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2002年世界観光の速報値
2002年の世界観光:予測を上回る
(2003年1月27日発表)
 2002年の観光統計速報値に驚いた人は多いであろう。史上初めて国際観光客到着数が7億人を超え、悲観的な予測と危機に関する不安材料にもかかわらず3.1%の増加を達成した。観光は再び、その回復力を示したのである。
 
 世界中の公的情報源から世界観光機関(WTO)に報告された速報値データによると、世界全体で、昨年は約7億1,500万人の国際観光客到着数が記録された。これは、2001年よりも2,200万人も多く、多くの専門家が参考程度と見なしている「ミレニアム」の2000年に比べても1,900万人多い。
 
 2002年の速報値は世界の観光地図が大きく変動したことを物語っている。ヨーロッパは不動の1位の座にいるが、アジア・太平洋地域が米州から2位の座を奪った。アフリカ、中東方面への国際観光客到着数は世界平均をやや上回っているが、ベースとなる数字は未だに低い。
 
 ヨーロッパの各地域は2002年にはすべて増加した。スペイン、イタリア、ギリシャの地中海南部のヨーロッパは、世界マーケットシェアの20%以上を占め、わずか0.5ポイント差で西ヨーロッパを上回ってトップである。ドイツは2001年と同様である。ベネルクス諸国とオーストリアは微増し、イギリスは3%以上増加した。しかし、西ヨーロッパ全体の増加率は、平均を下回った。一方、中央・東ヨーロッパの国際観光客到着数は平均3.9%の伸びをみせた。不運な例外はポーランドとチェコで、5%減という深刻な落ち込みであった。
 
 アジア・太平洋地域においては1億3,000万人以上の国際観光客到着数が記録され、この地域を「将来の目的地」とみなす人が多い。北東アジアは他の地域を抜き12%の増加、続いて東南アジア(4%弱の増加)、オセアニア(1%増)、南アジア(2%増)である。数年前にWTOが、中国が香港、マカオと合わせて有望な観光地になると予測した通りに、すでにこれは現実のものとなりつつある。インドは6.6%減で低迷したが、イラン、モルジブ、スリランカは平均を大きく上回ったので、観光戦略が奏功しているといえよう。
 
 2002年がマイナス成長に終わった地域は米州だけであった。しかし、劇的な2001年からの減少を平均すれば、僅か1%以下に落ち着いた。北アメリカ(アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ)はカナダの活況を受けて、約7%減と悲惨であった2001年から0.4%増となった。北アメリカは現在においても約12%という世界マーケットシェアの相当部分を占めているが、これは1995年の14.6%に比べればかなり低い。カリブ海諸国は2年続けての減少で、しかも2001年の1.9%減に比べて3%減と大幅減少であった。これはおそらく、アメリカ合衆国における航空産業低迷の余波であろう。しかし南アメリカの国際観光客到着数の7%減に比べれば、まだましである。南アメリカは去年の5.1%減よりもさらに1.9%下った。米州の中での唯一の成長地域は中央アメリカだけであり、ここは約10%の伸びであったが、他の地域に比べてベースとなる数値が低い。
 
 9月11日シンドロームはまだ克服されていないが、マスコミが過大視しすぎる感もある。アメリカ合衆国のツーリズムは、経済が期待通りに進展し、大手航空会社と旅行社が慎重になって供給量を削減していなかったら、はるかに良好だったかもしれない。
 
 バリの悲劇は、インドネシアの観光統計に大きな影響は及ぼさなかった。しかし、国全体の2002年の国際観光客到着数は2.2%減であった。バリ島とインドネシア全土には世界中から多くの同情と支援が集まり、インドネシア政府も早急かつ効果的に対応したので、悪影響は長くは続かないと予測される。
 
 以上の事実を考察すると、テロの脅威よりも世界の経済状況が国際観光客到着数に及ぼす脅威の方がより深刻と言えよう。「戦争の脅威、爆撃映像、不正確な公的勧告等に関する情報量はかつてないほど膨大であるが、旅行者も経験を積み重ねている。」とWTO事務局長フランチェスコ・フランジアリ氏は語る。
 
 「戦争と観光は、火と水のように全く相容れない。」と事務局長は続ける。「軍事行動が回避できることを願っている。もしもの場合は、あらゆる資源を投入する。観光回復委員会は戦争の影響を和らげるのに最も重要な役割を果すだろう。」と、事務局長は湾岸戦争が世界観光に大きな打撃を与え、わずかに1.2%しか増加しなかった1991年冬の状況を思い出しながら語った。この時は、1992年には8.2%の増加を見せた。
 
 「現在の世界観光における最大の問題は不確実性である。」と、フランジアリ事務局長は言う。さらに、世界の経済状況は期待するほど早く改善しておらず、石油価格は高く、株式取引も底値状態である。しかし、観光業界は重大な構造変革にいち早く対応し、需給関係に新たに挑戦するであろう。
 
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