日本財団 図書館


●卒設の基準
 (1)自分のやりたいことが外で見つかり、うれしい気持ちで出発するとき。(2)こことは合わないと感じたり、今は時期ではないと思ったとき。
●年代別目標
 [10代]人には一人ひとりのプロセスがあり、スタート時期は関係ありません。山登りをするときに頂上だけを見るのではなく、今、自分がどこに立っているのかが重要であるように、理想ではない自分をリアルに見ることが大切です。現在直面することに向かうことが何にもまして素晴らしいことです。[20代]上記と同じ。[30代]上記と同じ。
●施設における自立の定義
 自立と共生が大切であり、この2つが揃って初めて意味があります。共生なき自立は「カラスの勝手でしょ」であり、自立なき共生は「みんなで渡れば怖くない」になってしまいます。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 自分が苦労して自分の場を探し当てたとき、必要があれば紹介できる方々はたくさんいます。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 アルバイトはかまいませんが、できるだけプログラムの中で見つけられるようにしたい。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 一部有償を考えています。収入(建築、味噌作り、遊学舎の「八百屋」の店番、畑など)についても分配を考えています。
●教科学習の必要性とサポート体制
 生きていく力を養う場であり、勉強のための勉強はしません。自分の生活の中で勉強(大検など)したいということならば、協力しますし、サポートできる人を紹介します。
●在籍生の心理的サポート体制
 心理的サポートは大きなテーマでもあります。一方的なサポートは依存を生み出します。相互的な、開かれた安心感が大事だと思います。
●外部医療機関との連携
 近隣の精神科医と連携を取っています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 随時相談を受けます。本人の意思と親との間にズレがある場合には、あくまでも本人がどう生き方を見つけるかが重要であるため、親とぶつかることもあります。生き方をつきつめざるを得ないときには当たり前のプロセスではないでしょうか。
 
■スタッフに訊く・・・1
江刺家 せいこさん
●53歳 女性 正規スタッフ 勤続年数5年
●施設と関わるようになった理由
 設立当時からこの施設のことは知っていました。以前から関心があり、5年前に代表と出会って関わるようになりました。
●施設について
 人と人が出会い、リラックスできる場所にしたいと思っています。美麻の土地が持っているエネルギー、自然、山の恵みを活かしていけるかが最大のテーマです。
●在籍生の変化に気づくとき
 例えば、味覚の乏しかった子が「おいしい」と言うようになったときや、感情を表に出すようになったときです。
●在籍生との関わりで注意している点
 声の質、しぐさ、顔、体の表情をしっかりとキャッチすることです。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 人と関わっているとエネルギーがもらえ、自分のエネルギーとなるため、毎日が楽しいです。私のエネルギーの源は人と関わることですね。
●辛いと感じるとき
 抱え込みすぎるタイプなので、辛いことを人に表現することができないときです。
●施設での自分のポジション(役割)
 ポジションを考えてしまうと、自分が役割にとらわれやすいので、ポジションを考えないようにしています。
●施設の今後について
 自分も含めて、一人ひとりが命のままに生きていくことができる場と関係作りをしていきたいと思います。出会った瞬間にその人の命を受け入れられる関係、安心できる関係の持てる場所があちこちにできるといいですね。
●代表・その他のスタッフについて
 互いのわがままを受け入れあえる関係です。
 
■在籍生に訊く・・・1
●24歳 男性 在籍年数2ヶ月(5年前に2週間在籍)
 
●入寮する以前の状態と入寮のきっかけ
 高校1年のときに1週間で学校に行かなくなり、高校2年で中退し、その後1、2年の間家の中にいました。高校中退あたりから人と関わりを持たずに身近な人間(家族、従兄弟)との付き合いだけでした。たまにゲームセンターへ行ったり、買い物に出たりしましたが、ほとんど家の中ですごしていました。3ヶ所のフリースクールでの体験などを経て、現在は美麻遊学舎にいます。
●入寮当時の施設の印象
 5年前に初めて来たときには、寒い場所だなと感じました。以前の遊学舎の食堂には囲炉裏などがあり、とても良い雰囲気でした。
●現在施設で行っていること(作業・通学・勉強など)
 チェーンソー、丸のこ、まさかりでの薪割り、風呂沸かし、犬の散歩、ヤギの世話(乳搾り)、食事作りなどを行っています。
●施設で楽しいこと
 ここに来る前の2年間はほとんど家の中にこもっていましたので、その頃と比べると非常に楽しいです。
●施設で辛いこと
 対人恐怖が少しあります。薬を飲んでいますが、外の音が気になるときがあります。現在でも人と会うときには緊張してしまい、恐怖も感じます。
●入寮後自分の中で変化したこと
 だいたい毎日動けているなと感じます。薪割りも上手くできるようになって、チェーンソーも上手く使えるようになりました。
 ある日、すごく自然というものを感じました。それはきれいに並べて置いてあるものが一つの作品、芸術であることです。また、遊学舎の木は生の木であり、いろいろな種類の木、形(曲がっているもの、そうでないもの)、大きさが入り混じっているところがすばらしいと思いました。さらに、カマドの色(銅)がいい色だと思いました。
●今の目標
 体の調子を良くすることです。喧嘩などの経験もなく、「No」と言えたことがないので、「No」と言えるようになりたいです。それと自分のぺ一スを作れたらと思います。
 自宅にいたときは喜怒哀楽がほとんどなかったので、楽しいことを楽しめるように、それが感じられるようになりたいです。また、少しずつ人馴れをし、コミュニケーションが取れるようにしていきたいです。
●将来について
 “人馴れ”をしていきながらいろいろなバイトをやってみたいです。
●現在の施設の印象
 人の出入りが多いので、初めは緊張することもありますが、その人との関わりの中で成長できる場所です。
●他の在籍生との関係
 1ヶ月前まで2歳年上の女性がいました。マイペースな人でいろいろなものを作っていました。緊張しながらも一緒に作業ができました。
●親との関係
 家ではあまり会話をしなかったのですが、今では少しずつ話せるようになりました。5年前、父は非常に厳しく自分の考えを理解してくれませんでしたが、最近になって相談にのってくれたり、助言をくれるようになりました。母は感情を出す人で、家にいたときは反発していましたが、距離を置くようになって関係が良くなったと思います。
●代表・スタッフの方との関係
 5年前はあまり話さなかったのですが、当時よりは良い関係です。まだ少し緊張感があります。8年間ほとんど人と話をしていなかったので、そちらのほうは徐々にと思っています。
 
▼団体詳細
団体名称●美麻遊学塾(ミアサユウガクジュク)
代表者名●吉田 比登志(ヨシダ ヒトシ)
所在地●〒399−9101 長野県北安曇郡美麻村二重(キタアズミグンミアサムラフタエ)
電話番号●0261−29−2625 FAX●0261−29−2624
URL●無し E−MAIL●u−gakusha@mug.biglobe.ne.jp
設立年度●1982年 在籍生平均在籍年数●2年
入寮生数●男・・・1人 女・・・―人(平均年齢・・・24歳) 入寮定員●男女合わせて最大20人
通所生数●男・・・―人 女・・・―人(平均年齢・・・―歳) 通所定員●男・・・―人 女・・・―人
年齢制限●無し 性別制限●無し 相談業務●有り(無料) 家庭訪問●無し 親の会●無し 会報発行●無し
特記事項●入寮受入人数は男女合わせて最大20名。/年齢制限は基本的に設けていないが、入寮生活ができる年齢に達していること。
スタッフ状況●日中・・・女性スタッフは常時在中。夜間・・・共同生活なので夜間も対応。
スタッフ●正規・・・男1人・女1人/ボランティア・・・男―人・女―人/その他・・・男―人・女―人
 
▼通所費・入寮費
通所生●―
入寮生●月額負担金・・・90,000円。
※冬季暖房費別途。プログラム材料費別途。
 
▼生活
日課スケジュール●[午前]7:30・・・連絡事項(15分程度)。/その日のプログラム[午後]12:00・・・昼食(各自フリー)。自分の感覚で作ってもよいし、人と一緒に作って食べてもよい。/その日のプログラム。/夕方・・・ミーティング(体につかえていることを口に出す・感謝の言葉など)/夕食。
週末・休日●一日フリー。
食事●基本的にはここで取れた食材がべ一スとなる(味噌、醤油、米など)。他にも、飼っている鶏からとれる卵(現在2羽、今後15羽〜20羽を飼う予定)や鶏をさばくこともある。
清掃●個人の場所は個人で清掃。共同場所はみんなで清掃。
年間スケジュール●1月・・・おんべ(どんどん焼)/2月・・・クロスカントリースキー・雪中キャンプ/3月・・・味噌作り/4月・・・オリエンテーション・記念植樹・ぼかし堆肥・1週間キャンプ・土壌調査・苗作り・きのこコマ打ち/5月・・・田植え・畑・醤油絞り・もろみ作り・山菜取り/6月・・・畑・カヌー(水質検査、ゴミ拾い)/7月・・・畑・ロッククライミング・植樹/8月・・・天文・染職・服飾・音楽・太鼓・踊り・塩作りツアー/9月・・・祭噺子/10月・・・版画カレンダー制作・ロッククライミング・カヌー/11月・・・蕎麦打ち・服飾/12月・・・正月飾り作り・餅つき。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION