germany
Dr. Ki-Han Kim
Naval Surface Warfare Center USA
Dr. Noriyuki Sasaki
Sumitomo Heavy Industries LTD Japan
 非定常キャビテーションによる圧力変動の予測に対する実験/計算の手順を評価し、ITTCが推奨する実験及び計算のマニュアルを策定することが本委員会のタスクであると説明され、引き続き、(1)基本的事項の確認、(2)アンケート実施内容とその結果、(3)模型試験の手順、(4)数値計算の手順、(5)技術的な結論、(6)推奨される手順、(7)今後の課題という内容がプレゼンテーションされた。
 基本的事項の確認では、重要視されるべきこととして伴流分布、船尾形状、バブル崩壊、TVCのバースティングなどが挙げられた。アンケートは実験・計算の両方から実施され、実験関連では設備と実験手法との関連性が調査されたことが報告された。また、計算関係のアンケートにおいては、どのようなタイプのキャビテーションがどのような理論に基づいて計算されているかが調査された結果、揚力面理論やパネル法によるシートキャビテーションの計算が主流を占め、RANSはまだ発展途上にあることが示された。実験の手順においては、試験のセットアップから試験の成績書のまとめ方までを整理し評価した。
 また、計算においては抵抗分布の与え方、船体の表現方法、計算すべきハーモニクスの次数などが述べられている。(図1)
 討議では、MARINから実船での評価は圧力変動では無く、船尾振動であるから、そのような観点からの調査もすべきではないかとのコメントがあった。全体を通して、本テーマに関する技術はこの数年間はあまり進展を見せていないというのが率直な印象である。その背景には、実船DATAの不足による手詰まり感があることは否めない。
 なお、本委員会は、今期を持って終了するが、実船伴流の推定精度向上など推定精度を上げるためには残された課題も多い。
 
図1 翼振動数での変動圧力振幅
 
Specialist Committee on water Quality and Cavitation
大島 明(三菱)
 本委員会の報告は、9月10日(火)の午後の2番目のセッションで行われた。委員は、Billet(米国、チェアマン)、Atlar(英国、セクレタリ)、Briancon-Marjollet(フランス)、Ceccio(米国)、Semionicheva(ロシア)、Song(韓国)及び大島(日本)である。本委員会は2000年4月にNewcastle、同年9月Val de Reuil、2001年6月Pasadena及び2001年12月Londonの計4回のミーティングを開いている。
 Water Qualityとは、以前は水中に溶け込んだ空気量を指したが、最近では水の引張圧力または気泡核分布と定義されており、キャビテーションの発生に大きな影響を及ぼすことが20th及び21st ITTCで指摘されている。プレゼンテーションでは、同じ試験条件(流速、圧力)、同じ供試体でも、Water Qualityが異なるとキャビテーションの発生状況が大きく変化することを示す動画に続いて、(1)Water Qualityの計測・制御方法、(2)キャビテーション初生の不安定性、(3)Water Qualityを考慮したキャビテーション初生相似則について報告がなされた。(1)では、キャビテーション試験設備を有する水槽へのアンケート調査結果、Water Quality計測装置の現状、実海面でのWater Quality計測データ等が紹介された。(2)では、初生の不安定性を、一定時間内でのキャビティ気泡の発泡個数ととらえ、気泡核分布との関連についての調査結果が、(3)では、Water Qualityのキャビテーション初生へ及ぼす影響の定量化及び相似則との関連やKellerにより提案されたキャビテーション初生の相似則の課題について報告がなされた。
 本委員会の結論・勧告は下記の通り。
1 気泡核は、全てのキャビテーションの間欠性とバブル及び渦キャビテーションの初生に大きな影響を及ぼす。
2 キャビテーション試験時の設備のWater Quality(引張圧力、気泡核分布)を把握することが推奨される。
3 キャビテーション初生試験データについてWater Qualityの影響を考慮した修正をすることが推奨される。
4 キャビテーション初生時の不安定性について基準を設けることが推奨される。
 報告に対する討議は、簡便・安価な気泡核計測装置について三井昭研から、気泡核分布とキャビテーションの間欠性についてMARINから成された。気泡核計測装置については、20th及び21st ITTCから大きな進歩は見られず、多くのキャビテーション試験設備ではルーチンとして気泡核計測を行っていないのが現状を考えると、簡易に気泡核分布を計測できる装置の必要性は高いものと思われる。
 
