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ミムジー・サドフスキー氏講演録

 事業名 講演会と交流会の実施
 団体名 With Kidsの会 注目度注目度5


質疑応答
「With Kids」にて
セッション1&2
デモクラティックスクールにおける学び&スタッフの役割
ミムジー:個人的な話から始めましょう。私は41年前に結婚して3人の子ができました。子ども達は今では40歳、38歳、30歳になりました。3人ともSVSに通い、その後大学に進学しました。2人は大学の教授になり、もう一人はコンピューターの技術者をしています。長男には7歳と6歳になる2人の子がいます。2人ともオレゴンにあるSVSと同じタイプの学校に通っています。長女も結婚していますが、子どもを持つ予定はありません。次男も結婚していて、SVSの近くで仕事をしたいと望んでいます。
 私の生活は幸運で満ち足りたものです。特別な金持ちではありませんが、家も食べる物も十分にあります。このような環境で生きてきたので、人生の中で特に困難に直面したことはありません。ですが、SVSでの仕事は非常に難しいものでした。世間の人はSVSの卒業生を見て、「子どもがこういった環境の学校から卒業し、その後自分自身の人生を歩んでいける」とわかっています。しかし、現実的に学校の中で何が行われているかを知った後で、SVSのようなやり方の学校がこのような結果をもたらしたと信じるのは難しいものです。すべての親が子どものことを非常によく考えていると思います。しかしSVSに自分の子を通わせている親を見て「すごい教育を受けさせているなぁ」と思っても、「自分の子にはちょっと・・・」というところに落ち着いている人が多いです。フリースクールの教育は今まで実践されてきた他の教育よりも難しいものだと思います。なぜならそこに通う子どもも通わす親も自らの時間や人生といったものを自らの判断と自発的な意志に基づいて決断して行動していかなければならないからです。
 
Q:創立された当初はSVSも少人数からスタートしたそうですが、今の様な大人数(210人)の方が子どもにとってよい経験が出来るのでしょうか?
 
ミムジー:多くの人が少人数の学校は大人数の学校に比べて子ども達に提供できるものが少ないのではないかと考えています。確かに賛否両論あります。非常に人数が少なく小規模ということで十分なものが得られなかったりするかもしれません。しかし一方で小さいからこそのメリットもあります。それぞれの子ども達が小規模の中ではとても深く自分自身のことを考え知ることが出来ることです。環境の違いで物質的物理的には各々違ったものが提供されますが、それはどれが優れているとか、劣っているとかではなく、単に違ったものが提供されていると解釈するしかないでしょう。
 創設期と現在とで子ども達の体験に違いがあるのは人数によるのではなく、むしろ時代の変化によるものだと思います。現代は30年前と比べて情報化社会となり、学校の内外を問わず子ども達に降りかかる情報の量が多く質的にも非常によくなっています。このことは生徒の人数には関係ありません。たくさんの子がいるといろんな事に目を配っていかなければなりませんが、人数が少ないと自分自身がどうするかを考え抜かなければなりません。2、3人とか極端に少ない場合は自分の社会性を違ったところで身につけていかなければならないことにはなるでしょうが。
 
Q:お話の中に「SVSは素晴らしいが、自分の子どもを通わすのはためらう親が多い」とありましたが、それは授業(クラスレッスン)が少ないからですか?
 
