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●情報収集事業
調査団名:アジア・大洋州G班
対象国:スリランカ
調査分野:船舶
調査期間(日数):14.2.27〜3.7(9)
 
【調査の概要】 浚渫船建造計画
 
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 スリランカはインド亜大陸の南東に位置する総面積65,690km2の北海道を一廻り小さくした程の島国である。漁業は約10万人の漁民によって年間約30万tにおよぶ漁獲高を挙げ、国民に対する安価で貴重な蛋白質の供給源となっている。
 漁業活動においては生産、流通の両面で、その基盤となる漁港の整備、維持が重要であり、同国では漁業省(Ministry of Fishery)管轄下のセイロン漁港公社(Ceylon Fishery Harbour Corporation、以下CFHCと略称)が全ての漁港の維持管理を行っている。現在、CFHCは主要な漁港12港(主に島南西部に偏在)を維持しているが、スリランカの海岸は所謂遠浅の海浜が続く、世界有数の漂砂海岸と言われているように、これら漁港の大部分が漂砂により埋まりつつあり、除去整備が急務である。
 昭和62年度の無償資金協力により我が国からホッパー容量200m3のグラブ式自航浚渫船1隻が漁港維持浚渫のため供与され、以来多大な貢献を果たして来たが、昨年5月にヒッカドウ漁港から出港の折、モンスーンが吹き荒れ、そのため同船は航路端の岩礁に乗り上げ座礁、稼働不能の状態に陥っている。このような状況を改善するために、スリランカ政府は無償資金協力により損傷した浚渫船の修理を行いたいとしている。又、現在セイロン島南部では新たに5ヶ所、漁港を建設中であり、さらに永年に亘るスリランカ政府とLTTE(the Liberation Tigers of Tamil Eelam)の民族闘争の拠点で豊饒な漁場を持つ北部の漁港を、先頃、停戦合意に達した政情の変化を受けて早急に整備を行い再開したいとの強い意向がある。今後、不足が予測される浚渫能力を高めるために、新規に浚渫船1隻の建造を希望しているものである。現在は、同国の港湾維持管理は商港は港湾局(Colombo Port Authority)、漁港はCFHCと完全な縦割り行政であるが、昨年末の政権交替以降、これらの機能を一元化しようとの動きもあると聞く。同国の港湾管理が統合されれば浚渫船の使用範囲も一段と拡がり、新船建造への期待も一層高まるであろう。
 海難損傷した浚渫船は現在、コロンボの南方約55kmのべルワラ漁港に繋留され修理を待っている。損傷は両舷ボイド・タンク(浮力を付与するための空所)の船底部、右舷の舵、推進器及び軸系に集中しており入渠修理が必要である。しかし、ボイドの状況は船体内部から判断出来るが、舵・推進器などは、潜水夫の目視報告によるもので余り正確な情報とは言えないため早急に入渠させ、水線下の損傷状況を詳しく検査することが急務である。
 船底一部分の鋼材は切替の要があり総量約13トンと推定した、又推進器はCFHCが予備品を保有しており推進軸系に重大な損傷が無ければ、工期約3週間、費用1,500万円程度で修理可能と判断した。工事はコロンボにあるColombo Dockyardで全く問題なく施工出来ると考える。費用処理についてスリランカ側は当初、無償資金協力により実施したいとの意向であったが漁港を取り巻く環境は一段と厳しく、時でも早く浚渫を再開しなければならぬ状況にあり、在スリランカ日本大使館とスリランカ大蔵省のERD(External Resources Department)Japan Deskとの間でCounter−Part Fundをやり繰りして手当を行うことで話しが固まりつつある。
 一方、新船供与に関しては北部の漁港再開を視野に入れた要望でありCFHCでは現在要請書の準備をしているところであるが、期待する浚渫船のイメージは確定しているものの何故その船が必要なのかの説明が曖昧である。推定浚渫必要土量等を調査し、要請内容を明確化した上で緊急性をPRすることが肝要と思料する。
 
ベルワラ漁港に繋留している海難船M.S. "RUHUNUPUTHA"
  







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