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全国の個人船大工存在確認調査

 事業名 全国の個人船大工存在確認調査
 団体名 東海水産科学協会 海の博物館 注目度注目度5


調査結果の概要
■調査対象となった船大工と造船の可否の数
 今回、調査できた船大工数は255人であった。うち『造船できる』とするものは121人、『条件付で造船できる』ものは51人、『造船できない』ものは81人であった。(不明2人)
 
表−1 船大工調査数と造船可否数
実数 総数に占める割合
総調査船大工数 255人 100%
造船可能数 121人 47.4%
条件付で可能な数 51人 20%
造船不可能数 81人 31.8%
不明 2人 0.8%
 
 なお、前記「木造船に関する基礎調査」では、全国漁業協同組合へのアンケート発送件数は2820件、うち回答を得た組合数は1122(39.8%)であり、船大工がいるとして氏名などを回答された船大工の数は479人であった。本調査において、それら479人と重複している船大工は111人であった。
 
■全国で造船可能な船大工数の推定
 本調査では、造船可能な船大工数は121人、条件付で可能な数が51人、加えると172人となった。しかし、条件付で可能な船大工については現実には、補助船大工が要ったり、道具や材料の手配が必要だったり、実現性が薄いと考えられるので、ここでは現実に『造船できる』船大工のみを推定してみることとした。
a. 船大工(個人)の全国での存在数について
 「木造船に関する基礎調査」(日本財団:平成14年)において把握した船大工の数は479人であったが、これは全国漁業協同組合のうち約40%(39.8%)の回答によっている。とすれば、さらに残り60%を同率と仮定して1.5倍の船大工が加わることになり、全国で1197人の船大工がカウントされることになる。
 しかし、実地調査の印象からすれば、未回答漁協に回答漁協と比例して船大工数が存在するとは考えられない。多分、未回答の地区漁業協同組合の多くに船大工のすでに存在しない場合が多いと推定されるからである。
 そこで、調査担当者が悉皆に近く調査のできた新潟、千葉、三重、山口、沖縄の5県を調べてみると、下記の表のような違いになった。
 
表−2 船大工の数
(人)
  新潟 千葉 三重 山口 沖縄 合計
日本財団調査の数 8 16 11 16 4 55
本調査数 10 18 16 18 12 74(a)
倍数 1.25 1.13 1.45 1.13 3 1.34
造船可能な数 7 6 6 9 9 37(b)
割合 b÷a=50%
 
 沖縄の3倍を除くと三重の1.45倍が多く、合計しても1.34倍で、約34%増しである。現地調査の実感として、この程度ではないかと思うので、479人を1.34倍してみると641人となる。
b. 造船出来る船大工数について
 本調査の『造船できる』数121人は、全船大工255人の47.4%であったから、この割合を641人に当てはめると303人となる。上記、悉皆調査に近い県でも実際に造船の可能な船大工は50%であった。ただ、本調査は先に触れたように、『造船できる』船大工を出来る限り探す意識が強く働いているので、303人という数字は上限と考えていいだろう。
 しかし、現実には、その何割の船大工が造船可能であろうか。303人という数を多いと考えるか、少ないと考えるか、難しい状況にあるのは間違いない。
 なお、本調査において、「木造船に関する基礎調査」と重複して聞き取りした船大工数は111人であった。そこでこの111人を造船の可否で分類すると下記のようになる。
 
船大工数 造船可能数 条件付で可能な数 造船不可能
111人(100%) 62人(56%) 17人(15%) 32人(29%)
 
 日本財団調査の船大工数から単純比例で推定される1197人の56%だと670人となるが、もし平均すれば各県に14人ずつ造船可能船大工がいることになり、それは有りえない。
 
■船大工の地域別分布
 船大工の地域別分布については、表−3に見るように、長崎、鹿児島(含む、奄美)、広島、愛媛、岩手など、古くからの造船場だった所や漁業の盛んである所が多く、現在もそういう所に船大工が残っている。
 調査対象船大工数にかかわらず、その造船不可能数が多いのは、大都市周辺で、東京湾、伊勢湾、大阪湾、博多湾などにその傾向がはっきり出ている。
 それに対して造船可能な船大工の多いのは長崎、沖縄であるが、沿岸漁業とともにペーロン、ハーリーといった船競漕用の造船がつづいている所である。
 
