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 7. 課題の整理 
7.1 廃棄物等の島内での処理に関する問題点 
(1)島内に廃棄物処理業者が少ない。 
(2)リサイクル製品の販売先がない。 
(3)慣習による不適切な廃棄物の処理が行われている。(野焼き、退蔵等) 
(4)島内の処理に関わる業者の横の連絡がない。 
  
(1)島内に廃棄物処理業者が少ない 
 離島は市場が小さく、産業廃棄物処理業者が少ない。そのため島内での処理が困難であり、島外へ搬出、処理する必要がある。 
 島外へ搬出する分、海上輸送コストが余分にかかるため、排出者の負担が大きくなる。また、使用済み自動車の退蔵といった問題につながっていく。 
  
(2)リサイクル製品の販売先がない 
 産業廃棄物のうち木くず、建設廃材のリサイクルが行われているが、市場が小さいためリサイクル製品の利用者が少ないのが現状である。 
  
(3)慣習による不適切な廃棄物の処理が行われている(野焼き、退蔵等) 
 廃棄物を自宅敷地内で処理してきた経緯があり、コストのかかる廃棄物の適正処理を敬遠する住民がいる。 
 このため、一般廃棄物の焼却(野焼き)、使用済自動車の不法投棄・退蔵、廃船の退蔵といった状況が発生している。 
  
(4)島内の処理に関わる業者の横の連絡がない 
 島内の処理に関わる業者は、個別に業務を展開、競争し、横の連絡がないため、行政と連携した取り組みが難しい。 
 また、法規制の強化の下で、技術力、人材の質の向上が求められているが、離島の関連業界としての取り組みはない。 
  
(1)集積ヤードから港湾までの陸上輸送コストがかかる。 
(2)港湾における人、一般貨物、廃棄物等の混在。 
(3)港湾における仮置ヤードの不足。 
(4)港湾における仮置時の景観、飛散等の問題。 
(5)工夫しないと海上輸送コストが高くなる。 
(6)廃棄物等の運賃負担能力が小さく、輸送業者の負担が大きい。 
(7)島内の輸送に関わる業者の横の連絡がない。 
  
(1)集積ヤードから港湾までの陸上輸送コストがかかる 
 離島から発生する廃棄物は、人口に対応して少量であるが、生活に対応して多品種である。海上輸送をする場合、ある程度まとまった量を輸送しなければならず、月単位で廃棄物等を保管する集積ヤードの整備が不可欠である。 
 現状では、内陸部に集積ヤードを整備していることから、港湾までの陸上輸送コストがかかっている状況である。 
  
(2)港湾における人、一般貨物、廃棄物等の混在 
 港湾は、離島の玄関口であり、離島を発着するほとんどの旅客・貨物輸送に利用されている。廃棄物等も例外でなく、島外へ搬出する場合は港湾から海上輸送することになる。 
 そのため、玄関口において旅客・一般貨物、廃棄物等が混在することになり、廃棄物等の分離が望まれている。 
  
(3)港湾における仮置ヤードの不足 
 海上輸送する場合、気象、海象、受入側の事情等により運航スケジュールの変更がある。そのため、港湾内に廃棄物等を短期保管できる場所があることが望ましい。 
 現状では、資源ごみ、有価物といえども、港湾内での取り扱いに観光客・一般市民等からクレームが付くことがある。離島の玄関口にふさわしい仮置ヤードが必要である。 
  
(4)港湾における仮置時の景観、飛散等の問題 
 離島において廃棄物等を搬出する場合、港湾での仮置きはやむをえないことがある。その場合、港湾は観光客の玄関口であり、住民が近隣に住んでいることを忘れてはならない。 
廃棄物等は見栄えが良くない場合が多く、種類によっては臭気、飛散などの恐れがあり、観光客や近隣の住民にとっては歓迎できない貨物である。実際、港湾にてガレキ類を短期保管していた際、観光客・一般市民等からクレームが付き、撤去することがあった。 
 離島の玄関口である港湾において廃棄物等を仮置きする場合、景観、臭気等に配慮するためユニット化する必要がある。 
  
