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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/25, 産経新聞朝刊
【正論】イラク戦争 国連への協力は「ギブ&テイク」を提言する
初代内閣安全保障室長 佐々淳行
 
<<我が国は上品ぶる慈善家か>>
 イラクの戦後復興が国際社会の緊急課題となり、国連やアメリカの対日期待は高い。「国連中心」か、自ら血を流してサダム・フセインを打倒した「米英主導」かの議論が起きて、大勢は「国連中心」に傾いているが、この際「日本にとっての国連」と「国連にとっての日本」という基本的問題を、現実を直視して考え「国連信仰」の夢をさまし、二十一世紀の国連協力と国際貢献を「ギブ・アンド・テイク」の大原則に則って行うことを敢えて提言する。
 日本国憲法は日本の国連加盟の十年前にできているから「国連」のコの字もない。それなのに国連を神聖視し、万能視する「国連信仰」がはびこっている。これまでの日本外交の「国連中心主義」は、片想いの恋愛に似て「ギブ・アンド・ギブ」の一方通行で、「国連にとっての日本」はお人好しの「財布」であり、上品ぶってる慈善家にすぎない。イラク戦争を機会に、日本は国連や国際社会への貢献を、双方通行の「ギブ・アンド・テイク」に改め、国益となる見返りと対価を堂々と要求すべきだ。
 まず国連憲章第五十三条及び第百七条の「敵国条項」の削除。日本は一九五六年十二月、八十番目の加盟国となったが、その格付けは独.伊など旧枢軸国六カ国と共に「国連の敵」、安保理の議を経ずして軍事制裁を科してもよい「敵性国家」で、現在もその地位は変わらない。
<<日本は国際社会の「財布」>>
 第二は国連分担金の公平化。加盟時1.29%だった日本の分担金は、世界第二の経済大国になった頃12.5%、いつの間にか今は19.5%。核と拒否権をもつ常任理事国英.仏.露.中の四カ国合計14.6%より5%も多い(英5.5%、仏6.4%、中1.5%、露1.2%)。なお独9.7%、伊5.0%。筆頭株主の米国は22%だが、露と共に何年も滞納している。日本はこの定額の分担金のほかにカンボジア復興三十六億ドル、湾岸戦争百四十億ドル(決算ベース)など、特別分担金を負担させられ、年度によっては決算ベースでこれよりも高いときもある。日本は国際社会の「財布」なのだ。
 このほかにODA援助がある。国連加盟国百九十一国のうち百六十三国・地域に毎年約一兆円・百億ドル弱の開発途上国支援を行っている。経済成長著しいのに1.5%しか国連分担金を出していない中国に、なぜ八百億円の支援をしなければならないのか。日本は、一九九二年以降は、経済的支援だけでなく、自衛隊、文民警察官などPKOの人的派遣の義務も果たし、難民救済人道支援もしてきた。その日本に、果たして国連は何をしてくれたのか。イラク戦争の時には、日本は国連安保理事会の非常任理事国でさえなかった。
 拉致問題について、日本がジュネーブの国連人権委員会に要請した八人の拉致被害者の生死の確認のアムネスティ査察も遅疑逡巡、何もしてくれていない。北朝鮮ノドン・核開発の脅威に対する非難決議も、中国の反対で先送りとなった。国際社会と国連は、日本がお金を出すのは当たり前、出し渋ると不平をいうという、誠に憂うべき状況になっている。
<<次々と国際貢献してきた日本>>
 石油利権と武器売掛代金回収というエゴの国益のため、なりふりかまわぬサミット会談を催し、血を流してサダム・フセインを打倒した米英主導のイラク復興に反対し、「国連中心」を主張する仏・露・独の姿を「みっともない」と上品ぶるのはやめよう。米国支持を貫くと共に「国連中心主義」に賛成し、イージス艦等を派遣し、周辺諸国への難民支援を行い大いに貢献した日本は、「ギブ・アンド・テイク」の大原則に則り戦後復興に協力する代わりに、国連に日本の国益に叶う見返りを要求すべきだ。
 その第一は、イラク復興の原資となる未開発油田の仏・露・中なみの石油採掘権の割り当て。その二は、復興公共事業への日本企業の参入。その三は、国連によるイラク及び北朝鮮の強制収容所に対する「拉致査察」の執行。この三点を要求しよう。
 四月十六日、国連人権委員会は北朝鮮による日本人拉致問題、その他著しい人権侵害の解決を求める決議を賛成二十八、反対十、棄権十四で採択した。強制力はないが、北朝鮮への国際圧力と拉致問題が国連の場で認められた意義は大きい。
(さっさ あつゆき)
◇佐々淳行(さっさ あつゆき)
1930年生まれ。
東京大学法学部卒業。
警察庁調査・外事・警備各課長、三重県警察本部長、防衛施設庁長官、内閣安全保障室長を歴任。評論家。
 
 
 
 
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