■船大工の年齢と木造船の造船の可否について
 255人の船大工を『造船できる』『条件付で造船できる』『造船できない』に分けて、生年別に表にしたのが、表−4である。
 上表から船大工の年齢別の存在数と造船の可否について、大きな傾向が見て取れる。
 船大工の年齢層が大正15年=昭和元年から昭和9年生まれまでに多く、以降、漸減していき、昭和24、5年からは極小になっている。
 『造船できる』層では、昭和6年生まれをピークとした前後10年であるが、その層はだんだん『造船できない』層へ移行していく。昭和6年生まれは平成15年に71歳であり、この年齢層が現在の木造船の造船を支えていることがわかる。表には現れないが、『条件付で造船できる』人達の“条件”は、道具があれば、とか手伝ってくれる人がいればとかの理由で、後者の場合、体力に自信がない人が多い。したがって、昭和5年以前の生まれでは実際は造船は難しいと思われる人が多い。船大工たちには、また木造船を造ってみたいという意欲が強く、それが『条件付で造船できる』と表現されることが多い。しかし、現実には、その条件を調えるのはなかなか困難で、造船は不可能に近いと考えるべきた。
 さらに、『造船できる』と答えた船大工でも、テンマなら、磯船くらいなら、など小型の木造船に限定している人が多く、大型船とはいかないまでも1〜5トンくらいの漁船が建造できるかとなると数は半減するのではないだろうか。昭和21年から23、4年にかけて船大工が見られるのは、戦後のベビーブームを反映しているのではないか。かれらの父親が昭和元年〜9年生まれの層に当たっているのも理由かと思われる。これ以降にも、船大工といわれる若い年齢者がわずかにいるが、昭和40〜45年の間に、造船業では木造船からFRPへの大きな転換が図られたので、若い年齢者では木造船の経験がほとんどないか、独立して木造をやれるほど経験していない場合が多い。
 
表−3 調査県別一覧表
  日本財団調査 今回調査総数 造船可能者 条件付可能者 不可能数
北海道 北海道 22 9 2 2 3(☆2)
東北 青森 16 3 3 0 0
岩手 23 1 1 0 0
秋田 5 2
山形 1 1 1 0 0
宮城 6 1 1 0 0
福島 3 0 0 0 0
関東 茨城 8 1   1 0
新潟 8 10 7 2 1
千葉 16 18 6 6 6
東京 9 3(☆1) 1 0 2
神奈川 8 0 0 0 0
栃木 3 0 0 0 0
東海 静岡 4 8 4 1 3
愛知 8 4 0 1 3
岐阜 4 3 3 0 0
三重 11 16 6 5 5
北陸 富山 12 4 1 0 3
石川 6 3 2 1 0
福井 6 0 0 0 0
近畿 和歌山 21 5 2 1 2
滋賀 1 3 3 0 0
京都 4 5 4 0 1
大阪 5 0 0 0 0
兵庫 16 0 0 0 0
中国 鳥取 5 0 0 0 0
島根 17 11 5 3 3
山口 16 18 9 3 6
広島 27 12 5 4 3
岡山 12 5 3 2 0
四国 徳島 6 1 1 0 0
香川 5 2 2 0 0
愛媛 23 10 6 3 1
高知 10 0 0 0 0
九州 福岡 15 11 2 3 6
佐賀 8 7 1 0 7
長崎 32 28 17 3 8
大分 12 3 0 2 1
宮崎 17 4 3 1 0
熊本 18 15 3 3 9
鹿児島 24 16 8 3 5
沖縄 4 12 9 1 2
  合計 479 255 121 51 81
(単位:人)(☆1)は外国人、☆は不明、群馬、埼玉、奈良は未調査
 
表−4 年代別船大工分布一覧表
●印は船大工1人
  造船できる 条件つき 造船できない
M45   2
T1     1
2       0
3     1
4     1
5     1
6     1
7     1
8   ●●   2
9     ●● 2
10 ●●   ●● 4
11 ●●   ●●● 5
12 ●● ●●● 6
13   ●●● ●●● 6
14 ●● ●● 5
T15・S1 ●●●● ●●●● ●●●●● 13
S2 ●● ●●●●●● 9
3 ●●● ●● ●●●●● 10
4 ●●●●● ●●●● ●●●●● 14
5 ●●●●●●● ●● ●●●●● 14
6 ●●●●●●●●●●●●● ●●● 17
7 ●●●●●●●●● ●●●● ●●●●● 18
8 ●●●●●●● ●●●●● ●● 14
9 ●●●● ●● ●●● 9
10 ●●   ●● 4
11 ●●●●   5
12 ●●●   ●●● 6
13 ●●● ●●   5
14 ●●●●● 7
15 ●● ●● 5
16 ●●     2
17 ●●●●●   ●● 7
18   ●● 3
19 ●● ●●   5
20     1
21 ●●● ●●   5
22 ●●●●●     5
23 ●●● ●●   5
24 ●●   ●● 4
25 ●●   ●● 4
26 ●●   3
27     1
28     1
29 ●●   3
30   2
31   2
32       0
33       0
34       0
35 ●●     2
36       0
37       0
38     1
39       0
40       0
41       0
42     1
☆総数は255人と含まれない。
 
 以上の結果から、現在、木造船の船大工は昭和一ケタ生まれ層で辛うじて造船可能な状態にあり、あと5年もすれば、造船不可能年齢に移行することは明らかで、わずかな若い年齢層は残るもののほぼ木造船造船の道は途絶えるだろう。
 わずかながら明治〜大正生まれで、今も木造船を造っている船大工がいる。その人たちの記憶にあり、腕におぼえのあるものは一隻でも多く造り残しておいてほしいものだ。







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更新日: 2019年4月20日

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