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「なら犯罪被害者こころの支援センター」会報
ハートニュース 創刊号
2002.6 発行
会長 西口廣宗
(南都銀行頭取)
 当センターが設立して早7ヶ月が経過致しました。
 この間、多くの皆様の暖かいご支援とご協力により、センターの事業も概ね順調に進んでおります。
 事業の中心となっていただいております若いボランティアの皆さんは、チームワークも良く、被害者とともに考え、悩みながら、少しでも心のケアが図れることを願って日夜研鑽を続けております。
 また、日常の業務運営に携わって下さっている運営委員の皆さんも、委員会の開催や各種研修会への参加など積極的な取組みを進めていただいているところであります。
 さて、犯罪被害者への支援の必要性につきましては、被害者自身やこれを支援する人々の地道な活動により、徐々に社会的な理解が得られつつあり、その結果、関係法令の制定及び改正や支援制度の整備等が図られてきているところであります。
 しかし、適切な支援を受けることができる被害者はまだ少なく、多くの被害者は社会の片隅で悩み苦しんでおられるのが現状であります。そんな人々の声を聞き、少しでも苦しみを軽減してあげることが私たちの役割であり、そのためには、当センターの活動をもっと多くの人々に知ってもらい、被害者やその家族の皆さんが心の傷を癒し、1日も早く社会に歩み出せるように可能な限りのサポートをして行きたいと考えております。
 当センターの活動につきましては、今のところ、相談業務にとどまっておりますが、将来的には被害者に寄り添った活動や支援物品の供与など直接的な支援の手を伸ばせるように、組織の充実強化に努めてまいりたいと考えておりますので、県民の皆様の更なるご支援並びにご協力をお願い申し上げます。
(設立総会祝辞 抜粋)
山上 晧
(東京医科歯科大教授)
 「なら犯罪被害者こころの支援センター」の設立、本当におめでとうございます。そして、準備にご苦労された皆様にお礼を申し上げたいと思います。日本の被害者支援活動というのは、欧米に比べると20年近い遅れをとっております。私がこの活動に取り組んだのは、10年程前、アメリカで組織をあげて被害者支援に取り組んでいるのを見て、日本でも必要ではないかと言ったときに、あるご遺族が「是非始めてほしい。」と声をあげられたからであります。
 その頃は、被害者学の学者もおられたのでありますが、日本で被害者支援を求める被害者や遺族の方々が本当にいるのだろうかと言われていたくらいでした。そういう声を受けて実際に始めて見ますと、次々と被害者が支援を求めてまいりました。ただ、日本では、欧米以上に声をあげることがとても難しく、社会的に忍耐を強いられている。あるいは、声をあげることにより目立つことが嫌われる社会的風潮もありますし、実際に声をあげたところで、それが届く所がどこにもなかったのですから、声をあげられなかったのです。
 実際に被害に遭ってみますと、それまで普通の生活をしていたのに、人間関係が大きく崩れてしまうことが少なくありません。それまで社会に対する信頼、あるいは周囲の人に対する信頼を結んでいた絆も全部切られて、孤立しながら耐えている人たちが沢山いるのです。奈良でも、今は積極的に支援を求める人は少ないかも知れませんが、そうした人たちがいつでも声をあげられる、あるいは支援を求める場所ができましたら、求めてくる人が次々と現れてくるものと思っております。
 被害者支援がここ数年全国的な広がりを見せており、被害者や遺族の方々も、色んな場面で声をあげられるようになってきました。これは、社会が被害者や遺族の方々の声を聞く耳を持つ、あるいは、被害者の立場を理解しようとする目を持ち始めてきたからであります。こうしたことにより、被害者や遺族の方々を力づけていると思いますし、また、支援の声をあげることで、被害者の実態をより深く知ることができるようになり、一種の好循環となっております。
 犯罪被害者は、理不尽な体験から、社会を変えたい、犠牲になった人達の死を無駄にしたくない、そして社会が変わってほしいという願いで一生懸命声を上げられているのです。
 声を上げることで、とても傷付いたり、辛いこともあるのですが、そういう努力に応えるのが私たちの役割だろうと思います。被害に遭ってみると社会の矛盾や問題が見えてきますが、それを一緒に変えていくことが被害者を支えるだけでなく、正しい社会をつくる、そして、私たちも変わっていくことを意味するのだと感じております。私が、被害者支援の活動に関わって非常に幸せだと感じますのは、本当にいい仲間が沢山できたことであります。お互いに助け合って、研修会やフォーラムを行ったり、あらゆる場面で被害者を通じて協力しあっております。
 全国の仲間を代表して、奈良の支援センターの皆さんが加わって下さったことを心から歓迎したいと思います。







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