Specialist Committee on Ice
山口 一(東大)
 この委員会の報告は全技術委員会報告の最後であり、9月13日(金)午後に、Esso Osaka専門委員会報告に引き続いて行われた。この委員会の内容は特殊であって毎回出席者が少ないので、Esso Osaka特設技術委員会報告の後、休憩を取らずに開始されたのであるが、出席者は30名程度であった。氷工学が専門でない日本や他国の知りあいが多く残って下さって、ありがたかった。
 この委員会は、山口一(東京大学、Chairman)、Ahmed A. Derradji(カナダIMD、Secretary)、泉山耕(海上技術安全研究所)、Gran Wilkman(フィンランドMARC)の3カ国4委員から構成されており、今期ITTCの中で最も小さな技術委員会であった。委員会会合は米国、フィンランド、カナダ、日本で計4回行われたが、全員が一度も欠席することなく、本会議での報告でこれを紹介したところ、期せずして会場から拍手が起こった。しかし、本会議にGran Wilkmanが欠席したため、残念ながら全員皆勤とはならなかった。
 報告は、Chairmanがメンバー、委員会開催履歴、各メンバーのタスク、報告の内容を紹介したあと、基本的に各担当者が担当部を説明するという形で行われたが、氷工学という特殊な分野であるため、導入部において氷工学における問題と氷海試験水槽の役割について一般的な解説を行ったのが好評であった。今期委員会で最も力を注いだのは、氷海試験水槽試験に対する一般的なガイドライン、平坦氷中抵抗試験、模型氷特性計測の3つのITTC Procedureの改訂であった。これらの原案は前期ITTCで示されていたが、最近の成果を取り入れて内容を充実させるとともに、氷海試験水槽試験実務者の立場から構成を大幅に刷新した。
 今期委員会で新しく検討したのは、平坦氷中抵抗試験における不確かさ解析である。これは、日本の海上技術安全研究所が平坦氷中抵抗試験について発表した論文の手法を要約したものであり、具体的な不確かさレベルが示された。また、委員会内でも不確かさ解析の必要性がより認識され、カナダのIMDでも類似の試験と解析が進行中であることが紹介された。氷中試験の不確かさ解析がITTCで紹介されるのは初めてのことであり、好意的に受け入れられた。これに対してフィンランドからの出席者により「実船推定抵抗の不確かさ解析」にまで手を広げるべきとの討論がなされた。重要な指摘であるが、現状の技術とデータのレベルを考えると、将来課題とするべきであろう。
 その他、氷山と船舶・構造物の衝突に関する実験の重要性が報告された他、今期ITTC中(1999年から)に開催された国際会議、報告、科学技術雑誌における氷中模型試験関係のレビュー結果が報告された。調査対象を氷中模型試験に限ったものの、37編の論文が発表されており、研究は継続されていることが判る。
 最後に、次期ITTC、委員会への課題として、他のITTC Procedureの一部の改訂、不確かさ解析の課題を継続すること、海洋構造物試験についての注目度を増すこと、数値的手法のレビューなどが示された。上記の不確かさ解析についての指摘以外の討論は、氷閉塞状態におけるプロペラ性能およびプロペラ・キャビテーション問題の重要性の指摘が行われた。また、住友重機械工業の佐々木紀幸氏より、Kvaernar Masa-Yardsとの提携によるDAT(Double Acting Tanker)の建造の様子と模型実験の結果が紹介された。
 この委員会は、委員の少なさにより打ち切られることが心配されたが、最終的には日本、カナダ、フィンランド、ドイツ、中国から計5名の委員候補者が示され、第24期ITTCにも継続されることとなった。喜ばしいことである。
 
