日本財団 図書館


参考8. 運行形態に関する用語、略語の解説
 出典は全て「イミダス2003年版」による。
 
コミュニティバス(Community Bus)
 需要が小規模で採算がとれないため、従来の路線バスではカバーしきれない地域や、交通空白地域で運行されているバス。1995年頃から全国各地に広がり、利便性の高い乗り物として定着しつつあるが、計画が不十分なために利用客が少なく、大赤字に陥っている路線も少なくない。
 運行システムの特徴は、停留所間隔ができるだけ短くされ、車両も小型やノンステップのものなどが用いられていることで、高齢者・障害者などにも利用しやすい。運行計画をバス会社に任せていた従来型とは異なり、地方自治体が主体的に計画して財政を投入したバスでもある。
 
DRT(Demand-Responsive Transport)
 需要に応じて相乗りによる個別化された交通を供給するサービスで、比較的小型の車両(定員4〜20名)を用いた柔軟な経路作成、時刻表作成により特徴付けられる。
 このTRB(1996)の定義では、パラトランジットの部分集合であるが、パラトランジットに含まれる、従来の一般タクシーや、車の相乗り、bicyclingは含まれないものとされる。
 EUのSAMPO(高度公共交通運行管理システム)プロジェクトにおいては、Demand Responsive Transport(需要応答型交通)とは、個別輸送機関(タクシー)と既存の乗合輸送機関(バス)との中間的な形態の公共交通システムを指しており、アメリカにおけるパラトランジットと同様の概念であるとされている。なお、このプロジェクトにおいては、相乗りでない一般のタクシーはDRTの概念に含まれないものとされている。
 
デマンドバス(Demand Bus)
 需要に応じて路線やルート、停留所を柔軟に変更するバスのこと。1970年代にアメリカやヨーロッパの各地で運行された、予約電話などで呼び出すと自宅等まげで迎えにくるバス。便利だが高コストで、いつのまにかカナダやアメリカでは高齢者・障害者の利用を中心としたパラトランジットに変わってしまったようである。日本と外国での用語の概念が若干違うようになっている。地域特性にあわせ、迂回型、ピックアップ型、完全型などが考えられるが、日本では主に迂回型の路線バスを指している。日本では東急コーチが先例としてあった。現在は東急トランセ(東京)で行われている。また、途上国を中心にパラトランジットとしてのジープニーなどの例がある。
 
フレックスバス(Flex Bus) 注:
 経済的な負担の多い高齢者・障害者専用のSTサービスの需要を下げることと一般のバスに乗れない人の利用を目的として、1990年代後半のスウェーデンで開発されたタクシーとバスの中間的な交通。フィンランド、アイルランドなど、EUの共同研究が進められている。一種のデマンドバスだが、システムは予約方式(2時間前から15分前まで)で、150m以内の歩行ができる高齢者などを対象とし、ミーティングポイント方式(一種のバス停留所)で乗降する。車両にはノンステップの完全にアクセシブルなミニバス(12〜14人乗り)を用い、郊外住宅地からショッピングセンターと大病院間を4台のバスで結び、出発時刻を決めて30分あるいは60分おきに出発する。日本では、2002年10月に秋田県鷹巣町が初めて実験に取り組んだ。
 
注:フレキシブルな運行をするバス。
 
スペシャル・トランスポート・サービス(STサービス;STS)
 バスやコミュニティバスなどの既存の公共交通を利用できない移動困難者に対して、特別に仕立てたリフト付バンやタクシーなどの車両により、組織的にサービスを提供する公共交通の一種。(1)自由目的利用のドア・ツー・ドアサービスと、(2)通所型施設への送迎サービスがある。
 (1)は行政・社会福祉協議会やボランティア団体などが直営あるいは委託運行するのが一般的で、日本は欧米に比べ未発達である。(2)には厚生部局の授産施設や高齢者住宅サービスセンター、養護学校の送迎などがある。将来は(1)をいかに強化するかが最大の課題である。
 
移送サービス
 移動困難な高齢者・障害者に対して、非営利の組織が会員制などにより自宅から目的地までなどの送迎サービスを提供するシステム。ビジネスとしては成り立ちにくい部分を担っている。ボランティア団体、NPO、社会福祉協議会等の非営利団体がサービスを提供し、自治体や助成団体の財源をもとに、できるだけ利用者の負担を抑える運賃設定がされている。欧米では、公共交通の運賃より2倍を超えない範囲などと決めている例もある。欧米ではすでに運輸系厚生系の二つの分野でサービスが提供され、日本をはるかに上回る規模で運行している。介護タクシーも含め、行政がこれらのサービスをどのように位置付けるかといった抜本的な計画が不可欠である。
 
介護タクシー(ケア付きタクシー)
 移動困難者を対象に、ホームヘルパーの2級を取得した介護ドライバーが運転し、サービスを提供するタクシー。2000年4月からスタートした介護保険の身体介護と移送を結びつけたものでもある。運賃は自宅のベッドからタクシーまでと日的地のタクシーから病院の窓口まで等で、ヘルパーによる身体介護として30分2100円(本人負担210円)が支払われる。しかし、タクシーでの移動自体が保険の対象外となる。このようなシステムは未完成で、今後社会システムとして定着するまでにはかなりの変化が起こりうる。
 
注:サービス内容は平成14年度現在。運賃とは利用者が負担する介護報酬。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION