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■代表者に訊く
鈴木 由美子さん
●一期一会代表
●団体の特徴
 不登校やひきこもりに関心があって、何かできないかと思っていましたが、恩師が子供たちを自宅にお預かりして一緒に生活する中で教育しているのを知って、自分にもできそうだと思って6年前に始めました。ここはご覧の通り、駒ケ岳など南アルプスを眼前にひかえ、自然環境に恵まれています。そして、地域の人達も私のやっていることを好意的に受け止めてくれていて、子供に考古学の発掘調査の手伝いをさせてくれたりしています。最近村内に温泉もできて、魅力が一つ増えました。
 お預かりするお子さんたちは家族の一員として、身内として受け入れています。私はレストラン喫茶をやっていますので、昼間は一緒に手伝ってもらうことが多いです。みんなよくやってくれます。そして、私はその子たちにたっぷり愛情を注ぐように努めています。それができることが、家族に受け入れることの最大のメリットではないかと思っています。
 子供たちと共に生活していて思うのは、みんな来たときは鎧を着て、自分を守っているということです。私は子供たちにたくさん話しかけますが、何かの拍子に泣き出すことがあります。それはチャンスです。泣いてくれたとき、鎧を外して本音を言ってくれるようになるからです。休みの日にはよくドライブに行くんですが、それがいいみたいです。その時は面と向かうのではなくて、横に座る訳ですから、話しやすくなります。音楽を聴きながら、奇麗な景色を眺めていると、気持ちがくつろいで、心が開かれるのでしょう。我が家では時々行き先を決めないで、分かれ道に来たら「右!」とか「左!」とかやって、車で「あてのない旅」をすることがあります。これもいい効果を生むようです。
 最初はフリースペースとして通いでやってくる子だけだったんですが、親御さんから遠くて通えないから預かってもらえないかという依頼もあって、2年前から2週間を限度にお預かりしています。2週間で何ができるかということもあるんですが、自分の家族のことも考えて、そのくらいがちょうどいいと思っています。例えば、夫は気を遣うタイプなので預かった子にサービスをするから、長く一緒に生活していると、夫の方が疲れてしまうみたいなんです。家の子供たちは大丈夫です。子供たちは逆に、共同生活を通してずいぶん成長させてもらったように思います。私自身はというと、さっき言ったように、愛情を注ぐことが一番大切だと思っていますが、それもかなりエネルギーが必要です。お預かりする子供たちは総じて愛情不足です。それで、やっぱり長く一緒に生活していると、私自身も疲れてしまうことがあります。そんなわけで2週間ぐらいが限度かな、と考えています。その間に自分の親から離れてちょっと息抜きして、ちょっと心を癒す機会になればいいなと思っています。もしかしたら、その間に次のステップのきっかけができるかもしれないし。
 例えば、高校1年生の女の子は、ここにいる2週間の間に近くの乗馬クラブで馬に乗ることを習いました。始めはやる気がなかったけれど、すぐ馬が大好きになりました。そして、ここを出てからはその乗馬クラブに実習生として住み込んで6ヶ月研修を積みました。今では北海道の乗馬クラブで仕事をしています。
 1回の滞在で成果がでることは少ないかもしれませんが、ちょっとこっちへ来たくなったら、あるいは行き詰まったら小休止して、またこっちへ来るというように、寄宿を何回か繰り返すことも可能です。そうして長期に渡って繋がっていけば、成果が出る可能性は高まると思います。
 ところで、去年の冬休みに養護施設の小学校2年生と3年生を預かったことがあるんですが、驚いたことにその子たちはお年玉という言葉は知っていたけれど、実際にお年玉の袋を渡したら、「これなあに?」と聞いてきたんです。それがきっかけで、今年からそういう子供たちの短期里親にもなっています。
 中学生の軽はずみな性行動を知って私の方から中学校に行って、中学卒業の前に「親になるのがどんなに大変なことなのか」という話をさせてもらったこともあります。普段は突っ張っていた男の子が授業の後で「ぼく絶対に子供を困らすような親にならないよ」と保健の先生に言いに来たと、喜んでくれました。このように、フリースクールの方から学校へ働きかけることも大切なのではないかと思っています。
●卒設の基準
 この施設は基本的に一時預かり場所という性格が強いので、卒設というような言葉は当てはまりません。
●年代別目標
 義務教育の場合は学校に帰すことを第一に考えています。高校以上の場合は自分の生きていく道を見つけていけるようになることです。
●施設における自立の定義
 最長2週間の共同生活なので、小休止の場所であり、自立云々を言うのは若干難しいと思います。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 乗馬クラブに通ったのがきっかけで、そこで実習生となり、北海道の乗馬クラブに勤めている女の子がいます。他にも近くのスーパーで3ヶ月ほど勤めていた子もいます。施設に来た子の希望があれば出来る限りの支援はします。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 レストラン、スーパー、夫の電気工事の手伝い、考古学の発掘の手伝いなど、やりたければアルバイトは構いません。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 レストランの仕事は家族の一員としての手伝いなので無償ですが、外食費や遊興費の一部となります。スーパーの場合はそこでの規定によります。
●教科学習の必要性とサポート体制
 中学生までは教科書を持参してもらい、勉強を進めています。ここでの寄宿は全て授業日数として加算されることになっています。そして進路についての相談にも随時乗っています。
●在籍生の心理的サポート体制
 一にも二にも愛情を注ぐことが一番大切だと考えています。そして、中学生などは気負っていたり、つっぱっていたりしていることが多いので、気負わず本音で接し、付き合えるように気を配っています。
●外部医療機関との連携
 精神障害や知的障害をかかえている子を(それとは知らされずに)預かったことがありますが、いずれの場合も長続きしませんでした。自分の家族や仕事(レストラン経営)のことも考えると、お預かりしても同じように長続きしないのではないかと思っています。そのような障害がはっきりしている相談を受けたときは他の施設を紹介しています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 疲れ切っている親御さんへのケアは大切です。我が子が特殊だと思い込んでいることもあり、それを解きほぐすことは重要です。
 