Specialist Committee on Waves
石田茂資(海技研)
 本専門委員会の報告は9月12日(木)9時より行われた。委員7名およびCorresponding member2名のうち、出席者はチェアマンであるStansberg博士(ノルウェー、MARINTEK)、Wolfram教授(英国、ヘリオット・ワット大学)、Wang教授(中国、大連工科大学)、Hong博士(韓国、KORDI)および筆者の5名であった。報告はStansberg博士によって行われた。なお、委員の異動のため本委員会の活動はセクレタリー不在のまま進められた。
 本委員会の主なタスクは、(1)波浪の標準スペクトル(recommended spectra)の調査と見直し、(2)水槽における造波法の調査および造波された波の性質に関するガイドラインの作成、(3)海岸工学分野における波浪のモデル化の調査、の3点である。このうち、標準スペクトルの見直しおよび水槽造波のガイドラインに対しては、本委員会は判断を見送った。
 標準スペクトルについては、広く使われているPM型スペクトルの高周波数部がマイナス5乗で減衰することに対して平山教授(横浜国立大学)より討論が行われ、最近ではマイナス4乗になる計測例が多いこと、理論的にもそれが示唆されていること、長期予測結果に有意な差が出ることが示された。これに対し、Stansberg博士からマイナス5乗になる最近の計測例が示され、データの蓄積がさらに必要である旨が述べられた。また、水槽造波のガイドラインについては、対象とする構造物、応答等によって着目すべき波の性質が多様であるため、造波法を一律に規定することが難しく、感度解析等をさらに行う必要性が述べられた。
 この他にも、極限波の性質や発生確率を明確にすることの重要性等について議論が行われたが、本専門委員会は今期(3年)で終了するため、上記の点を含め今後の検討は新たに設置される耐航性委員会、海洋工学委員会の作業に期待されるところである。
 
Specialist Committee on Stationary Floating Systems
木下 健(東大)
 停留浮体システム専門委員会は、前期の深海係留専門委員会を引き継いでいる。海底石油・ガスの生産・貯蔵・搬出プラットフォームの深海係留システムの実機性能予測のためのハイブリッド実験法、深海域の潮流分布・変動例の調査に加えて、海底石油・ガス用のプラットフォームの他、各種作業船、調査船と多方面に利用されている動的位置保持(DP)の現状についてタスクが与えられており、その報告があった。タスクに加えて、日本で盛んである超大型浮体構造物の新コンセプトと、逐次崩壊を含む全体システムの安全性評価における水槽試験と数学モデルの活用法の紹介、さらに浅海域での停留浮体システムの実験法と実機性能予測のための標準手順の重要性を指摘する報告があった。ハイブリッド実験法についてはITTC標準手順が提案された。報告のあと、ハイブリッド実験法の有効性について、超大型浮体構造物の新コンセプトにも利用された波浪発電の可能性について等の議論があった。
 
Specialist Committee on Esso Osaka
小林弘明(東京商船大)
 第23回ITTCの5日目の午後、本委員会の報告を行った。本委員会の構成メンバーは以下の通りである。
  
Prof. H. Kobayashi  
Tokyo Univ. of Mercantile Marine, Japan (Chairman)
 
Dr. J.J. Blok
MARIN. Netherlands (Secretary)
 
