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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/03/22 読売新聞朝刊
対イラク戦、米の決断 浮かぶ新保守派、沈むパウエル長官(解説)
◆「単独行動」へ姿勢一貫で浮かぶ新保守派 当初から裁量の幅狭く沈むパウエル長官
 イラク戦争の開始で、国際協調派のパウエル国務長官の立場が弱まり、米政権内の権力構造に変化が生じている。戦争が米側の想定通りに展開すれば、単独主義を進めようとする新保守派の優位が確立しよう。
(解説部 波津博明)
 
 「アメリカの屈服を待ち望んでいるのはテロリストだけではない。古い欧州も、彼らなりのやり方でアメリカを攻撃している」
 ブッシュ政権のもとで台頭している新保守派(ネオ・コンサーバティブ)の牙城(がじょう)であるウィークリー・スタンダード誌のオンライン版はイラク開戦直前、こんな寄稿記事をトップで掲載した。
 強硬かつ単独主義的な対外政策を主張する同誌だが、「テロリスト」と「欧州」を同列に並べるほど激しい反欧感情を示す記事を載せるのは異例だ。仏独の反対が米英を新決議案撤回に追い込んだことに対する怒りが背景にあるのだろう。記事はこう続く。「古い欧州による破壊工作はWTO(世界貿易機関)での嫌がらせからNATO(北大西洋条約機構)の乗っ取り、国連安保理の敵対的利用にまで及んだ」
 同誌編集長ウィリアム・クリストル氏はクリントン政権下の九七年、チェイニー(現副大統領)、ラムズフェルド(現国防長官)、ウォルフォウィッツ(現国防副長官)の各氏らと結成した、対イラク強硬策など単独主義を主張する「アメリカの新世紀のための計画委員会」の代表的人物。この人々が新保守派と呼ばれる。同志たちが政権中枢を占めた今、クリストル氏とウィークリー・スタンダード誌は、言論界で急速に影響力を強めている。
 巻頭記事の表現が、反戦の立場を変えない仏独を「古い欧州」と批判したラムズフェルド発言に呼応していることはいうまでもない。ただ行間には、その「欧州」を交渉相手として数か月も費やしたパウエル氏に対する不信もにじむ。
 
 保守派の論客ジョージ・ウィル氏は、安保理重視方針の失敗を「チェイニーやラムズフェルドにまかせ、米国が単独で動いていたらイラク問題はとっくに片付いていた。こんなことになったのはパウエルの責任だ」と非難する。
 パウエル外交の失敗について、湾岸戦争前、精力的なシャトル外交で大連合を組織することに成功した当時のベーカー国務長官と比較して、パウエル氏がここ数か月、ワシントンをほとんど出なかったことを指摘する声もある。“出無精”には、留守にして新保守派の外交への介入を招いては困る、という思惑もあったようだが、失敗の原因は外遊不足だけではない。
 根本には、欧州が新保守派の立場をよく知っていたことがあろう。たとえばウォルフォウィッツ氏は九七年、新聞への寄稿で「単独でも行動するという意志こそが、効果的な集団行動を実現するための最も効果的な道だ」と言い切った。彼らの立場は秘密でも何でもなかった。九八年には、同氏やラムズフェルド氏ら新保守派がフセイン政権を倒すことを提案する書簡をクリントン大統領に提出している。体制変革は当時からの立場だった。
 パウエル氏は昨年八月、国連の承認を得るようブッシュ大統領を説得することに成功し、ブッシュ氏は九月の国連総会で対イラク決議を要請する。十一月には、イラクに査察への完全な協力を義務づける安保理決議1441が、全会一致で可決され、パウエル路線が勝利したかに見えた。しかし、そこまでだった。仏独は、パウエル氏の国連重視を、結局、単独主義をソフトに売り込むだけのものと見ていたからだ。
 ワシントン・ポスト紙で、ある論者は、「国際社会の承認を得ようとしながら、同時に、まるでそれがすでに得られたかのように振る舞うから、他国の政府はますます『ノー』を叫ぶようになる」と批判した。パウエル氏の立場は最初から極めて限定されたものだったのだ。
 
 ただパウエル氏もまた、仏独とくにフランスが最後まで反対を貫くとは考えていなかったらしい。アゾレスで米英スペイン首脳会議が行われた十六日、テレビに出たパウエル氏は「フランス」に十二回も言及し、イラクに対するのと同じくらいのいらだちを示した。単独主義傾向に対する欧州の反感がそれほどに強いということをパウエル氏も理解していなかったということだろう。
 イラク戦争が短期に、損失も少なく終わり、戦後に大きな混乱が起こらなければ、新保守派の優位は確定するだろう。
 多くの人が、始まってしまった戦争は短期で終わり、犠牲も最小ですむことを望んでいる。しかし、反欧感情もある新保守派がそれを「単独主義の勝利」と見なせば、米国と国際社会の関係は、これまで以上に緊張をはらんだものになるかもしれないのである。
 
 写真=20日、ホワイトハウスでパウエル国務長官(左)、ラムズフェルド国防長官(右)らと閣議に臨むブッシュ大統領(AFP時事)
 
 
 
 
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