(5)工夫しないと海上輸送コストが高くなる 
 離島の廃棄物処理は、海上輸送コストがかかる分高くなり、排出者、島内処理業者の負担が大きくなると言われている。 
 廃家電収集運搬料金を比較すると、ほとんどの場合本土の方が安くなっているが、壱岐だけは状況が異なっている。壱岐については、本土に遜色がないばかりか、「テレビ」「エアコン」では本土よりも安くなっている。これは、「本土からの距離が近い」こととともに、「島内住民、収集運搬業者、行政の努力」により達成された料金である。 
 「本土からの距離」は変えようがないが、少しでも効率の良い輸送方法を検討し、コスト低減に努める必要がある。 
  
表−7.2.1 廃家電収集運搬料金の比較(平成14年4月) 
 
| (単位:円) | 
 
 
 
 
| 地域 | 
テレビ | 
エアコン | 
冷蔵庫 | 
洗濯機 | 
 
 
| 本土 | 
1,365 | 
1,575 | 
1,890 | 
1,470 | 
 
 
| 上五島 | 
2,520 | 
2,835 | 
4,725 | 
3,150 | 
 
 
| 下五島 | 
2,520 | 
2,835 | 
4,410 | 
3,045 | 
 
 
| 壱岐 | 
945 | 
1,470 | 
2,520 | 
1,575 | 
 
 
| 対馬 | 
3,200 | 
3,500 | 
4,350 | 
3,300 | 
 
 
 | 
 
 
 | 
 
 
| 資料: | 
長崎県 廃棄物・リサイクル対策課資料 | 
 
 
  
(6)廃棄物等の運賃負担能力が小さく、輸送業者の負担が大きい 
 廃棄物等の輸送は、排出者だけでなく、輸送業者にとっても負担が大きい。 
廃棄物等の輸送は、一般貨物以上に安全に気を配らなければならず、その分手間とコストがかかってしまう。しかし、廃棄物等の輸送運賃は、一般貨物の運賃より安い場合があり(一般貨物輸送コストの1/3程度の場合がある)、輸送業者は一般貨物の帰り荷とするなどの工夫により、ビジネスとして成立させている。 
 一般貨物用コンテナは顧客満足度を高めるため雨水等が入らない有蓋コンテナを使用する傾向にあるが、廃棄物を扱う場合は出し入れしにくくなり、手間がかかる。廃棄物の取り扱いに適した専用容器を開発するには、非常にコストがかかる。また、あまり特殊な容器(ビンを輸送する容器等)を作成すると、一般貨物を積めなくなってしまう。 
  
(7)島内の輸送に関わる業者の横の連絡がない 
 島内の輸送に関わる業者は、個別に業務を展開、競争しており、横の連絡がないため、行政と連携した取り組みが難しい。 
  
(1)漂着物への対応。 
(2)FRP廃船の処理。 
(3)木くずのリサイクル。 
(4)一般廃棄物焼却灰のリサイクル。 
(5)斃死魚の処理。 
  
(1)漂着物への対応 
 離島は、海岸線が長く、国内・海外各地から発生する漂着ごみが流れ着く。 
 人家に近い海岸ではある程度市町村、住民等で対応しているが、トラックが近寄れない海岸では対応できない。また、処理に多大な手間・コストを要し、市町村の負担が厳しい状況である。 
  
(2)FRP廃船の処理 
 港湾、漁港、海岸等にFRP、木製の廃船が増えつつある。所在、発生量の把握が困難であり、処理・リサイクルの仕組みも現在検討されつつある。 
  
(3)木くずのリサイクル 
 壱岐、対馬では、木くずのリサイクルが行われている。しかし、リサイクル量は多くなく、リサイクル製品の販売先も確保できていない状況である。 
  
