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2003/05/23 読売新聞朝刊
対イラク経済制裁解除決議採択 安保理、全会一致で シリアは欠席
◆経済制裁を解除 米英が戦後統治 基金で石油管理 国連の関与限定
 【ニューヨーク=勝田誠】国連安全保障理事会は、二十二日午前十時(日本時間同日午後十一時)過ぎから公式協議を開き、米国、英国、スペイン三か国が提案した対イラク経済制裁解除・戦後統治決議案を賛成十四、欠席一(シリア)の全会一致で採択した。決議は限定的ながら国連がイラクの戦後復興に関与する枠組みを確保しており、日本や西欧などのイラク支援にも道が開かれた。<決議要旨9面、関連記事3・4・7面>
 イラク戦後統治は、イラク戦争終結後、イラク展開中の米英軍が、米政府のイラク復興人道支援庁(ORHA)とともに暫定的に進めてきたが、二十二日の国連安保理の決議採択により、米英の戦後統治は国連及び国際法上の認知を得る。また対イラク経済制裁が十三年ぶりに解除され、石油資源管理など包括的な復興プロセスを主導する環境が整った。
 国連安保理は、イラク戦争前から深刻な対立により機能停止状態だったが、シリアを除く全理事国賛成の決議採択により、安保理正常化への道が開けた。シリアは、イラク戦後にフセイン政権残党をかくまったと米国に批判を浴び、「欠席」を選んだ模様だ。
 米、英、スペインは、今月九日に最初に決議案を提出。その後三度にわたり当初案を修正し、イラク戦争に反対した仏露などの立場にも配慮した。採択された決議は、武器禁輸を除く経済制裁の解除を明記し、制裁下で実施してきた対イラク人道支援計画「石油・食糧交換プログラム」を六か月以内に終了させる内容。イラクの石油収入は今後、中央銀行に創設する「イラク開発基金」に繰り入れて米英が管理する。
 仏露は同プログラムの下で石油利権を築いていた。米英は「六か月」の移行期間を設けることで譲歩姿勢を見せたが、新決議案は米英の戦後統治を認め、旧体制下での石油利権も基本的に壊す点で、戦勝国の役割を追認した中身になった。
 また仏露などが制裁解除の条件として当初求めていた大量破壊兵器廃棄義務については、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)や国際原子力機関(IAEA)の役割を安保理で検討することを盛り込んだ。一方、国連の役割については、人道支援や復興支援分野で「重要な役割」を認め、限定的ながらようやく国連関与の道を開いた。米英と国連との間の調整は、国連事務総長が任命する「特別代表」が行う。
 安保理は、イラク戦争前の三月中旬までの協議で、開戦の是非、時期を巡って分裂。米国が安保理協議を見限って武力行使に踏み切ったことから、米英軍が四月半ばにイラク全土を制圧した後も、国連安保理がイラク復興に全く関与しないという事態が続いていた。
 
<国連事務総長の特別代表>
 国連が大規模な平和維持活動などを計画、実施する際、事務総長の代理として強力な権限を持ち、現地で実務面の指揮をとる。事務次長ポストに相当し、事務総長が任命する。九二年の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)では、明石康国連事務次長(当時)が務めた。
 
 
 
 
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