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「情報化社会と交通」 抜粋
国土交通省 総合政策局 情報管理部
 
 国土交通省情報管理部のご厚意により、「情報化社会と交通」研究会報告書((財)運輸政策研究機構発行)の抜粋をお届けします。
 
 現在、我々は情報通信技術(IT)を中核とする世界的な新しい潮流―「IT革命」に直面している。ITの発達により大量の情報が時間的、空間的制約を越えて地球規模で伝わる全世界的な電子ネットワーク社会が出現した。ITは新世界への発展基盤として、経済的側面では経済構造改革の実現や産業活動の効率化を促進するとともに、国民生活の面においては多様な生活スタイルの実現や利便性の向上をもたらす鍵として、我が国社会全体から強い期待を持たれている。
 ITの進歩はめまぐるしく、その道筋を正確に予測することは容易なことではないが、本研究会では、今後概ね10年間におけるIT革命の進展の状況を見通し、その中で日々の国民生活に密接なかかわりを有する日常交通、とりわけ公共交通がどうあるべきかを検討した。そしてその中から、今後の交通情報化政策の基本的方向を探ることとしたい。
 
今後の交通情報化の展望
○21世紀初頭の高度情報社会の姿
・ブロードバンド時代の到来
 光ファイバー網の整備により、現在とは比較にならない大量、高速の情報通信(ブロードバンド)が実現する。
 ブロードバンド時代においては、地上放送も含めた放送のデジタル化が進み、高品質の映像・音声サービスや周波数資源の創出等が図られる。これとともに、放送と通信が連携したデータ放送の普及が進めば、交通においても、交通情報の提供等において放送が有効な手段として活用されるようになる。
 
■放送のデジタル化のメリット
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■ウェアラブル社会の浸透と今後の発展
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*モバイル・ウェアラブル情報端末の普及
 モバイル情報端末の普及は、オフィスや家庭に限らず、いつでもどこにおいても、国民が高度な情報と接することを可能とし、「*ユビキタスな」情報化社会が実現する。
 モバイルがさらにウェアラブルに発展すれば、その普遍性はますます増大する。
*身につけて操作できる情報端末機器。
*ubiquitous「同時に至る所にある」の意
 
・位置情報との組み合わせ
 今後はさまざまな位置情報技術や最新の無線伝送技術が複合化し、従来考えてもみなかった成果をあげていくことが期待され、交通におけるITの可能性も大きく広がっていく。
 
○IT革命の分析
・情報の個人化
 交通分野については、携帯電話等のモバイル端末の普及とモバイル技術の進歩は、移動体としての個々人や貨物の認識を高度化し、これによりさらに高質の、または新たな交通サービスが発展していく。
 
・時間的・空間的制約の解消
 大量の情報の伝達が可能となる高度情報化社会においては、現在なお相当の困難を伴う遠隔地との交流をさらに容易なものとする。これにより、サイバーショップ等による遠隔地における事業展開が可能となっており、そのために新たな小口配送等の物流需要も生じている。
 
○21世紀の社会の要請
・少子高齢化の進展
 高齢化の進展により、社会の中で年齢階層的に比重を高めていく高齢者への配慮が必要となる。交通分野においては、高齢者や体の不自由な者が障害のない者と同じように移動できるノーマライゼーションの実現が重要な課題となっている。
 
・環境制約の高まり
 資源の大量消費を前提とした現代社会の根本に疑問を投げかける地球環境問題が顕在化した今、交通分野において環境対策に取り組んでいくことは従前にもまして重要な課題となっている。
 
・安全の確保への要請
 安全の確保は、特に交通分野においては極めて根幹的な要請である。ハード・ソフト両面においてITの活用等によって安全対策の一層の強化を図っていくことに対しては、強い社会的要請がある。
 
・グローバリゼーションの進展
 グローバリゼーションの時代が始まったといわれている。これにより、あらゆる分野で国際的な競争が生じており、交通の分野においても、国際的に遜色のない水準のサービスを提供することが、企業の存亡はもちろんのこと、国家の活力にまで影響する重要な問題と考えられるようになってきている。
 
■都市空間の高度利用と都市機能の適正配置の推進
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■ICカードを活用した都市複合型プログラムの開発
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○交通情報化の基本的方向
・公共交通の「私的」交通化
 公共交通の持つすぐれた環境特性や移動制約者への移動手段の提供といった特性は21世紀の社会の要請に適合するものである。ITの活用によって交通サービスを個々人の輸送需要に緻密に対応させることにより、マイカー同様の利便性を持たせる方向が志向される必要がある。
 
・公共交通と私的交通の連携
 パーク=アンド=ライドの例のように、ITを活用しながら公共交通と私的交通がその相互の長所を共有し、短所を補い合うような連携の創出に積極的に取り組んでいくべきである。
 
・マクロの最適化
 「より安全に、より快適に」を実現するミクロの最適化とともに、都市中心部におけるTDM(交通需要管理)施策の実施等、当該地域のすべての移動が環境負荷等の面で社会全体として最適となるようなマクロの最適化を図っていくことが今後重要な視点となる。このためには、ITの活用が大きな役割を果たす。
 
・社会の要請への対応
 高齢者に係るさまざまな交通問題の解決、バリアフリー施策、交通のユニバーサルデザイン化、過疎地等における移動制約者のモビリティ確保等の問題の解決にITの活用は重要である。
 また、教育分野、金融分野など、交通以外の分野との積極的な連携のためのITの活用も必要である。
 
・移動時間・空間の有効利用、多目的化
 ブロードバンド化、モバイル端末の普及と進歩、コンテンツの充実が進んでいくと、従来、「我慢の時間」「必要悪」の一種と考えられてきた移動過程も、豊かな情報受発信の時間としてとらえ得るようになり、交通に対する位置付けがより積極的なものへと変化していく。
 
■ICカード乗車券導入事例
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 交通事業者等には、交通機関としての時間的・空間的な制約の下で、ITの活用により、顧客が外部からの情報から遮断されることなく、さまざまな情報と双方的にアクセスでき、移動時間・空間がビジネスや娯楽に十分に活用できるような環境の整備―「創造的な交通」の実現のために積極的な取組が求められている。







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