(4)一般廃棄物焼却灰のリサイクル 
(1)一般破棄物焼却灰のリサイクル状況 
 対馬・五島において、焼却灰のスラグ化が行われている。対馬では、広域処理施設に焼却灰を溶融スラグ化する施設がある。スラグの利用方法としては、アスファルト材へ混ぜるなど、建設資材としての利用を検討している。上五島では、広域処理施設に焼却灰を溶融スラグ化する施設がある。スラグの利用方法は、現在検討中である。下五島では、福江市に溶融スラグ化施設がある。福江市だけでなく、他町から排出される焼却灰についても、福江市の施設でスラグ化することを検討している。 
 壱岐にはスラグ化施設はなく、島外搬出ならびに島内管理型処分場へ埋立が行われている。 
(2)各地の焼却灰溶融スラグの利用状況 
 焼却灰の溶融スラグ化は全国各地で行われており、溶融スラグもアスファルト舗装骨材等、建設資材として再利用されている。しかし、リサイクル量に需要量が追いつかず、溶融スラグが山積みとなっている場合が多い。 
  
(5)斃死魚の処理 
 対象離島では、養殖漁業が行われている。養殖漁業では、病死、事故死した養殖魚(斃死魚)が発生するが、処理が困難となっている。斃死魚は事業系一般廃棄物となることから、一般廃棄物の焼却施設が利用されるが、水分、塩分を含んでいるため、焼却施設の寿命を縮めることとなる。 
  
 本調査では、「壱岐・対馬・五島における廃棄物等の効率的な処理・輸送を行える『離島廃棄物処理モデル』を提案すること」を目的としている。そのため、「廃棄物等の効率的な処理・輸送」により、現状を改善する可能性のある問題点を、本調査で検討する課題とする。 
 本調査で検討する問題点は、「島内の処理に関わる業者の横の連絡がない」「集積ヤードから港湾までの陸上輸送コストがかかる」「港湾における人、一般貨物、廃棄物等の混在」「港湾における仮置ヤードの不足」「港湾における仮置時の景観、飛散等の問題」「工夫しないと海上輸送コストが高くなる」「廃棄物等の運賃負担能力が小さく、輸送業者の負担が大きい」「島内の輸送に関わる業者の横の連絡がない」の8点とする。 
  
表−7.4.1 本調査で検討する問題点の整理 
 
| 問題点 | 
具体的な提案を 
する問題点 | 
今後関係者による検討が 
必要な問題点 | 
 
 
廃棄物の島内での 
処理 に関する問題点 | 
(1)島内に廃棄物処理業者が少ない | 
  | 
  | 
 
 
| (2)リサイクル製品の販売先がない | 
  | 
  | 
 
 
| (3)慣習による不適切な廃棄物の処理(野焼き、退蔵等) | 
  | 
○ | 
 
 
| (4)島内の処理に関わる業者の横の連絡がない | 
○ | 
  | 
 
 
廃棄物の島外への 
搬出に関する問題点 | 
(1)集積ヤードから港湾までの陸上輸送コストがかかる | 
○ | 
  | 
 
 
| (2)港湾における人、一般貨物、廃棄物等の混在 | 
○ | 
  | 
 
 
| (3)港湾における仮置ヤードの不足 | 
○ | 
  | 
 
 
| (4)港湾における仮置時の景観、飛散等の問題 | 
○ | 
  | 
 
 
| (5)工夫しないと海上輸送コストが高くなる | 
○ | 
  | 
 
 
| (6)廃棄物等の運賃負担能力が小さく、輸送業者の負担が大きい | 
○ | 
  | 
 
 
| (7)島内の輸送に関わる業者の横の連絡がない | 
○ | 
  | 
 
 
| その他の問題点 | 
(1)海岸漂着物問題への対応 | 
  | 
○ | 
 
 
| (2)FRP廃船の処理 | 
  | 
○ | 
 
 
| (3)木くずのリサイクル | 
  | 
○ | 
 
 
| (4)一般廃棄物焼却灰のリサイクル | 
  | 
○ | 
 
 
| (5)斃死魚の処理 | 
  | 
○ | 
 
 
 | 
 
 
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