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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/13 産経新聞朝刊
【正論】米国の武力行使は国連安保理の代執行だ
初代内閣安全保障室長 佐々淳行
◆玉虫色の査察追加報告
 三月七日の国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長と国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長のイラク査察状況の追加報告は、またまた曖昧で玉虫色の、どちらともとれる内容に終わった。「協力は改善されたが十分とはいえない。アッサムード2の廃棄は評価するが、大量破壊兵器破棄の挙証責任は果たされていない」云々と責任逃れ、優柔不断の姿勢は国連の自殺行為である。
 次いで早暁まで続いた国連安保理各国代表、とくに非常任十カ国の発言もまた賛成なのか反対なのか耳を凝らして聞いても、意味不明。武力行使容認には十五カ国のうちの九カ国の賛成が必要だが、この期に及んでもなお態度を決めないメキシコ、チリ、カメルーン、アンゴラ、ギニア、パキスタンといった開発途上国や弱小国に人類の運命を左右する安全保障上の重大決議のキャスティング・ボートを持たせておいて本当にいいかと思った。
 第一次大戦後にできた国際連盟(リーグ・オヴ・ネイションズ)は、同連盟決議違反国に対する武力制裁の条文を欠いたために、日独伊三国の暴走を止めることができずに崩壊した。
 国際社会は、国際連盟の失敗を深刻に反省して一九四五年、国際連合(ユナイテッド・ネイションズ)を創設し、国連憲章第七章(平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動)を新設して、違反国に対する強制と制裁、即ち、第三九条の勧告、又は措置(非軍事的措置及び軍事的措置)の決定、第四〇条の事態悪化防止のための暫定措置(PKOなど)、第四一条の非軍事的制裁(経済・運輸など)、そして最も大切な第四二条、すなわち陸・海・空の武力による制裁の規定が導入されたのだ。
 九一年の湾岸戦争では、拒否権を持つ常任理事国五カ国もゴルバチョフ・ソ連が賛成投票し、ケ小平・中国が棄権したことから、イラク武力制裁の国連決議第六七八号、第六八七号の二八多国籍軍による第四二条武力制裁が初めて実施され、国連の存在意義が証明された。
◆混迷する安保理
 第一四四一号決議も、サダム・フセインが十六の安保理決議に継続的に違反し、IAEAの査察を公然と妨害し、大量破壊兵器、中距離ミサイル開発について、国際社会を納得させるに足る説明責任を果たしていないからこそ、十五カ国の全会一致で採択されたのではなかったのか。
 長期に亘る安保理審議の混迷をみていると、このまま推移すれば、国際社会による違反国への制裁を規定した憲章第七章は空文化し、また国際連盟の失敗を繰り返すことになるのではないかと憂慮される。
 満州事変が起きた時、国際連盟総会の全会一致の対日撤兵勧告決議がなされた。だが、ときの日本の松岡洋右外務大臣は史上悪名高い「ウォーク・アウト」をやり、自席に戻ることなく退場し、国際連盟を脱退して、戦争への道を歩んだ。ナチス・ドイツの暴走も国際連盟はなすところがなかった。
◆日本は許す限りの協力を
 国際社会は、二十世紀何千万という人類の血を流してヒトラー、スターリン、毛沢東、そして近くはユーゴのミロシェビッチの如き暴虐な独裁者を打倒し、秘密警察による人権侵害の全体主義専制政治と戦い、自由で豊かで平和な人類の未来を夢みて、国際連合構想に到達したのではなかったのか。いま、二十一世紀に存在することを本質的に許されていないサダム・フセインと金正日という独裁者が、国際社会の安全を脅かしている。
 二月二十二日付東京新聞は「米国民戦争支持の理由」としてCNN・米誌タイムの世論調査の結果、「フセインが独裁者だから」が83%と「大量破壊兵器の武装解除・72%」「テロとの戦い・68%」を上回ったという。
 日本も国際連盟を「ウォーク・アウト」して崩壊させた責任国家としての反省に立脚して、国連憲章第七章の制裁規定の重要性を声を大にして発言すべきだ。
 米国の「パックス・アメリカーナ」の一国支配に諸国が反発するのもわかるが、国際連盟を崩壊させた日独伊三国同盟の「枢軸国」は、国際連合を守るために反独裁、反覇権、反大量破壊兵器の「悪の枢軸」に対する国連に代わる米国武力行使を「支持」し、憲法の許す限りの協力を行う責任がある。
 サダム・フセインが国連決議に従いさえすれば、戦争はないのだから。
(さっさ あつゆき)
◇佐々淳行(さっさ あつゆき)
1930年生まれ。
東京大学法学部卒業。
警察庁調査・外事・警備各課長、三重県警察本部長、防衛施設庁長官、内閣安全保障室長を歴任。評論家。
 
 
 
 
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