ミムジー:子ども自身が「この学校に入る」という決断を下していると親が思っていないからです。日本でもアメリカでも親の期待に沿った、あるいは自分の成績にあった学校に決めるというのが一般的です。これでは自己の確固たる判断に基づいて決めたのではありません。子ども自身が自分の教育はこの教育だと確信した上でSVSへ行くと決心し決断しているかどうかが分からない親は非常に不安です。しかしそれは言い換えれば、その親が自分の子にこの教育を受けさせたいという確固たる決断と決心ができていないということでしょう。でも、私には他の人の子どもをとやかくいうことはできません。その親が自分の子と長い時間を費やしているので、その子をよく分かっているのでしょうから。
 しかし、私が第3者として「まっくろくろすけ」の写真ブックを見ると、何百という教育的なものだとみなせることが行われています。親として子どもの長い成長にかかわっているそのプロセスにおいては、なかなかそういう見方が出来ないかも知れませんが・・・。また「まっくろくろすけ」で教育的なことが行われているといっても子ども達は教育的なことをしようと意図してやっているのではなく、自然にそうなっているのだと私には見えます。
 授業についてですが、SVSでは生徒の人数は多いしスタッフも多いので、授業がたくさん生まれ、常に行われていると思われがちですが、現実は違います。自分からスタッフに願い出て契約しながらクラスが開かれますが、そういう例は多くありません。子ども達の多くは授業にほんの少ししかでないか、あるいは全くでないというのが現状です。今年、私は数学のクラスを持っています。数学の定義を教える授業は非常に構成されたものです。それは少数の子にしか適さない興味を持ってもらえないものです。しかしライティング(書き方)のクラスは数学のように構成された授業ではありません。私はただクラスにいるだけで、勝手に物事が行われているといった感じです。教科によって教える人によって授業のスタイルは全く違ったものになります。子ども達は自分を教育する自分が成長していく上で授業はあまり重要性を持たないと考えています。なぜ授業が重要でないかはもっと説明することが出来ます。
 
Q:今の情報化時代では子どもがたくさんの情報を持っているとのことですが、その情報の多さが子どもの成長の妨げになっているのではないでしょうか?
 
ミムジー:そうは思いません。基本的に普通の子どもにとって妨げにはなっていないでしょう。何か障害がある子に関しては情報の多さが把握・理解していくのに邪魔になっているかも知れないが、私にはよくわかりません。情報から完壁に子どもを守ることは出来ません。この環境から離して、子どもを守れる環境へ移動しない限りは子どもの周りには非常に色々な知識がうごめいていました。そういったものから子どもを守ることは親には無理でしょう。
 9月11日テロにより飛行機が世界貿易センタービルに突っ込み爆破した時、学校でもテレビがついていて20人前後の子がCNNニュースをずっと見ていました。あといろんな子が出たり入ったりしながら見ていました。10歳以上の子が多く、様々なことを言いながら見ていました。時々もっと幼い子どもが入ってきました。私は幼い子どもがこのような映像を見ることに非常に気を遣いました。しかし、幼い子にも見る理由があったのです。8才の女の子は祖母がニューヨークに住んでいるからでした。他の子にも今この瞬間にこういうことが起こっていることを見る必要があるというきちんとした理由がそれぞれあるので、見にやってきていました。親の中には「一体どうなっているのだろう」と心配して学校へ様子を見に来る人もいましたし、連れて帰る人もいました。しかし私には「学校にいるのが今一番安全なのではないだろうか」と思わせる空気が学校にあると感じられました。特に学校で何かが行われていたわけではありません。いつものように一つのコミュニティとしてTVの映像を見ながら「ニューヨークでおこっている事は一体どういった事なのだろう、そしてどうなっていくのだろう」といろんな人が話をしていました。ただそういった状況でした。
 
Q:SVSのスタッフだったアラン・ホワイトから「アメリカは民主主義の国だが、上手く機能しているわけではない。自分の頭をつかって判断するのではなく、力の強い人やアピールの上手な政治家についていくだけ。そして問題や対立を話し合いでなく力で解決しようとするし、少数派の人を尊重しない。その原因の一つは教育にある普通の学校では民主主義を知識として習うだけで、学校生活は先輩に従うだけ。それでは民主主義を身につけることは出来ない。SVSでは知識としてではなく、日々体験として身につけている」と聞きました。
 それでは、今回のテロヘの報復としてアメリカが軍事行動を選んだ事に対して生徒の反応はどうですか?ニュースによるとアメリカの国民の90%近くが賛成と聞きましたが・・・。
 