Dr. R. Barr
Hydronauties, USA
 
Dr. Y.S. Kim
KRISO, Korea
 
Dr. J. Nowicki
FSNEP, Poland
 報告は委員紹介、委員会開催経緯ならびに22回ITTCにおいて提示された本委員会のタスク説明から始まり、以下の通り検討結果が報告された。
 はじめに、22回ITTCにおいて検討対象として取り上げられた20件の各研究機関から提出された船体流体力について、実験状態等の情報が比較的明らかなデータを抽出して再解析した結果、従来指摘されていたような大きなばらつきは解消されたことが報告された。一方、提出されているデータは流体力微係数であり、計測流体力そのものは得られていないことに起因し、実験状態、数学モデルの形式、解析手法により流体力微係数がばらつくことが調査された。その結果、指摘されている流体力のばらつきを発生させる原因は実験状態、数学モデルの形式、解析手法の中にあることから、これらの流体力微係数推定までの過程が明らかなデータを対象としてばらつきの程度とばらつきが運動推定に与える影響を調査することとした。提出されている流体力微係数は、大きく2種の数学モデルによっていることからMMGモデルとWSM(Whole Ship Model)を検討対象とした。
 MMGモデルに関しては4機関から提出されている流体力微係数を同一条件に合わせて比較対象データとした。各機関が提出している船体流体力データのばらつきについて議論した。検討は船体縦方向流体力、横方向流体力と浅海流体力の推定の差異が操縦運動の推定に与える影響を比較することにより行われた。比較検討の結果、旋回に伴う横方向流体力の推定差は他の流体力に比較し、ZIGZAG試験の推定に与える影響が大きいことが明らかとなった。
 WSMについては、4機関が提出している流体力微係数を対象として同様な検討を行った。各機関のデータはほぼ同様の運動推定を行うが運動が発達した状態で若干の差異を生じている。その原因はYerrYe|r|の推定差が大きな影響を与えることが明らかとなった。
 本委員会の主たるタスクであるベンチマークデータの提示については、MMGならびにWSMに対して提出されている流体力微係数から推定される流体力の平均値が採用された。
 ITTCにおける質疑は浅水域におけるベンチマークデータ作成の可能性に関するものが主であった。本委員会としてはデータ入手の困難が原因として実行できなかったが、この点が克服できれば同様な手順でベンチマークデータの作成は可能と考えていることを示した。
 
Specialist Committee on Prediction of Extreme Ship Motion and Capsizing
梅田直哉(阪大)
 本専門委員会7名の委員のうち、チェアマンのバサロス教授(英国グラスゴー大学 ストラスクライド大学)、セクレタリのレニルソン博士(英国 キネティック)および筆者、さらにコレスポンデンスメンバーのデキャット博士(オランダ MARIN)とフランシスクート教授(イタリア トリエステ大学)が出席し、委員会の報告と質疑への回答にあたった。与えられたタスクに基づき、1)非損傷時および損傷時復原性の数値シミュレーションのベンチマークテスト実施報告、2)非損傷時および損傷時の模型実験ガイドラインの見直し、3)記号用語の検討について発表が行われた。これらの詳細については、本誌第865号(2002年1月)に紹介した通りであるのでご参照いただきたい。1)については、第22期会議の発表ではベンチマークとする模型実験のビデオが上映されたが、今期の発表では実験とともに対応する数値シミュレーションによるアニメーションが同時再生され、本委員会の成果が視覚的にも強調された。(図2)質疑では、ウオルファム教授(英国 ヘリオット・ワット大学)らよりもっぱら極限運動と極限波浪の関係についての活発な討論があった。委員会は、ベンチマークの実験データでも波岨度1/8のケースでは非線形分散関係がみられたなどの回答を行った。
 
図2 非損傷時復原性のベンチマークテストの例
(模型実験と数値シュミュレーションの比較で、実験は水産工学研究所、計算は大阪大学が実施したものである。)
 
 第24期については、本委員会を実質的に引き継ぐ形で、波浪中復原性専門委員会が発足した。ベニスでの会議最終日には、チェアマンのデキャット博士以下新委員5名が第1回の会合をもち、筆者をセクレタリに選び、次回会合を2002年10月16日午後に米国ニューヨークのロング島で開催することを決定した。ここでは各委員のタスク分担を決める予定である。なお、タスクとしては、1)非損傷時および損傷時の実験、計算法の改良、2)在来船および新形式船に対する、非損傷時および損傷時の安全評価手法の標準化、3)IMO/HSCコード暫定実験法の改良提案、4)ブローチング推定法のレビュー、5)避難システムの評価法のレビューと定められている。







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