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日2003/04/18 産経新聞朝刊
【社説検証】イラク戦争 「同盟か」「国連か」 論調真っ二つ
■武力行使反対で終始一貫 朝日/毎日
■日米同盟踏まえ米英支持 読売/産経
 三月二十日から始まったイラク戦争は、三週間で首都バグダッドが陥落し、フセイン政権が崩壊したことにより、終結が見えてきた。開戦前のイラク査察や国連安保理協議なども含め、今年一月からバグダッド陥落までのイラク問題、イラク戦争に関する朝日、毎日、読売、産経の全国紙四紙の社説を比較検証した。
(産経新聞論説委員室)
【解説】
 イラク戦争をめぐる全国紙の論調は、米英の武力行使に反対する朝日・毎日と米英を支持する読売・産経に分かれた。
 朝日は開戦前から、国連によるイラク査察の継続をさらに求める仏独などの側に立ち、これ以上査察を続けても効果は期待できないとする米国を批判した。国連の権威を守るべきだとし、日米同盟重視の立場から米国支持を表明した小泉純一郎首相の対応も批判した。
 毎日も、安保理の権威を崩すべきではないとし、国連安保理で多数の支持を得られないままでの米英の「見切り開戦」は、国際ルールに反するとした。
 これに対し、読売は日本が北朝鮮の核の脅威にさらされている現状を踏まえ、日米同盟の重要性を強調したうえで、米国の武力行使を支持した小泉首相の決断も支持した。イラク戦争については、フセイン政権が湾岸戦争から十二年間、国連決議を再三無視してきた帰結だととらえた。
 産経もイラク戦争を「12年戦争」ととらえ、独裁者を排除するためには米国の武力行使もやむを得ないとした。国連については、安保理への過度の期待を「国連幻想」として戒め、「国連活用主義」を提示した。米英に反対した仏露などにも、イラクへの武器輸出国だったことなどの事情があり、単なる平和主義ではない背景を指摘した。
 内外で繰り広げられた反戦運動に対しても、各紙の評価は分かれた。
 朝日は特に、東京で開かれた高校生の平和集会を取り上げ、戦争と若者について「問い、語り、考えよう」(4月7日)と呼びかけた。毎日も日本の反戦デモを「政治への無関心が顕著だった日本の若者の変化を感じさせる」と評価した。
 産経は「人間の盾」運動について、安易な平和主義が偽善に陥りかねない危険性を指摘した。
 バグダッドが事実上、陥落した後は、各紙とも、戦後復興などに重点を置くようになったが、先の見えたイラク戦争の評価については、読売が「正しかった米英の歴史的決断」、産経が「12年戦争の終結に価値」と米英支持の姿勢をさらに明確にしたのに対し、朝日・毎日は反米のトーンを少し弱めたものの、それまでの日米同盟より国連を重視する姿勢をほとんど変えていない。
(論説委員 石川水穂)
【イラク情勢をめぐる主な動き(現地時間)】
1月 9日 国連監視検証査察委員会のブリクス委員長と国際原子力機関のエルバラダイ事務局長が安保理で「決定的な証拠は見つかっていない」とする査察中間報告
1月23日 シラク仏大統領とシュレーダー独首相が会談。戦争回避で一致
2月 5日 パウエル米国務長官がイラクの大量破壊兵器保有の証拠として機密情報を安保理に提出
2月24日 米英スペインが武力行使を事実上、容認する新決議案を提出。仏独露は覚書で査察の強化・継続案を提示
3月 1日 トルコ議会、米軍駐留の承認を求める政府案を否決
3月 7日 米英などがイラクに3月17日を武装解除の期限とする修正決議案を提出
3月10日 シラク大統領、拒否権行使を明言
3月17日 米英スペインが新決議案取り下げを決定。ブッシュ大統領がフセイン大統領に最後通告
3月20日 米軍、首都バグダッドを限定空爆
3月21日 バグダッドを大空爆。イラク各地でも空爆開始
3月23日 米陸軍の一部が中部ナジャフ近郊に到達。ブッシュ大統領が会見で「南部をほぼ制圧」
3月26日 イラク、米英軍がバグダッドの住宅地を誤爆し、住民15人が死亡したと発表
3月28日 米国防総省が12万人増派を決定
4月 3日 米中央軍、イラク軍のバグダッド歩兵師団を壊滅し、メディナ機甲師団もほぼ壊滅したと発表
4月 4日 米軍がサダム国際空港を制圧
4月 5日 米陸軍の一部がバグダッド中心部に一時進攻
4月 7日 米軍が大統領宮殿を占拠
4月 9日 米軍がサダム・シティーに進攻。バグダッドが事実上、陥落
 
【写真説明】
引き倒され、落下するフセイン大統領の銅像=9日午後、バグダッド中心部(ロイター)
米イージス艦から発射されるトマホーク巡航ミサイル(ロイター)
 
 
 
 
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