ミムジー:皆それぞれ違った意見を持っています。SVSの子ども達は政治に強い関心を持っている子が多いです。しかしそれが一つに統合された同じ意見を持っているわけではありません。絶対に軍事行動はいけない、平和的な解決を模索する必要があると考えていて、アフガニスタンでさらに何人もの犠牲を出すことには反対な子もいます。一方で武力を使って仕返しするしかないという意見の子もいれば、どうしたらいいか分からないという子もいます。
 
Q:そのように色々な意見が出た場合にスタッフは否定も肯定もせずに聞くだけですか。価値判断はしませんか。
 
ミムジー:自分自身に強く確信する意見があったら言います。しかし自分の中でもはっきりしていない場合は言わないようにしています。道徳的なことはSVSにはないので、様々な意見も聞くし、自分の意見を躊躇して言わないこともありません。SVSにいる大人達は政治活動に熱心で確固たる意見を持っている人もいれば、とてもニュートラルな状態で自分にははっきりしたことが分からないので子ども達の意見を批判や批評しない人もいます。アメリカ国内で生活しているとあのテロ事件のショックは今もなお大きいものがあります。ショックを受けている真っ只中で、この事柄を話し合うのは難しいことです。
 
Q:同じくアランに「SVSの一部を取り入れた学校は多い。でもそれはSVSと全く違う。デモクラティックな環境で子ども達に育って欲しければ、全て同じやり方にしないとだめだ」と言われました。もう少し詳しく説明してください。
 
ミムジー:アランは白黒はっきりした物の見方をする人です。私はもう少し灰色もあるわといった見方をするタイプです。しかし彼の言ったことはこういうことだと思います。子ども達自身が本当に自分をコントロールできる、すなわち自分のことを考えながら目の前にある現実に対し自分なりの判断を下し対処していくには、結局SVSと完壁に同じ民主主義のやり方・システムにしなければなりません。そうしない限り子ども達にとって本当の自由を学ぶ機会にはなりません。単に授業を選べるだけで学校の運営や経済的な面には子ども達には判断する権限は与えないのでは、どこに民主的なやり方を学ぶチャンスがあるのでしょうか。
 しかし、私が思うにはそれなりに違いがあろうとも、子どもの成長過程としてはいろんなレベルの場所があるものなのではないでしょうか。いろいろな学校があります。例えば学校の予算を子どもが話し合って決めることにしている学校でも、「あそこの会議所を買おう」なんていう突拍子もない決定が出たら、大人達が認めないといった限界を設けているところもあります。
 「まっくろくろすけ」でも子ども達が自分達の予算をどう使うか決めていますが、活動場所は自分達のものではなく借りているところなので、そこの施設の制約があって全て自分達のやり方を押し通せるというわけにはいかないでしょう。これからもっと自分達と同じ教育思想を持った人に出会う、自分の子どもにこういう教育を受けさせるのがいいと思う人に出会って仲間を増やしていくことが「まっくろくろすけ」にとって必要でしょう。
 
Q:私も「まっくろくろすけ」の保護者の一人です。家庭で子どもにどういうことをしない様に気をつけたほうがいいのでしょうか?
 
ミムジー:これといって気をつけることはないと思います。何をしようが自分の心からやっているのなら何をやってもかまいません。しかし次のようなことはやってはいけません。子ども達の頭がどうだとかこの教育はあなたに合っているだとか子どものことを批判したり批評しないことです。大人は長い人生を送ってきたので子どもより多くの知識を持っているが、子どものことをあれこれ言う必要はありません。子ども扱いするのではなく、周りの大人と同じように話すことが子ども達を尊重していることにもなります。あなたが子どもを尊重していると相手に伝われば、子どもからあなたから知識やいろいろな事を学びたいと思うでしょう。例えば私が生け花について熟知していてよくいけているとしたら、興味のある子はやってくるでしょう。一般的に大人が知っていることややっていることに非常に興味を引かれれば子どもは食いついてきます。







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更新日: 2017年6月10日

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