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2.3.2 タクシー事業者B(O市・HEタクシー)
 
(1)事業所特性
運行拠点都市人口:62万人(平成14年3月31日現在)
保有車両台数:170台 登録運転者数:240名
 
 介護保険のスタートする2年前にスロープ付小型車両を導入。車種はファンカーゴとデミオあわせて9台。また、10年以上前からリフト付きのワゴン車を運行していた。
 
(2)介護関連事業
(1)利用状況
 平成13年3月から訪問介護サービスセンターを開始。平成14年10月現在の当該事業所のホームヘルパー有資格者は40人(内4人は1級、介護福祉士1人)ドライバー240人全体の約17%を占める。ホームヘルパー有資格者の指名ニーズは高く、介護保険の固定利用者は契約数で1,100人、毎月実質的に利用する人で500〜600人が約5,000回/月、介護保険の制度を利用しており、介護保険を利用していない人も1ヵ月100人が約1,500〜2,000回利用し、ホームヘルパーは不足している。ピーク時間帯は朝の通院時間帯で、予約が多く断ることもある。
(2)売上(単位数)
 片道1回を1単位(210点)として、介護タクシーは月5,000回で1,100万円程度の売り上げになる。
 
解説:介護保険(厚生労働省)の単位認定
 
 下図は介護タクシーとヘルパーステーションの移送を比較したものであるが、介護タクシーは移動時間に関係なく1トリップの乗降介助を1単位と認定されるのに対し、ヘルパーステーションによる移送は、移動時間が単位数となる。
 介護タクシーの単位認定については、平成14年度まで乗車・降車の介助行為につき身体介護の報酬(30分:210単位)が算定されていたが、平成15年度以降、「通院等のための乗車・降車の介助」を行った場合に1回100単位とする予定。
 
平成14年度まで
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平成15年度から(予定)
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 平成15年度以降の「介護タクシー」に関連する改正の枠組みは次のとおり。
(1)タクシー類似行為の禁止等道路運送法への留意
(2)要介護4と5の利用者に対し身体介護(30分未満2,310円)を適用可能
(3)通院の片道を1回と算定
(4)乗降車介助と乗降車前後の介助との別途請求の禁止
(5)移送は引き続き算定から除外
 
(3)タクシードライバーの賃金(人口62万の市内)
 介護保険関係の運行を担当するドライバーの月収は、平均月収(賞与を除く)約25万円より2〜3万円高い。
タクシードライバー25万円/月+ボーナス2〜3ヶ月
介護ドライバー25万円+2〜3万円+ボーナス2〜3ヶ月
(4)ドライバーの教育
 会社ではホームヘルパーの資格を取得するための講座の受講料負担、受講中の給与支払い等で資格の取得を奨励しているが、利用者に挨拶ができないドライバー等は社内選考で資格を取らせていない。今後は、タクシードライバーの経験のない人材でも、介護に向いている人は採用する可能性もある。
(5)サポート事業
 手待ち時間を利用して、利用者に代わって荷物の配達、薬の受け取り等を行うサポート事業を行っている。陸運支局への届け出が必要。料金体系が明確ならば業務内容は何でも構わない。
 
(3)まとめ
 介護タクシーの利用者にとってのメリットは大きい。例えば、一般のタクシーを使えば1時間以上かかるような地域からでも、210円(一部負担)の利用料負担で済む(平成14年度まで)。こうした利用ばかりだとタクシー会社には痛手だが、トータルでは短距離の利用もあるので帳尻は合っている。現状の介護報酬2,100円が2割カットになっても、タクシー会社は何とか採算は取れることが予想される。
 
2.3.3 タクシー事業者C(T市・TAタクシー)
 
(1)事業所特性
運行拠点都市人口:9万人(平成14年3月31日現在)
保有車両台数:13台
 
(2)介護関連事業
 他社が、車いすごと乗車できる軽福祉タクシーの運行を開始したため、自社にも問い合わせがあり、1台試験的に運行を開始した。人工透析の患者の利用が月、水、金曜日にあるものの、一般のタクシーが1台1ヵ月に約60万円の収入があるのに対し、軽福祉タクシーは15〜20万円/台/月と、必要経費を僅かに上回る程度の収入である。
 
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図2-18 軽福祉タクシー1台の利用件数
 
2.3.4 タクシー事業者D(O市・O交通)
 
(1)事業所特性
運行拠点都市人口:62万人(平成14年3月31日現在)
保有車両台数:440台 登録運転者数:750名(3社計)
 
 タクシーの新規事業展開の必要性から、介護保険を利用したタクシーの運行に取り組んでいる。グループ会社3社の介護保険利用者を統括する介護センターを設置し、3社からケアドライバーを派遣する方式。平成14年10月現在、現場に出ているドライバー(ヘルパー資格取得者)は52名(他に研修中10名)。介護福祉士の資格は4名が取得(サービス提供時間は月に450時間程度)。タクシー事業だけでは需要が頭打ちの状況において、介護タクシーの導入により、仕事が増える結果となった。しかも利用者に感謝されるため、会社にも活力が出てきた。
 
(2)介護関連事業
 介護保険を利用したサービスは5,000回弱/月。時間数にして2,500時間(1回の乗降介助を30分とする)に達する(介護福祉士は本来6名は必要な水準である)。介護保険の対象でない人の介護タクシーとしての利用はほとんどない。
 介護福祉士が利用者との契約、ケアマネージャーとの打ち合わせ、記録の保存を行っているが、約千人の利用者を全て訪問するのは無理がある。1日の運行(介護)計画は、3日前の夕方、又は2日前の朝に住所等を記した伝票が担当するドライバーに渡るようになっている。
 特殊対応は、例えば、1人ではベッド介助できない状態の人には、万能担架で対応するなど、現場で見て判断する方法をとっている。
 介護保険の対応により収益は若干上がっている。また、業務内容があらかじめ決まっている(利用者、行き先、内容など)ので、ドライバーにも安心感がある。
 
2.3.5 タクシー事業者E(T市・TOタクシー)
 
(1)事業所特性
運行拠点都市人口:33万人(平成14年3月31日現在)
保有車両台数:86台(内拠点都市に67台)
 
(2)介護関連事業
(1)支援費事業等への対応(予定)
 平成15年4月1日から実施される障害者福祉事業(支援費事業)に際し、サービス責任者1名、ヘルパー50〜60名の事業所として稼働させる予定。厚生労働省の法改正により、県単位の事業として実施予定。聴覚障害者の対応など、介護保険事業よりも難しい部分があり、県の養成講座(4日間研修)で4名が受講しており、今後も7名を派遣予定。
 移送だけでなく在宅の分野にも進出を予定しており、接遇教育に力を入れている。
(2)介護保険の利用
 2つの営業所で月間7,000回(運行地域の拠点都市だけで1ヵ月に5,700〜5,800回)の利用のサービスを提供している。契約者数は1,600人で、毎月利用する人は半数の800人程度。夜中の体位変換などの身辺介護は実際少ない(全体の5%程度)。
 ケアプランに組んだニーズについて、プラスαの需要(つまり、月に5回の利用が必要と言われている人が、6回目を利用したいと言った場合)が生じた場合は、その場で引き受けることはできない。ケアマネージャーに相談し、点数の残りを確認し、OKが出て初めてサービスを利用できる。需要が減ったときは請求をしないだけである。
 人材の確保については、2種免許のハードルが高く、困難。若くて体力のある人、女性などは確保できないので、タクシードライバーには2種免許を取得しやすくして欲しい。ホームヘルパー有資格者は45人(内1人は介護福祉士)で、ドライバー全体の約40%を占める。
 
(3)タクシー事業者の営業の仕組み
 車の台数が5台で新規免許取得ができる。1〜39台までは運行管理者(国家資格)を1名置けばよい。以後、車両台数40台ごとに1名の運行管理者が必要。運行管理者はドライバーに責任を持った職種といえる。運行管理者はこれまで届け出制だったがその後国家資格化した。そのための経過措置として、届け出制だった時代に届け出を済ませ、5年以上の経験があれば、そのまま国家資格の運行管理者と見なされる。整備管理者は車両に責任を持つ職種で、運行管理者との兼任も可能。
 タクシーの乗務員数は、休み等のローテーションを考慮すると、車の数の1.2倍が最低ラインである。
1人1車制:1.2倍
1車2人制:2.4倍
2車3人制:1.8倍
の人員が必要になる。
 乗務員の平均月収は23〜25万円程度。介護保険を導入すると26〜28万円になる。地方都市にとっては、介護保険は重要な収入になっている。







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