▼団体詳細
団体名称●一期一会(イチゴイチエ)
代表者名●鈴木 由美子(スズキ ユミコ)
所在地●〒408−0306 山梨県北巨摩郡武川村山高570−4(キタコマグンタケカワムラヤマタカ)
電話番号●0551−26−2267 FAX●0551−26−2267
URL●無し E−MAIL●無し
設立年度●1996年 在籍生平均在籍年数●2週間
入寮生数●男・・・0人 女・・・0人(平均年齢・・・―歳) 入寮定員●男女合わせて4人まで
通所生数●男・・・―人 女・・・―人(平均年齢・・・―歳) 通所定員●男・・・―人 女・・・―人
年齢制限●無し 性別制限●無し 相談業務●有り(5,000円)家庭訪問●有り(20,000円/1回)
親の会●無し 会報発行●無し
特記事項●入寮生は男女合わせて4人まで。家庭訪問は訪問料と交通費を実費請求。
スタッフ状況●日中・・・代表とボランティアが対応。ボランティアは男女で10人前後。夜間・・・代表と同じ場所で宿泊する。
スタッフ●正規・・・男―人・女1人/ボランティア・・・男―人・女―人/その他・・・男―人・女―人
 
▼通所費・入寮費
通所生●負担金・・・1日・2,000円
入寮生●負担金・・・1日・3,000円
※一回の連続宿泊は最長2週間となっている。/乗馬クラブ参加費は別途。
 
▼生活
日課スケジュール●同居するようになった子によって個別にスケジュールを決めている。昼間はレストランの手伝いをして経験を養うことを勧めている。
週末・休日●月、火曜日がレストランの休みなので、その時はドライブなどに行くことが多い。
食事●食事は普通に1日3食取る。
清掃●離れが宿泊場所となっているが、そこは自分たちで掃除する。他の場所は代表の家族と一緒に掃除を行う。
年間スケジュール●1月・・・味噌作り/12月・・・クリスマスケーキ作り







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