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ジープニー部門
 バスの運行はマニラ首都圏の一部地域に限られているが、ジープニーは幹線道路や支線道路の大部分を網羅している。中短距離の移動の場合、ジープニーが最も利用されている交通手段である。また、バス、LRT、MRT3の補助交通手段としても機能している。
 
 ジープニー部門は小規模事業者が圧倒的に多い。ジープニーの保有台数が5台以下の事業者が全体の約98%を占め、マニラ首都圏のジープニーの70%はそのような事業者によって保有されている。
 
ジープニー保有台数
 バス部門と同様に、ジープニーは民間部門によって運行されている。LTFRBの記録によれば、認可登録を受けたジープニーは約5万7,100である。ただし、マニラ首都圏で運行されている無認可のジープニーも考慮すると、約7万台になる。
 
 保有台数規模別にみると次のようになっている。
 
小規模事業者とは、バス保有台数が5台以下の事業者をいう。小規模事業者のジープニー平均保有台数はわずか1台とされている。
中規模事業者とは、保有台数が6〜20台の事業者をいう。中規模事業者の平均保有台数はジープニー9台である。
大規模事業者とは、ジープニー保有台数が20台以上の事業者をいう。大規模事業者の平均保有台数は83台である。
 
 事業体の形態別にみると、マニラ首都圏におけるジープニー事業者の99%は個人事業主(コロルムを含む)であり、ジープニーの総台数の92%を占める。ジープニーの総台数の7%を占めているのが協同組合である。平均保有台数は個人事業主で2台、共同組合で52台である。
 
 図3-1は、保有台数規模別および事業体の形態別のジープニー保有割合を示したものである。
 
Figure 3-1
 
 
ジープニー事業者
 ジープニーも民間部門が担っている。認可されたジープニーの台数はマニラ首都圏において約4万500台である。ジープニー事業者の97.53%は、小規模事業者である。事業者の80%は、ジープニーを1台しか保有していない。ジープニー事業者の社会経済的特徴を考慮すると、大気浄化法の車両に関する規定は、バス部門よりもジープニー部門に与える影響の方が大きくなる可能性が高い。
 
 ジープニー事業者は次のように分類することができる。
 
a. 事業体の形態別  
  個人事業主 99.42%
  パートナーシップ 0.10%
  企業体 0.25%
  協同組合 0.23%
 
b. 保有台数規模別  
  小規模(1〜5台) 97.53%
  中規模(6〜20台) 02.05%
  大規模(21台以上) 00.43%
 
ジープニー路線
 バス、ジープニーおよびタクシーの許認可申請の受付を一時停止する1994年の措置は、マニラ首都圏で運行するジープニーについては現在も有効である(運輸通信省省令94−795号および95−895号)。SM Fairviewとその周辺区域の10路線を除き、1994年以降、運輸通信省(DOTC)が新たに認可したジープニー路線はない。現在、実際に運行されているジープニー路線の数は410とされている。
 
ジープニーの運行面の特徴
 ジープニー部門の運行面の特徴は、マニラ首都圏の車両渋滞をよく表しているといえる。MMUTISによれば、ジープニーの平均運転速度は、起点から終点までの所要時間が長いほど低い。ジープニーは、一日13時間の営業で平均4往復している。
 
一日当たりの平均乗客数(推定)
 
1台当たりの平均定員数 18人
平均乗車率 64.6%
平均速度 9.4km/h
起点から終点までの平均所要時間 43分
平均走行距離 3km
平均往復数 4
稼働時間 13時間
稼働日数/週 5.5日
運転手の数 2人
営業日数 6日
 
分析・解釈・結論
 上記のデータ・情報は面接やその他の調査により得られたものだが、これによると、事業者の運行・整備の一般的な状況は保有台数規模が異なっても、バス業界と比較して大きな相違は見られない。それでも、大規模事業者を除き、ほとんどの車両は定期的な整備・修理を受けていない。これでは、長期的に見て車両の耐用性に悪影響を与える可能性が高い。この問題を複雑にしているのが、1台当たりの事業者収入は、保有台数規模に関係なく一定であるという事実である。大規模事業者が定期的な整備・修理を実施できていることを考慮すると、中小の事業者ができない理由はないように思える。
 
 ただし、この現状の理由は、面接その他の調査により得られたジープニー事業者の社会経済的なデータで(限られているものの)、説明できるかもしれない。次に示すのは、その限られた社会経済的なデータにより、ジープニー事業者の運行・整備の状況を分析したものであり、その分析から引き出される可能性や結論も交えている。
 
a. 大規模事業者の社会経済的特徴を見てみると、ジープニー事業が事業者の主な収入源や生活の糧となっていることがわかる。他の収入源がないことから、保有する車両の耐用性を確保しようとするはずである。したがって、大規模事業者は、保有車両の整備・修理を定期的に行うと考えられる。
 
b. 中小の事業者のほとんどは、ジープニー事業の他に収入源があるとされている。このような中小の事業者が保有車両に必要な定期的整備・修理を行わない理由は、単に経営上の怠慢かもしれない。他の収入源からの収入が見込めることから、定期的な整備・修理の必要性を当然のこととして捉えている事業者もあるからである。
 
c. 小規模事業者は、ジープニー事業以外の収入源がないとされているので、車両の耐用性を確保するために、定期的な整備・修理を行うことが不可欠である。
 
 小規模事業者が車両の整備・修理を行っているのは、バス業界とは異なり、コストを削減して利益を追求するというよりも、ジープニー業界における特定の要因・条件の結果である、ということが上記の分析から示唆される。
 
FXとタクシー
 Tamaraw FXを巡っては、乗合タクシーあるいはエアコン付きジープニーとして1994年に運行が開始されてから、1999年に合法化されるまで、賛否両論が交わされていた。「FX」とは、定員が7〜11名のエアコン付き公共交通車両のくだけた言い方である。当初は、高級なタクシーとして導入されたが、現在ではメガタクシーとして運行されている。1997年10月時点では、1万3,400台がマニラ首都圏を運行していた(1999年のMMUTIS最終報告書)。現在では、ジープニーからメガタクシーへの移行が進み、その台数も増えている。そのことは、陸運局(LTO)に登録するジープニーの台数が1996年から2000年までの間に減少していること、ジープニーの製造業が縮小していることにも現れている。
 
 この現象は、イノベーションや企業家精神の現れといえる。利便性・安全性が高い乗り物に、人々は高い料金を払う用意・余裕があることの証でもある。料金は距離やアクセス方法により異なるが、10〜50ペソである。
 
都市鉄道
 予算の許す限りできるだけ都市鉄道線を整備して、マニラ首都圏の大量輸送機関の中心とするのが政府の方針である。したがって、運輸通信省の鉄道マスタープランは実施されるし、本調査のためにも、予定通りに実施されると考えられる。これと平行して、需要マネジメントと大量輸送鉄道の利用促進を目的とした政策措置を実施する取り組みも成功すると思われる。
 
 表5−1は、運輸通信省の鉄道計画スケジュールと計画輸送能力、図5−2は鉄道網を示したものである。







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