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2.11.5 電路系統図の作成
 電路系統図には発電機、配電盤、変圧器、電動機、始動器及びこれらの制御回路を含む系統、蓄電池及び充放電盤の入出力回路、照明装置の分電盤に至る回路など電力送受電回路のすべてを含める。
 最近建造された小型船舶及び小型漁船の電路系統図の例を付録1−(1)−(c)及び1−(3)−(e)に参考として挙げる。
 発電機には交流3相3線式、交流3相4線式、交流単相2線式及び直流2線式等が使用されている。
 特に3相4線式の場合は中性線のケーブルサイズ等、発電機回路について十分調査する必要がある。
 変圧器の構成は3相変圧器1台又は単相変圧器3台1組の場合があり、いずれも3心線で配線する。なおスコット結線の場合は2心線2本で配線する。
 補機用電動機にはそれぞれ配電盤のMCCBよりその出力に適応した方式の始動器を経由して給電される。
(a)各始動器に対して1個のMCCBで給電する場合。
(b)始動器2面に対して1個のMCCBで給電する場合
等いろいろな方式があるが、その装置に最も適した方式を選択する。
 小型船舶等の給電回路は交流100V系が殆んどであるが、小型漁船では漁倉ビルジポンプ、散水ポンプ及び集魚灯等の比較的容量の大きいものについては交流3相220V系も使用されている。また船内一般照明灯等は交流100Vが一般的であるが、交流100V系の負荷の数が少なく、バランスの取りにくい場合や陸電回路を単相100V系で給電することの多い場合は次図のようなスコット接続の変圧器が使用されている。
 小型船舶等は主機の始動源を蓄電池によるのが殆んどであり、これに補機駆動と主機駆動直流発電機を絡ませて設計した系統も多く使われている。これらの系統は主機メーカ及び補機メーカの指示によることが多いが、特に始動用電動機回路のケーブルサイズの決定には注意を要する。
 
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 船内照明装置は前記「2.6 一般照明」でも述べているように小型船舶等といえども、
(1)船と人命の安全確保のための照明
(2)作業場所の照明、荷役照明
(3)乗組員の快適な生活確保のための照明
等について十分な配慮が必要である。JIS F 8041:86で船内の照度基準が決められているので、これによって照度計算を行い所要灯数を決めるが、前記の「2.6 一般照明」で述べたように実績船の経験にもとづく簡便な方法で所要灯数を決定してもよい。小型船舶等では専用の照明分電箱を設けるまでもないので、一般の分電箱又は配電盤より給電されるのが一般的である。
 航海灯は船の大きさと種類により装備場所と光達距離が決められているので、これによるものとする。それぞれの航海灯は操縦場所に設けた航海灯制御盤を経て給電されるが、航海灯制御盤から航海灯までの電路は各灯ごとに独立のものとする必要がある。
 通信、航海計器、無線設備及び機関部制御装置、警報装置等については船の大きさ、種類によって異なるが一般的にメーカ標準が多いのでメーカ図書に忠実に本船に適合するよう系統図を作成する必要がある。
2.12.1 概要
 電気機器の配置図は船内装備のすべての電気艤装品を網羅し、できる限りこれらの機器相互間を接続するケーブルの主要電路の大きさ、位置も明示する。これらの図面により工事内容を把握し、工事計画を立てるとともに効率的な電装工事を行うことができる。
 配置図作成に際しては、各装置の電路系統図により他部門関連装置も十分に調査し漏れなく表示する。なお、配置図には原則として系統図に使用している図記号を用いる。
 参考として小型船舶及び小型漁船の電気機器の配置図の例を付録1−2及び1−7に掲載した。
 小型船舶等はスペース面の制約から中・大型船のような自由な配置は望めないが、少なくとも下記の点を念頭において配置計画を行う必要がある。
(1)機器の操作、保守、点検の容易性と全体の交通性
(2)周囲温度、湿度、振動等の環境条件
(3)機器の搭載や据付けの際の工事及び電線の導入の容易性、作業の安全性
(4)空中線、信号灯、吹鳴機器等の機器性能を害さない相対的配置
(5)航海灯、信号灯の位置と諸規則(小型船舶安全規則、小型漁船安全規則等)の適合性
(6)天井灯、壁付灯、テレビ、ビデオ等と室内艤装のグレード
 電路系統図および船体部、機関部の関連図面を参照して電気機器の位置を図記号で示す。
 区分電箱は主要電路に近く、導入される配線のスペースが取れ、分岐される負荷までの配線も含めて経済的な電路で、保守点検に便利な位置を選定する。これに対してはスペースを先に確保しておく必要があるので関係部門と十分協議することが必要である。
 居住区画の各公室、船員室の照明灯の型式及び灯数は仕様書の照明電灯基準表に、また甲板照明用投光器の装備場所は仕様書に記載されているので、これらに従い位置が分かるように記載する。
 他の装置の図面は系統図を先に作成し、これに従って電気機器配置図に記載するが、照明装置の場合には配置図を先に作成し、これを読みながら1分岐の灯数、容量の制限内で系統を組み、最終的に分電盤の分岐数を決める。
 公室及び船員室の灯具の配置は照明電灯基準表によるが、各部屋の形状により灯具より遠い部屋の隅と灯具の中間点で平均照度が得られるよう、また、L字形の部屋で陰影を生じないように、装備数を追加するなど考慮する。
 内部通路及び外部通路においては、単に面積当りのワット数又は灯具相互間の距離のみによらず、灯具の取付け方向による配光曲線を考慮に入れ灯具の中間において照度基準の値(電装設計・工事データ図表集、表6.1.1参照)を確保できる灯数を装備する。
 機関室その他の機械室の照明はタンク類の影にならないように、またパイプ、トランク又は電路を避けた位置とするよう機関室配置図など他部門作成の図面をよく調査すること。
 各系統に従い、その装置の内容、機器の使用目的、操作方法等を十分調査して装備場所をきめる。
 配線に付属する接続箱は、その大きさにより分電盤と同様に前もってスペース取りをしておく必要がある。
 本装置の機器の配置は他の装置と異なって局部的に同種類のものが多く装備されているので、配置図にすべてを記入することは困難であるし、またその必要性のないものもある。即ち、機側付の検出点は既に配結線されていて造船所における艤装工事と関係のないものもあるので、これらについてはその装置の組立図なり配線図によるものとする。よって配置図には例えば主機関の接続箱のみを記入することもある。







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