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私はこう考える【イラク戦争について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/04/10 毎日新聞朝刊
[社説]フセイン政権 独裁者が見放されていく
<イラク戦争と世界>
 「剣を抜け。引き金を引け」。米英軍のイラク攻撃が始まった先月20日、フセイン大統領は国民に向かってこうゲキを飛ばした。自国が外国軍の攻撃を受けた際の国家指導者としては自然な反応だろう。
 しかし、国民レベルで祖国防衛に立ち上がったとは見受けられない。昨年の国民投票での100%支持がこっけいなほどむなしい。
 こうした事態は、フセイン大統領にとって予想外だったのか。それとも覚悟していたのだろうか。恐怖と強制力で国民を動かしてきた独裁者の心の内は読めないが、おそらく後者ではなかろうか。
 フセイン氏が大統領に就任したのは79年7月。隣のイランはイスラム革命で高揚していた。1年後、イランに攻め込んだ。その前も後も親ソ国だったイラクは米国からも軍事支援を受けた。イラン革命の流出を恐れる米国にとって「敵の敵は味方」という論法だ。
 この戦争を通じてイラクは軍事強国にのし上がった。他の中東諸国と比べれば、相対的に近代化されたが、恐怖の弾圧と監視網がフセイン体制を支えた。クルド人虐殺をいとわず、反体制派を抑圧した。一族支配を築いても、粛清の対象は身内にも及んだ。
 12世紀に十字軍からエルサレムを奪還したサラディンにあこがれ、ナセル・エジプト大統領のアラブ民族主義に感化を受けたとされるフセイン大統領にとって、湾岸地域の覇権確立という野望はイスラエルとの対決姿勢をあらわにした。91年の湾岸戦争ではイスラエルを戦争に引きずり込もうと画策した。パレスチナ過激派への資金的黒幕とも伝えられている。
 一方でイスラエルを支援する米国との対決では、誤算を繰り返した。湾岸戦争も米国の出方の読み間違いの結果だし、その湾岸戦争を乗り切ったという過信が今回の戦争を招いた伏線になっている。
 開戦にあたり、ブッシュ米大統領は「イラク国民を標的にはしない」と言明し、フセイン大統領は国民に決起を促した。イラク国民の民意をどちらが掌握するかは、今回の戦争の重要な側面である。
 開戦以来、フセイン大統領の生死は不明のままだ。国家指導者として国民を守ろうとする姿が見えなくなった。大統領がこの国を見捨てたと国民が感じる時、独裁者には厳しい末路が待っている。
 戦局の大勢が見えてきたことで、反フセイン蜂起や暴動が起こりだした。これは必ずしも米軍支持を意味しないだろう。フセイン大統領と心中はできない、という庶民の抵抗と映る。フセイン政権への面従腹背のしたたかさが「解放軍歓迎」にも見え隠れする。
 戦後のイラク統治は国際社会の後押しだけでなく、イラク国民から支持されなければうまくいくはずがない。軍事的に大詰めを迎える中で、戦争とはいえ、民間人の犠牲を最小限にする努力のいかんが戦後統治に対するイラク国民の反応に影響する。
 
 
 
 
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