日本財団 図書館


(2)事業の概要
イ. 対象
 プログラムを実施する対象は、次の通りである。
・対象校:和泉市立緑ヶ丘小学校 5年生、4クラス(児童数:135名)
 
ロ. 実施期間と充当する総合的学習の時間
 平成14年度2学期〜3学期の期間を対象とし、毎週水曜日の総合的学習の時間2校時と、月もしくは火曜日の1校時に実施する。
 
ハ. 本年度の取り組みに期待する成果
 本プログラムの本格的実施は、我が国でも初めての先進的な取り組みであり、本年度の取り組みをパイロットプロジェクトとして位置づける。
 このため、今後の本格的な展開を視野に入れて、本年度の取り組みを通して、次のような成果を期待するものとする。
・実際の総合的学習の時間への適用を通した「総合的学習における交通・環境教育プログラム」の教材の確立と進め方の検証。
・一般化に向けた課題整理
・学習を通したCO2削減効果の検証
 
ニ. 実施体制
 本プログラムは、実施の場は学校と地域であるが、次のような理由から行政及び支援団体が全面的に支援して一体となって取り組むものとする(図III−1−3)。
 また、プログラムの各ステップの前には、学識経験者と教師で構成するWGを開催して充分な準備をすると共に、授業のアシストのために大学生の参加協力を得る。
・先進的な取り組みである本プログラムの一般化と拡大展開を図るために、教育、行政、及び研究機関が一体となって取り組む仕組みを構築する。
・学校と地域の協働学習を支援し、地域活動の活性化を図るために行政団体が支援する。
・プログラムの信頼性確保と精緻化のために、学識経験者とコンサルタントによる技術的支援を行う。
 
(拡大画面:90KB)
図III−1−3 プログラム推進の体制
 
(2)プログラムの内容
(1)プログラムの構成と概要
 
イ. プログラム作成の方針
 地球環境問題や交通問題という意識と私たちの日常の生活行動の繋がり、すなわちマクロな問題とミクロな日々の行動の繋がりが無理なく理解できるようなプログラム作りを行う。
 
(拡大画面:62KB)
図III−1−4 プログラム作成の視点関係
 
ロ. プログラムの構成
 まず、本年度実施したプログラムを整理する。本年度のプログラムは、その内容から大きく8つのステップで構成される(表III−1−1)。
 Step−1では、動機付けを求めるものである。学習を始める前に、その時の環境意識の測定を児童および小学5年生以上を対象に行った。次に、地球環境問題と交通問題とのかかわりについて、副読本とワークシートを用いて学習した。
 Step−2では、実態を把握する。CO2の排出構造を理解し、それを調べる方法について学習した。具体的には、1日の行動を日記に記録し、交通起源のCO2排出量を計算した。また、比較検討するために、1週間の電気・ガス消費量と自動車走行距離を記録し、CO2排出量を計算した。
 Step−3では、CO2排出量削減方法とそのための公共交通機関の利用方法を学習するために、社会見学を事例に行動プランを立てる作業を行った。作業は4〜5人のグループによりすすめた。
 ここまでが2学期に行ったプログラムである。ここまでで、CO2排出量削減のためのアプローチとして公共交通機関を利用することを学習したので、冬休み期間中の課題として、公共交通を利用した行動プランを立て、実際にそのプランに基づいた行動を体験するという課題が与えられた(写真III−1−1)。掲示された新聞には、目的地までの経路図や写真、使用したきっぷなど貼り付けられ、どの児童も熱心に調べて実際に行動したものと思われる。
 Step−4では、自動車利用の行動を省みて、自動車を可能な限り利用しない変更プランを作成することにより、CO2排出量を削減するための具体的な変更内容を立てた。
 Step−5では、Step−4での行動変容の実効性を確保するために、1週間の自動車利用予定行動を取り上げ、CO2排出量を可能な限り削減できる行動計画を立てた。
 Step−6では、再度、1日の交通行動を記録し、交通起源のCO2排出量を求め、Step−2での結果と比較することで、CO2排出量削減の努力を自己評価した。
 Step−7では、Step−6の結果から、意識面と行動面のフィードバックを行い、行動変容が一時的ではなく継続するための方法を考えた。
 最後であるStep−8は、半年間の学習成果をまとめ児童が発表する機会とした(写真III−1−2)。
 表2.1は、本年度のプログラム構成を示したものである。コマ数は正規の時間数で、別途に用意されている毎週1コマや他の時間の振替を含まない。
 さらに、子どもたちの作業支援を目的として、大学院生のチューターを各クラスに専属配置し、メインの学習時間に参加した。
 
表III−1−1 本年度のプログラム構成
Step 名称 概要 コマ数
Step−1 イントロダクション (1)環境意識の測定 2コマ
(2)交通・環境問題の現状と原因の理解 2コマ
Step−2 現況カルテ (1)CO2排出構造の理解 2コマ
(2)交通ダイアリーの理解と記入 4コマ
(3)現況カルテの理解と記入 2コマ
(4)交通行動に占めるCO2排出量の理解 2コマ
Step−3 CO2削減方法の検討 (1)社会見学を事例とした削減方法の検討 4コマ
(2)個人票による削減方法の検討 2コマ
Step−4 診断カルテ (1)交通行動を省みて、CO2削減方法を検討 2コマ
(2)診断カルテの作成 2コマ
Step−5 行動プラン (1)行動プランの作成 2コマ
Step−6 CO2削減努力評価 (1)CO2削減努力の評価 2コマ
Step−7 行動持続方法の検討 (1)行動持続方法の検討 1コマ
Step−8 発表会 (1)準備 3コマ
(2)発表会 1コマ
合計 33コマ
※コマ数は、1授業時間毎に1コマとおく(1回のプログラムは2コマ)。
※定期授業(水曜日)以外の取り組みコマ数は含まない。
 
写真III−1−1 冬休み期間中の課題 発表新聞(一部)
 
写真III−1−2 報告会の様子







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION